第1回:亡くなった従兄弟のスマホが解約できない! 故人との関係により異なる通信事業者の対応【天国へのプロトコル】

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 故人がこの世に置いていった資産や思い出を残された側が引き継ぐ、あるいはきちんと片付けるためには、適切な手続き(=プロトコル)が必要です。デジタル遺品のプロトコルは、整備途上の部分が少なくありません。だからこそ、残す側も残される側も現状を掴んでおくのが得策です。デジタル遺品について10年以上取材を続けて、相談に乗っている筆者が、実例をベースに解説していきます。

事例――「故人の端末の解約はご家族でないと対応できません。」

 都内で暮らすAさんの元に警察から連絡が入ったのは1カ月前のことでした。3つ上の従兄弟であるBさんが自宅で亡くなっているのが見つかったといいます。Bさんは未婚できょうだいはなく、両親はすでに鬼籍に入っています。唯一連絡が取れる身寄りがAさんでした。

 遺品整理に悪戦苦闘するなかで、Aさんが面を喰らったのがスマートフォンの解約でした。Bさんが契約している通信キャリアのサポート窓口に連絡し、事情を話して手続きを進めようとしたところ、「故人の端末の解約はご家族でないと対応できません」と素っ気なく門前払いされてしまったのです。

 どうも従兄弟という続柄では、故人のスマートフォンの解約に対応してもらえないようです。Aさんは途方に暮れてしまいました――。

疑問―故人のスマホの解約は従兄弟(従姉妹)ではNGなの?

 今回は、故人が残していったスマホの通信契約について紐解いていきます。一般的に、故人の通信契約の手続きは家族が担うことが多く、通信キャリア側もそれを前提にしています。しかし、なかにはBさんのように家族がいないケースもあります。その場合はどうすればいいのでしょうか?

 下の表は、故人の携帯電話やスマホ、SIMカードの手続きが可能な続柄を主な通信キャリアごとにまとめたものです。「解約」と「承継」の違いについては、以降で説明します。

通信キャリア 解約できる人 承継できる人
NTTドコモ 制限なし 法定相続人
au 原則は故人の家族 法定相続人
ソフトバンク
(LINEMO含む)
法定相続人 法定相続人
楽天モバイル 二親等以内の人 二親等以内の人
mineo 制限なし 制限なし
UQモバイル 原則は故人の家族 法定相続人
BIGLOBEモバイル 制限なし 二親等以内の人
NifMo 二親等以内の人 ―(承継不可)
Y.U-mobile 法定相続人 法定相続人

 ざっと見ただけでも、窓口で手続きできる間柄は通信キャリアごとに条件がバラバラだと分かります。

 契約と電話番号を手放す「解約」手続きは続柄の制限なく対応してくれるケースが比較的多い印象ですが、法定相続人や二親等以内などの条件も少なくありません。

 契約を引き継ぐ「承継」手続きとなると、むしろ制限なしのほうが珍しくなります。NifMoのように、そもそも承継が認められていないケースもありました。承継は端末と電話番号を共有していた契約者が亡くなったり、家族経営の個人事業主が亡くなったりした場合に希望する人が一定数います。しかし、解約よりも条件が一段と厳しくなることは念頭においたほうがよさそうです。

 ここで整理しておきたいのが「親等」と「法定相続人」の違いです。

 まず、親等は、親族関係の遠近を示します。当人とその配偶者を起点に両親や子供を「一親等」、祖父やきょうだい、孫を「二親等」などとカウントします。きょうだいとは、両親に一親等ぶん戻って一親等ぶん降りるつながりになるので、1+1で二親等となる計算です。

 ここから、親のきょうだいにあたるおじやおばは三親等となり、その子供である従兄弟(従姉妹)は四親等となります。AさんにとってBさんは四親等の親族というわけです。

当人との続柄と親等

 かたや、法定相続人は、故人の財産を相続できる権利のある人を指し、相続の文脈でのみ意味を持ちます。配偶者は存命であれば必ず対象となり、そこに相続順位の上位グループが加わります。子供=第一順位がいるなら、法定相続人は配偶者と子供です(子供が不在で孫がいるなら、配偶者と孫)。子供がおらず親=第二順位が1人でも健在なら、配偶者と親が法定相続人となります。

 Bさんの従兄弟にあたるAさんは法定相続人になれません。すると、通信キャリアによっては、やはり解約の手続きは難しそうです。

当人との続柄と相続順位

現状――例外的に個別対応してくれるケースも

 ただ、ここで諦める必要はありません。大抵は何かしらの代替方法を用意しているものです。

 たとえばauは、解約手続きができる条件として「親権者・契約者のご家族(パートナーシップ関係含む)・法定代理人・施設関係者から委任された方」としていますが、「お客さまに個別事情がある場合などもございますので、ご相談を承っております」といいます。やむを得ない場合は事情に合わせて柔軟に対応してくれるかもしれません。

 また、法定相続人が条件であっても、多くの場合はそこに「指定相続人」も加えられています。指定相続人は遺言書によって指名される相続人を指し、続柄を問いません。Bさんが生前にAさんを指定相続人としていれば、法定相続人とほぼ同じ地位で手続きを進めることができる可能性が高いといえます。

 ソフトバンクも「遺言書などによって従兄弟への相続が認められている場合(相続人である場合)であれば、委任状なしで受付可能です」と明言しています。この回答にあるように、指定相続人でなくても、存命の法定相続人がいれば委任状を作って代理人として申請する手もあります。

 そのほか、解約を二親等以内の人としている楽天モバイルは、サポートページに「二親等以内の方がいない場合は、弁護士など代理人による申請を受け付けます。詳しくは、弁護士にご相談ください」と記載しています。専門家の手を借りる必要はありますが、道筋はゼロではありません。

 ほかにも、非公式な取材を通して「事情によっては個別に対応します」といった回答も複数のサポート窓口で得ています。

 mineoを提供するオプテージが「第三者から解約・承継の要望があることは滅多にございません」と語るように、配偶者や、二親等までの近い家族以外が手続きするのは、まだレアケースのようです。レアであるがゆえに定型のサポートが確立されておらず、定型外として個別に対応する側面もあるのでしょう。

 通信キャリアとしても、条件にあう親族がいないからといって故人の契約を放置することにメリットはありません。

 ただし、通信キャリアショップを含めた全てのサポート窓口が、必ずしもそうした柔軟な対応をしてくれるとは限らないのも確かです。半年前、Aさんから相談を受けたとき、筆者は現実的な代替案の提示をこちらから求めたり、そうした柔軟な対応をしてくれそうな上長に代わってもらったりするのが有効だと伝えましたが、「上手くいけば」と条件を付けざるをえませんでした。

 AさんとBさんの立場には、誰がなってもおかしくありません。現状を踏まえて、元気なうちにシミュレーションしておきましょう。

今回のまとめ
故人のスマホの解約は、通信キャリアによっては二親等以内の親族でないとできないことがある。
解約手続きが可能な親族がいない場合、問い合わせにより解決策を引き出せることもある。

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