4月に入り、清明(シーミー)の季節がやってきた。シーミー時期の沖縄ではオードブル合戦がすごいのだ。
沖縄のシーミーは一大行事
4月の初めからゴールデンウィークあたりまで、沖縄では「清明祭(シーミー)」という行事が行われる。旧暦の二十四節気の「清明」の時期に合わせたお墓参りなのだが、沖縄ならではなのが親戚一同ご先祖様の墓前に集まりワイワイご飯を食べる光景で「お墓の前のピクニック」などと説明されることもある。
詳しくは「シーミーはお墓の前のピクニック」という記事でもご紹介しているのでご参照のほど。
もともとはその名の通り旧暦の清明に行われていたのだが、現代においては親戚一同の予定を調整しつつ4月から5月にかけての週末や祝日に行われることが多くなっている。
最近はコロナの影響で親戚一同が集まって…というのが難しくなってしまったのだが、それでも家族だけや日を分けて少人数で、など工夫してシーミーが行われているようだ。
お店によってはシーミーのために休業というところもあるし、墓地付近の道路は大渋滞するのでバス路線が臨時で変更されるほどである。
なによりすごいのはシーミーに持ち寄るオードブルの各社の販売戦線である。この時期になるとコンビニでもスーパーでも、弁当屋でもオシャレカフェすらもオードブルのPRに余念がない。様々な付加価値をつけたり内容に工夫を凝らしたりとまさにそれは戦い、オードブル合戦の幕開けなのである。
実際にシーミーのオードブルとはどんなものなのか、まずは実際に注文してみたい。
勝手にシーミー
注文したのはセブンイレブンのオードブル。電話注文やアプリで予約したりできるところもあったが、セブンイレブンはチラシの裏側に記入して受け取り店舗で直接注文するスタイルだった。
受取日に予約承り表を持っていけば商品を交換できるらしい。
オードブルの受け取り。
ドリンク無料券をもらって、1.5Lのオレンジジュースもついて3,240円だった。
オードブルが手に入ったので、食べる場所にもこだわりたい。
シーミーが受取日にかぶったらよかったがそんなことはなかったので、少し迷ったが良いところを思い出した。
賃貸の戸建てなのだが相場よりかなり安く借りられているらしく、その理由は裏庭にお墓があるから。
沖縄では寺院が管理している墓地というものが少なく、今でも個人の土地にはお墓を建てているところが多い。なので住宅街の合間だったり、公園の中だったり至る所にお墓があったりする。
シーミーの時期に限っては、お墓の親族の方々が勝手に裏庭に入ってきてお墓参りが行われるらしいのだ。
特に事前に相談などはなく、お墓周辺の雑草などが除草されたら「そろそろだな」と思うと友人は言っていた。
オードブルを受け取って友人宅を訪れたところ、イスやタープまで準備されていて、おそらくこのあとシーミーが始まる予感しかしなかった。
さて、こちらがオードブルだ。まぁ日本本土でもオードブルはあると思うので特筆するような点はあまりないのだが、セブンイレブンでオードブルが買えるのは全国広と言えども沖縄だけなのではないだろうか。
さすがにお墓の敷地内には入れないので、友人宅の裏庭にレジャーシートを広げて子どもたちとオードブルを美味しくいただいた。
早く食べないとお墓の人がきたら気まずすぎる光景である。
オードブル合戦がすごい
さて、シーミー時期はセブンイレブンでもオードブルが買えるということに驚かれた方もいるかもしれないが、先述の通りシーミーの時期はコンビニ、スーパーのオードブルがすごい。もはやオードブル合戦である。
代表的なものをいくつか見てみたいと思う。
セブンイレブン
セブンイレブンは2019年7月11日とわりと最近沖縄に進出してきた。それまでネットニュースなどで「セブンのこれがうまい!」みたいなニュースが流れても悔しい思いをしてきた沖縄県民にとっては夢のような出来事だった。
取り扱い商品はやはり日本本土と共通のものが多い印象だが、さすがキング・オブ・コンビニエンスストア。シーミーにはがっつりオードブルを出してきた。
オードブルはこれでもか!と子どもが好きそうなものを詰め込んできた印象。塩さばや人参しりしり(細切りにした人参の炒め物)を入れてシニア層へのリーチも忘れていない。
さらにセブンイレブンではシーミーで使う紙皿や割り箸、線香やウチカビ(墓前で燃やすあの世のお金)も一緒に注文できるというシステム。かゆいところに手が届くサービスである。
ほっともっと
沖縄では持ち帰り弁当専門店のほっともっともシーミーに合わせて重箱とオードブルを出している。
シーミーはお墓参りを意識してか紫基調のカラーリングが多い気がする。
こちらは重箱。
シーミーはお墓参り行事だが、沖縄では「祭」という言葉がつくとおり、お祝い事でもあるのでお供え料理も赤かまぼこなどお祝い料理になるらしい。
オードブルはさすがの弁当専門店ともいうべきか、揚げ物中心で茶色くなりがちな中に枝豆で彩りを添えているところが魅力的である。エビとカニの共演も見所か。
りうぼう
りうぼうは県内に10店舗くらいあるスーパーマーケット。運営しているリウボウグループには沖縄ファミリーマートも含まれている。
海鮮マリネや筑前煮など、揚げ物だけでないラインナップが魅力的。
さらにりうぼうの中には琉球料理のお惣菜専門店「花ぐすく」という店舗があり、そちらも重箱と餅のセットを販売している模様。この重箱と餅は墓前に供えるのだが、特に餅が余りがちである(全く甘くないため食べづらい)。
よくみると「おもちは白餅(砂糖なし)、あんもち、トーチナンからお選び頂けます」と書かれており(トーチナンはタカキビのこと)、白餅が大量に余ってしまう家庭には有り難い限りである。
ユニオン
ユニオンは全店舗24時間、年中無休で営業していて、台風でもなかなか閉店することはないので台風の目に入ったときには沖縄県民がここぞとばかりに押し寄せることでも有名。
清明祭の下に書かれている「家族揃ってうーとーとー」は、うーとーとーが沖縄でお墓や仏壇に手を合わせるときに発する言葉で、家族揃って手を合わせましょうということになる。
真ん中のメイン料理の他にも、きんぴらごぼうや筑前煮もあり、これだけ見てもいろんな年代の人が集まる行事を象徴しているようだ。
ロゴが印字されたまんじゅうはオードブルから人気に火が付き、U(ユー)まんじゅうとして個別販売もされた。
他にも、ファミリーマートやローソンなどがオードブルのチラシをだしており、見ているだけで楽しくなってくる。沖縄のシーミー時期はオードブルがアツい。
おいしかった
ちなみにオードブルを広げてから「しまった!」と思ったのだが、お箸をもらい忘れたし、お皿もなかった。
しょうがないので手づかみでそのまま食べることに。
ご先祖さまに怒られそうな光景になってしまった。