💐 この花束がもう、バラにしか見えない

デイリーポータルZ

apple製品を使用している方は、一度は見たことがあるであろう💐この絵文字。ずっとバラの花束だと思っていたが、「チューリップ」で変換すると出現することに気づいてしまった。

…でも、本当に?
元花屋の筆者が、生花を使って再現し、この花束の考察をする。

 

emoji_hana.jpg

「チューリップ」で変換するとでてくる、この絵文字。

タイトルだけご覧になって、こいつ何言ってんだ?とお思いになったであろうandroid、PCブラウザなどからご覧の皆さん。皆さんからはこの花束が、それぞれこのように見えていることだろう。

other_tanmatsu.jpg
OSやブラウザによって、花束の概念に差異がある
emoji_hana.jpg
今回は、​​​​​​iOS版の絵文字のはなし。

元花屋の筆者は長年、この花がバラだと思っていた。渦を巻くようについた花びら、先端にかけてのカーブ。拡大したときの花びらの質感もバラらしい。クラウン咲き、八重咲きのチューリップでこの画像のような形になるものもあるが、チューリップは花びらの中央に縦にはしる筋があり、質感もツヤのあるものが多い。

しかし、バラをよく観察したことがある方なら、こう思うだろう。「葉っぱがバラのものではなくない?」

それは確かにそうである。

バラの花びらは、このように楕円形の葉が3つ並んだ形になっている。

IMG_5363.jpg

絵文字の花束、細長く伸びる葉は一見チューリップのようでもある。
実際のチューリップの葉をご確認いただきたい。

23297627_m.jpg
フリー素材の花画像あるある:文字を入れるために左右どちらかに寄せて置かれている

チューリップの葉は、茎を包むように生えてくる。
この絵文字は、葉っぱの上に花の茎がポンと置かれているように見えないだろうか?

茎と葉.jpg
スーパーで野菜が束ねられているテープみたいなものが使われているのも謎である。結び目がないからリボンではないようだ。

つまりこれは、ピンクと黄色の花が2本ずつ+下に別途で葉が添えられている花束ではないだろうか。

もし、この葉が花の茎から出ているものだったとしても、この花がバラだと思っていた理由はもう一つある。

IMG_5429.jpg
LEGOが出している、フラワーブーケの説明書だ。これはバラの完成図だが、葉っぱの形が細長いのがお分かりだろうか。

草花の形が、実際と異なった姿にデフォルメされることがたまにある。日本でもカタバミの葉が「クローバー」として描かれているし、海外ではバラの葉っぱがこのような形に描かれるのではないかと仮説を立てていた。

clover.jpg
子ども向けの文房具などによく描かれている「クローバー」の絵、実際に比較するとどう見てもカタバミである。

 

いったん広告です

百聞は一見にしかず。
実際にバラの花で、この花束を再現してみよう。

IMG_5358.jpg
近しい色のバラを買ってきた。黄色いバラがどこに行っても売られておらず、表参道まで行って花屋を10軒ハシゴしたのはまた別のおはなし。 ​​​​​

葉については、今回はこちらを使用することにした。

IMG_5360.jpg
ドラセナ。観葉植物のイメージが強いかもしれないが、切り花としてもよく出回っている。

hikaku.jpg

花の形を比較していただくと、実物のバラの方が丸く、花びらの数が多いのがお分かりだろう。
では絵文字の花のような形のようにはなり得ないかというと、そうでもない。
アレンジメントの形などの都合で、大きく咲いたバラの外側の花弁を取り、スリムに見せることがある。
また、まだ長く咲けるバラなのに「開いていて、長持ちしなさそうだから」という理由で売れなくなるのを避けるために、同様の処理を行うこともある。

IMG_5373.jpg
というわけで、じゃんじゃん剥いでいきます

花弁が傷ついた花なども、このように剥がれてから売られている。ちょっとの傷でも売れなくなるのが生花の悲しいところだ。

IMG_5382.jpg
ドラセナも、絵文字に合わせたサイズに小さく切り出す。

ドラセナの葉、アレンジメントに入っているやつは葉がカットされているばかりか、任意の形をつくるためにホチキスで留められていることもある。初めて見るとちょっとびっくりする。

IMG_5384.jpg
いかがだろう、かなり見覚えのある形になってきた。
IMG_5386.jpg
束ねた部分に黄色いテープを貼ったら…
IMG_5393.jpg
完成。iosの花束絵文字そっくりな花束。
hanataba_hikaku.jpg
こうして並べると…ほら!バラの花束に見えないだろうか?

これをチューリップで再現しようとしたら、絵文字のような咲き方をする品種を探して、花屋10軒では済まないだろう。市場まで探しに行って、葉っぱを全て剥いで並べてから上に花を重ねて…と、考えれば考えるほど、この花束はチューリップではない。

ここまで長々と考察を重ねた上に、生花で再現までしてみたが、筆者が言いたいことは「これ、チューリップじゃなくね?」だけである。
ここまで読んでくださった皆さん。もう筆者だけじゃないですよ。あなたも次回からこの絵文字を見たとき、これ、バラみたいだけどチューリップなんだよな…と思う魔法にかかったのですから。

 

 

追伸:
🌱や🌿の絵文字を出す時、iOSだと「くさ」や「は」で変換できなくて、「はっぱ」と打たなければならないのもなんで???と思っています。

 

Source

タイトルとURLをコピーしました