株式会社天空は、GPD製の8型2in1 UMPC「GPD Pocket 3」を発売した。上位モデルのCore i7搭載機は既にレビュー済みだが、下位モデルのPentium Silver N6000搭載機が届いたので試用レポートをお届けしたい。
8型の超コンパクトな筐体にフル装備した2in1 UMPC
UMPC最大の特徴はノートPCよりはるかに小さくコンパクトなこと。ただその分、色々機能を削ったり、使い難かったりするのが一般的だ。
しかし本機「GPD Pocket 3」は、何ひとつ妥協せず、2.5Gbps対応のGigabit Ethernet、パネルが回転し10点タッチ/ペン対応の8型1,920×1,200ドットディスプレイ、豊富なポートに指紋認証センサーやキーボードバックライト、タッチパッドなどを装備している。
そして極め付けは、フィールドワークにあるとうれしいシリアルポート(RS-232C)やKVMモジュールを装着可能な拡張モジュールに対応する点。同じ構成で12〜14型にしても売れそうな感じだ。
モデルとしては、Core i7-1195G7搭載機とPentium Silver N6000搭載機の2種類あり、前者はすでにレビューが掲載されている。今回触れていないペンや拡張モジュールについては、そちらに詳細が載っているので興味のある方はあわせてご覧いただきたい。
今回手元に届いたのは後者。一部仕様が異なる部分もあるが、一番の違いはプロセッサとストレージ容量となる。主な仕様は以下の通り。
【表1】GPD Pocket 3の仕様 | |
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プロセッサ | Pentium Silver N6000(4コア/4スレッド、1.1~3.3GHz、キャッシュ4MB、TDP 6W) |
メモリ | LPDDR4x-2933 8GB |
ストレージ | SSD 512GB(M.2 2280 NVMe 1.3) |
OS | Windows 10 Home(バージョン21H1) |
ディスプレイ | 8型1,920×1,200ドット、光沢、10点タッチ対応、Gorilla Glass 5 |
グラフィックス | UHD Graphics(外部出力はUSB Type-C、HDMI 2.0b) |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1×3(うち1基Type-C)、200万画素Webカメラ、バックライト付きキーボード、3.5mmミニジャック、指紋認証センサー、拡張モジュール |
バッテリ/駆動時間 | リチウムポリマー、38.5Wh/最大約15時間 |
サイズ/重量 | 198×137×20mm(幅×奥行き×高さ)、約725g |
オプション | 4,096筆圧レベル対応ペン(Surface Pen互換)、シリアルポート、KVMモジュール(HDMI入力+USBキーボード/マウス操作出力) |
価格 | 8万6,000円 |
プロセッサはJasper Lake世代のPentium Silver N6000。4コア4スレッドでクロックは1.1GHzから最大3.3GHz。キャッシュは4MB、TDP/SDPは6W/4.5W。Jasper LakeなPentium Silverとしては上から2番目のSKUとなる。
メモリはLPDDR4x-2933で容量は8GB。PCMark 10のSystem Informationで確認したところ4GB×2となっていた。ストレージはSSD M.2 2280 NVMe 1.3の512GB(Core i7モデルでは1TB)で、超コンパクトなサイズのわりに大容量だ。
OSはWindows 10 Home。バージョン21H1だったので、その範囲でWindows Updateを適応し評価している。もちろんWindows 11へのアップグレードも可能だ。
グラフィックスはUHD Graphicsで、外部出力用にUSB Type-CとHDMI 2.0bを装備。ディスプレイは光沢ありの8型1,920×1,200ドットで、アスペクト比16:10、10点タッチ対応でGorilla Glass 5を採用する。2軸ヒンジで回転しタブレットにも変身できる。オプションで4,096筆圧レベル対応ペン(Surface Pen互換)も使用可能だ。
ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0を装備(Core i7モデルではWi-Fi 6E/Bluetooth 5.2)。昨今有線LANのないノートPCが多いが、本機では搭載し、しかも2.5Gbps対応はポイントが高い。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C(Core i7モデルではThunderbolt 4)、USB 3.1 Type-A×2、200万画素Webカメラ、バックライト付きキーボード、3.5mmミニジャック、指紋認証センサー。USB Type-CはPower Delivery(PD)での充電とDisplayPort Alt Modeでの映像出力を兼ねる。
なお、背後側面にある拡張モジュールは、標準でUSB 3.1を装備。ここはシリアルポートやKVMモジュールと交換可能だが、どの拡張モジュールにも(micro)SDカードスロットがないのは惜しい。
本体サイズは198×137×20mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約725g。38.5Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵し、最大駆動は約15時間。価格は8万6,000円。構成だけ見ると少し高い気もするが、このサイズに収めるために一般的なノートPCよりコストがかかると思えば、妥当なところだろう。
筐体は扉の写真からも分かるように手のひらにポンと乗るサイズだ。メタリックな感じに仕上がっておりチープさはない。ただこのコンパクト感で重量が721gあるため、見た目より持った時はズッシリ重く感じる。
前面は上下のフチが結構狭く、Webカメラはフチ左上にある。左側面にUSB 3.1 Type-C、HDMI、左スピーカー。右側面にUSB 3.1 Type-A×2、3.5mmミニジャック、右スピーカーを備える。
背後側面には2.5Gigabit Ethernet、拡張モジュールを配置。この拡張モジュールはネジを2本外せば交換可能だ。またストラップホールが有線LAN側の角にあり、ストラップを取り付け可能。なかなか粋な配慮と言える。
付属のACアダプタはサイズが約60×47×30mm、重量が96g、出力5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/2.25Aの45W。本体のUSB Type-Cを通じてPDで充電するため、同規格のものであればほかのアダプタも使用できる。
8型のディスプレイは、このクラスとしては発色、コントラストもよく、最大輝度だと眩しいほどで、視野角も十分。なかなかよいパネルが使われているようだ。左ひねりの2軸ヒンジとなっておりタブレットにも変身できる。もちろん10点タッチも問題ない。
設定/ディスプレイの拡大縮小とレイアウトは標準で150%となっているが、個人差はあるものの、それでも文字はかなり小さくなる。筆者の世代にはちょっと厳しいところだろう。
i1 Display Proを使い特性を測定したところ、最大輝度は447cd/平方mとかなり明るい。写真を観るのに適しているとされる明るさ120cd/平方mは、Windowsの輝度設定の最大から-7が137cd/平方m、-8が91cd/平方m。従って前者で計測した。黒色輝度は0.121cd/平方m。リニアリティはこのクラスのノートPC用のパネルとしてはそろっているが、補正前は青色が強かった。
キーボードはオン/オフ2段階のバックライトを搭載したUS配列。打鍵感は結構よくちょっと驚いてしまった。キーピッチは主要キーで17mm近くある。このサイズで無理無理詰め込んでいるため、並びなど文句を言い出すとキリがないものの、そのわりには上手くまとまっており、試用中は特に気にならずに操作できた。
ボタンと分離しているタッチパッドも慣れてしまえば普通に扱える。とは言え、両手で持って親指でタッチパッド+ボタンか、置いてキーボードメインか、どちらかの操作になるだろう。
ノイズや振動は試用した範囲ではまったく問題なし。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけるとキーボード左上のスペースに若干熱を持つものの、気になるレベルではない。サウンドは両側面手前にあるため結構クリアだ。パワーや音質はそれなりだが、このクラスとしてはよい方ではないだろうか。
カメラはパネル左上にあるため正面に座るとセンターがズレる。それはともかくとして、画質はあまりよくなく、ほかの部分がよいだけにこの点だけは惜しい。
以上のように、UMPCのコンパクトな筐体によくぞここまで組み込み、しかもクオリティも高く、非常によくできた1台に仕上がっている。本機はPentiumだが、Core i7搭載モデルだと更に「お!」っとなるのだろう。
性能はそれなりだがバッテリ駆動で8時間以上
初期起動時、タブレットモードは1画面で、特に追加されたグループやアプリなどはない。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。起動はそこそこ速く、アプリの動作などはPentium相応といったところで、Core搭載機ほどのサクサク感はない。
ストレージは仕様上、SSD 512GB(M.2 2280 NVMe 1.3)だが、デバイスマネージャには「BIWIN SSD」とあるだけで詳細は不明だ。C:ドライブとD:ドライブの2パーティションになっており、それぞれ合計300GB/空き272GB、合計164GB/全て空きとなっている。個人的には512GBであればC:ドライブのみの1パーティションの方が使いやすいと思う。
有線LANはRealtek Gaming 2.5GbE、Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。主なプリインストール済のソフトウェアなどは特にない。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeを実施した。Pentiumということもあり、全体的にCore搭載機ほどの性能はなく、おおよそ2分の1から3分の1程度のスコアとなっている。性能を求めるなら上位のCore i7モデルをお勧めしたい。
PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは9時間8分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上は最大15時間だが、テスト内容的には妥当なところで、このサイズで8時間超えはなかなかのものと言えよう。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2532 | |
PCMark 10 Score | 2,851 |
Essentials | 6,613 |
App Start-up Score | 7,778 |
Video Conferencing Score | 6,158 |
Web Browsing Score | 6,039 |
Productivity | 3,949 |
Spreadsheets Score | 3,488 |
Writing Score | 4,472 |
Digital Content Creation | 2,409 |
Photo Editing Score | 2,994 |
Rendering and Visualization Score | 1,777 |
Video Editting Score | 2,629 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelerated 3.0 | 2,700 |
Creative Accelerated 3.0 | 2,665 |
Work Accelerated 2.0 | 2,229 |
Storage | 4,982 |
3DMark v2.22.7336 | |
Time Spy | 432 |
Fire Strike Ultra | 308 |
Fire Strike Extreme | 615 |
Fire Strike | 1,228 |
Sky Diver | 4,649 |
Cloud Gate | 7,497 |
Ice Storm Extreme | 46,273 |
Ice Storm | 57,177 |
Cinebench R23 | |
CPU | 1,987pts |
CPU(Single Core) | 702pts |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 1454.937MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1155.767MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 845.157MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 698.089MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 337.321MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 233.501MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 31.340MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 40.960MB/s |
以上のようにGPD Pocket 3は、8型の筐体に2軸ヒンジ、10点タッチ/ペン対応、USB 3.1 Type-C、同Type-A×2、指紋認証センサー、キーボードバックライト、タッチパッド、ステレオスピーカー、Webカメラ、そしてシリアルポートやKVMモジュールに変更可能な拡張モジュール装備。よくここまで詰め込んだ的なUMPCに仕上がっている。
プロセッサがPentiumということもあり、性能はCore i7モデルにおよばないものの、そこは用途にもよるだろう。この記事を読んでグッと来た人に是非使って頂きたい1台だ。
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