「差別用語が含まれる」としてアメリカ全土の660以上もの地名が変更へ、当事者からは賛否両論

GIGAZINE
2022年04月02日 20時00分
メモ



アメリカの内務省が2022年2月22日に、アメリカ全土の660以上の地名を変更する手続きを進めると発表しました。ネイティブ・アメリカンの女性に対する差別語として使われる「squaw」という言葉を含んだ地名を変更するこの措置については、歓迎する声が上がっている一方で「特に不快に感じない」とする当事者もいると報じられています。

Interior Department Announces Next Steps to Remove “Sq___” from Federal Lands | U.S. Department of the Interior
https://www.doi.gov/pressreleases/interior-department-announces-next-steps-remove-sq-federal-lands

U.S. Will Rename 660 Mountains, Rivers and More to Remove Racist Word | Smart News| Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/more-than-600-places-in-the-us-will-remove-racist-slur-from-their-names-180979733/

Is ‘squaw’ really an offensive name and to whom? – The Berkshire Edge
https://theberkshireedge.com/is-squaw-really-offensive-and-to-whom/

ネイティブ・アメリカンの女性として初めて内務長官に就任したデブ・ハーランド氏率いるアメリカ内務省は2月22日の発表で、「長官命令第3404号に基づき正式に蔑称とされた『squaw』を含む660以上の土地の名称の置き換えを発表します。当省は、代替名称候補の検討のため、本件をネイティブ・アメリカンの部族間協議およびパブリックコメントにかける手続きを開始しました」と述べました。

マサチューセッツ州バークシャー郡の地元紙・The Berkshire Edgeによると、「squaw」という言葉は「女性」を意味するアルゴンキン語に由来するとのこと。しかし、北米に入植した白人らがネイティブ・アメリカンの女性を性的、人種的に侮辱する言葉として使った結果、「squaw」は差別的な言葉に変容していったとアメリカ内務省は指摘しています。


ハーランド氏は発表声明の中で、「特に我が国の公有地や水域などは、あらゆる人種的な背景を持つ人々にとって利用しやすく、なじみやすいするものにするため、言葉は重要です」と述べました。

アメリカには「Squaw Mountain」や「Squaw Valley」など、「squaw」を含む地名が大量にあります。具体的には以下の地図の通り。アメリカ西部を中心に、「squaw」が入っている地名はアラスカ州を含むアメリカ全土に660カ所以上点在しています。

今回、正式に「squaw」が差別用語となったことで、これらの地名は公的な文書などでは「sq___」に置き換えられます。また、ネイティブ・アメリカンや一般市民を対象とした4月25日までのパブリックコメントにより、別の地名への改称についても意見が募集されています。例えば、「Squaw Mesa」に最も近い場所が「Castle Creek」であれば、最初の候補は「Castle Mesa」となるなど、各地名に対して最低5つの候補が提示されているそうです。

中傷にあたるため「Sワード」とも呼ばれている「squaw」に対する今回の措置について、当事者からは歓迎の声が上がっています。アメリカ先住民としては初のカリフォルニア州議会議員となったジェームズ・C・ラモス氏は、メディアに対し「2022年にもなって、ネイティブ・アメリカンの女性をおとしめるSワードを変更せずにいる理由はないはずです」と話しました。


アメリカで差別的な地名が変更されるのは今回が初めてではありません。2008年には、アリゾナ州フェニックスにある有名な山である「Squaw Peak」が「Piestewa Peak」に変更されました。新しい山の名前は、アメリカの軍人として戦死した初めてのネイティブ・アメリカンの女性であるLori Piestewaにちなんだものとのこと。

また、1962年には黒人に対する差別語である「nigger」を含む地名が変更されたほか、1974年には日本人に対する差別語である「Jap」を含む地名も同様に変更されました。

National Association of Tribal Historic Preservation Officers(全米部族史保存者協会)は、地名の変更に関する(PDFファイル)手引きの中で「こうした活動に反対する人がよく言うレトリックに反して、人種差別的な、あるいは不適切な地名や地理的特徴を改称することは『歴史をなかったことにすること』には当たりません。むしろ、アメリカの過去をより正直に説明する機会であり、歴史的な傷を癒やすための行いなのです」と述べています。


一方、ネイティブ・アメリカンの当事者の中には、「squaw」に対して差別的な印象を感じないという声もあります。純血のネイティブ・アメリカンを両親に持つある女性は、The Berkshire Edgeの取材に対し「『squaw』はおとぎ話や伝説に使われる言葉なので日常生活ではあまり聞きませんが、特に不快だとは感じません。つまり、『この前squawの友だちと会ったよ』とは言いませんが、それは不快だからというより単に古くさいからです」と話しました。

こうした点から、The Berkshire Edgeは「『squaw』を差別語だと決めつけることの問題点は、この言葉が他の差別的な言葉とは異なり、もともとはネイティブ・アメリカンが若い女性を指すために使っていたものだという点です。この言葉に目くじらを立てるのは、カヌーやラクロスといったネイティブ・アメリカンの言葉を由来とする他の単語にも腹を立てることになりかねません。そもそも、マサチューセッツという州名もアルゴンキン語の言葉を語源としています」と指摘しました。

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