【実録】新型コロナを発症した話 / 7日目「宿泊療養の闇」

ロケットニュース24

働きたくない。ゴロゴロ寝て過ごしたい。と、そんな憧れを持ったこともあった。しかし、事実なんにもすることがないと、それはそれで時間を浪費しているようで気が急いてくるから不思議である。

新型コロナを発症し、現在宿泊療養中の私(中澤)はまさにそんな状態。以前の記事でお伝えした通り、7時には起きないといけないのだがその後マジでやることがない。しかも、こんな時に限ってめちゃくちゃ晴れてるし。とりあえず顔を洗おうとしたそのとき、私は異変に気づいた

・闇

ユニットバス形式の洗面所が真っ暗なのだ。入る時に電気のスイッチはオンにしたはずだが、押せてなかったのだろうか? そこで洗面所の外に出て確認すると、スイッチはちゃんとオンになっている。

念のため、スイッチを1度オフにして入れ直してみたが反応はない。何度スイッチを入れ直してみても静かな闇が広がるばかりである。闇のトイレにただ響き渡るカチカチ音。こ、これは……

電球が切れている


昨日の夜までは普通についてたのに……! 宿泊療養で来たホテルでトイレの電球切れるとか、どれだけ “持ってない” んだ私は。

・対応方法

さて置き、イレギュラーすぎて入所のしおりにも書かれていない事態なので、フロントに内線電話をしてみたところ、通常は差し入れで対応するという。差し入れとは、外部の人が入所者に物資を送れるシステム。入所者は送られてくる前日までに申し出ることにより、弁当配布時に受け取ることができる。

しかし、その時は朝食が配布された直後だったため、結局、フロントに取りに行くことになった。フロントは2階。つまりはエレベーターに乗ることになる。いいんですか……!?

そもそも我々、療養者が部屋を出ていいのは弁当を受け取る時だけと言われている。これは1日のスケジュールをお知らせする館内放送でも「受け取る時以外で勝手に出ないでね」と放送されるくらい厳密なルールだ。この放送は隔離であることを感じる瞬間でもある。

・衝撃

だが私は今、弁当受け取り時間じゃないのに堂々と部屋の外に出られるだけではなく、エレベーターにまで乗れてしまうのだ。恐る恐るエレベーターのボタンを押すと、すぐに扉が開いた。思わず周りを確認する。人は誰もいない。意を決してエレベーターに乗り込むと……

スゲエッ……!


2日ぶりに上下移動している! あと、姿見がめちゃくちゃデカイ!! エレベーターって2日乗らないだけで結構新鮮なことが判明した。

2階に降りると、エレベーターを出てすぐの窓の前に替え用の電球が置かれている。やはり人はいない。なんだこの解き放たれた感覚は。学校で授業中に教室を出た時のようだ。ハアハア……! 今、私は全身で感じているのだ。「自由」を──。

・闇

冷静に考えればエレベーターに乗っただけ。家で言うと、ポストを見に行った程度の道のり。だが、その当たり前がとても非日常に感じる。そこで逆説的に気づいた。知らず知らずのうちにストレスが溜まっていたことに

普段から引きこもりがちだから入所も余裕だろうと思っていたのだが、とんでもなかった。テレビがあろうと、ネットがあろうと、ゲームがあろうと、部屋を自分の意志で出られず、食べ物を好みで食べられないという状況はやはり特殊なのだ。

もちろん、宿泊療養は自分で選択して来たわけだが、失くして初めて分かると言うか、失くしていることにさえ気づいていなかった今回のこと。宿泊療養を選択する人はくれぐれも注意して欲しい。ある意味一番闇なのは自分の心である。トイレみたいに電球を取り換えられたらいいのにな。


執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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