岸田首相が、ワクチン接種促進や海外からの入国規制の緩和にようやく乗り出した。あまりにも遅い方向転換だが、歓迎したい。
私も、先々週の夕刊フジへの寄稿で、「岸田政権の功罪 新型コロナ対策、明らかに「劣化」 ワクチンの「3回目接種」は世界最低クラス 初入閣を担当相、岸田首相が軽視か」という記事を書いてそれなりの反響をいただいていたので少しは良い方向に風を吹かせたかと思っている。
あらためて、2020年の1月以来の、世界各国との比較において、各内閣のコロナ対策をどう評価すべきか、時系列で追うとともに、なぜ岸田内閣が失敗したかを分析してみたい。
① 2020年前半安倍内閣
欧米は初動を誤って右往左往。日本は、あまり極端なことせず多角的に対策を講じてだいたい成功。ただし、感染者数などに比して規制はやや過剰。世論におもねたバラマキ経済対策はコスパ悪いが、責任は野党、マスコミ、小池都知事など自治体の不見識にあった。水際対策が遅れたので感染が拡がったというのは、まったく根拠のない誹謗。
② 2020年後半菅内閣
欧米は大ダメージを受けながら第一波を終えるがワクチン開発と接種体制の構築に邁進して奇跡的に早いワクチン供給体制の準備に成功。日本はワクチン確保に3ヶ月ほど遅れる。
③ 2021年前半菅内閣
欧米はワクチンで劇的な改善。日本も3ヶ月くらいの遅れで追走。医療体制の改善に医療界が非協力で感染者も重症者も死者も20分の1なのに、医療崩壊だと医療界は開き直り、行動規制を繰り返さざるをえなくなる。
④ 2021年後半菅から岸田内閣
デルタ株のひろがりを欧米はワクチンで乗り切る。日本はワクチン接種の遅れと政治的思惑でわずかのところで間に合わず、無意味な五輪無観客に追い込まれるが、夏が終わるとワクチン普及して終息。
⑤ 2021年末から22年初
欧米はオミクロンに三回目のワクチン接種前倒しとワクチンパスポートで対応し、過剰規制なし。日本はワクチン接種を前倒しせず極端に遅れ、ワクチン接種者の優遇を世論の反発を怖れてほとんどしないという非常識な政策をとり、過剰な規制を継続。
さて、総じて云えば、安倍内閣のときは、正体がよくわからないなかでの対処だったので、いろいろなことを極端に走らずしたので成功。
菅内閣は、ワクチン対策で遅れたが、河野ワクチン相の頑張りなどで挽回したが、東京五輪の無観客は残念。そして、岸田内閣はどうか。
以下は、夕刊フジの記事に、加筆したものだ、
岸田文雄政権が、菅義偉前政権と比べて、明らかに「劣化」しているのが、新型コロナウイスル対策(=特にワクチン接種)と、デジタル化政策である。担当閣僚に、初入閣の堀内詔子氏と、牧島かれん氏を充てたことからして、岸田首相がこれらの問題を軽視していた証拠だ。
ワクチン接種率は、岸田政権発足のころから急ブレーキがかかり、「3回目接種」は1月末で3.2%と、世界最低クラスとなった。西欧や韓国は50%前後、米国や中国が25%前後だから見るも無惨な完敗である。
堀内氏は就任時に「希望者にはもれなく」と言ったが、当時すでに世界の関心は「接種したくない人に、一人でも多く打つこと」に移っていたから、この発言からして頓珍漢で、私はさっそく批判した。
新たな変異株「オミクロン株」の感染爆発を受けて、昨年末から、オーストリアでは、未接種者に刑事罰を科した。フランスは、公共の場から未接種者を閉め出した。ドイツは「『接種したくない人への配慮を』と言っていたのは間違いだった」と認めるなど、準義務化へ向かっている。
岸田政権には、その気配もない。
ワクチン接種者は外食などをしやすいという特典も逆に縮小する愚策ぶりだし、入国の際も隔離についてもワクチンをしたかどうかでほとんど差を付けないという非常識な対応をした。
オミクロン株は感染力は強いが重症者は少ない。感染症法上の「2類相当」を「5類」にするか別にして、隔離期間を短くして、3回目接種をした人は濃厚接触者でも隔離免除にすべきだ。逆に、「ゼロコロナ発想」と、「PCR至上主義」に擦り寄って社会を混乱させている。
安直なPCR検査はワクチン接種の妨げになるので縮小傾向なのに、無料で、神経質な暇人が繰り返しする無意味な検査を増やして必要な検査を妨害したし、水際対策は、WHO(世界保健機関)からも「過度だ」と非難された。
海外に仕事があったり、家族に会いたい日本人も外国人も、非人道的な仕打ちに泣いている。経済への打撃も大きいし、日本人の国際化意欲まで削いでしまう。将来まで及ぶ、重大な弊害が不可避だ。
フランスの昨年の経済成長率は7%と、際だって良かった。これは、ワクチン接種を徹底し、接種した人は最低限の行動制限にして、重症者増加による医療崩壊を防ぎ、経済もほどほどに回すという、エマニュエル・マクロン大統領が考え抜いた作戦を貫徹した成果だ。ゼロコロナを前提にすれば、ワクチン接種者も再感染することがあったとしても、ある程度の行動の自由を認めた方が、ワクチン接種を後押しし、結果、医療崩壊を防げるという発想だ。
山梨県の長崎幸太郎知事が、ワクチン未接種者に行動自粛を呼びかけたところ、同県選出の堀内ワクチン担当相がなんとブレーキをかけた。堀内大臣の言動は、むしろ、反ワクチン派でないかとさえ思えた。長崎知事にワクチン相を兼ねてほしい。
それから、薬剤師などにワクチン接種を認めれば、迅速化につながる。医師には、医師にしかできないことに専念してもらうためにも必要だが、岸田政権は何も進めない。
むしろ、医療機関も飲食店も「コロナ助成」で潤っているところが多く、軌道修正もできない。病床逼迫も、軽症者を入院させているらからだ。医療改革にも乗り出さない。
また、菅内閣のワクチン接種でも、諸外国の常識に反して、医療従事者だけを最優先し、結果、高齢者施設などで多くの死者を出した。しかも、その医療従事者は300万人というあきらかに過剰な範囲を最初から予定し、私はこれを非難したが、実際には600万人を超える医療従事者等と称する人が接種した。
つまり、医療従事者等と称して接種した人の半分以上が不正な接種だったということだが、その問題にメスを入れず、またもや、無駄に広い範囲の医療従事者等の接種を優先した。
もはや、菅前首相に「コロナ・医療改革特命相」に就任してもらいたいと書いたら、岸田首相は菅前首相や河野前ワクチン相に相談しているようでいいことだが、今後も堀内ワクチン相や後藤厚労相の手に負えそうもないと思う。