同じSSDでもこれだけ違う。SATAから第4世代PCIeまで速度差を検証

PC Watch

 現在のPCにおいて、体感性能をアップし、ゲームやアプリなどを快適に利用するために欠かせない機器がSSDである。SSDをOS起動用のシステムドライブに採用するメーカー製PCは年々増加しており、現在では大半のPCがSSDを搭載しているといっても良い状況だ。また、自作PCやメーカー製PCに搭載されていたHDDをSSDへと換装したというユーザーや、さらなる性能アップを求めてSATA SSDから最新のPCI Express4.0のNVMe SSDへと換装したというユーザーも中にはいるだろう。

 そんなSSDだが、一口にSSDといっても、現在のSSDには、PCI Express 4.0のNVMe SSD(以下、PCIe 4.0 SSD)、PCI Express3.0のNVMe SSD(以下、PCIe 3.0 SSD)、SATA SSD(以下、SATA SSD)の大きく3種類があり、性能も大きく異る。

 最も高速なのは最大読み出し速度が7,000MB/s前後、最大書き込み速度は5,000MB/sオーバーの製品が主流となっているPCIe 4.0 SSDだが、この性能は、読み出し/書き込みともに、大まかに言ってPCIe 3.0 SSDの約2倍、SATA SSDとの比較では読み出しが約14倍、書き込みは約10倍にも達する。

 このようにドライブ単体のスペックだけを比較すると、同じSSDでもその性能差は非常に大きい。しかし、実際の使用において、これがどれだけの差を生むのだろうか。本稿では、ドライブ単体性能を計測するベンチマークだけでなく、実際のOSの起動時間やゲームの起動時間/ロード時間、動画の4Kアップスケールトランスコード時間などから、SSDやHDDの実用上の性能差を比較検証する。

SATA SSDからPCIe 4.0 SSD、HDDまでを比較検証

 まずは、比較検証を行なったストレージを紹介しておこう。今回の比較検証に使用したのは、PCIe 4.0 SSD、PCIe 3.0 SSD、SATA SSD、HDDの4種類、計5製品である。

 PCIe 4.0 SSDは、Samsung製のB2B向けモデル「PM9A1」の1TBモデルを使用した。PM9A1は、リテール販売されている同社のPCIe 4.0 SSD「SSD 980 PRO」とほぼ同等の性能を備えた製品だ。以下で紹介する今回の評価PCであるマウスコンピューターのデスクトップPC「G-Tune EN-Z」のBTOオプションとして採用されている。

 SSD 980 PROと比較して、公称ランダムライトがわずかに低め(PM9A1は850K IOPSで、980 PROは1,000K IOPS)だが、最大読み出し/書き込み性能やTBWなどは同スペックの製品である。

PM9A1は、B2B向けに出荷されているPCIe 4.0 SSD。B2B向け製品であるため、単体購入はできないが、性能はSSD 980 PROとほぼ同等だ

 PCIe 3.0 SSDは、同じくSamsungのリテールモデル「SSD 970 EVO Plus」の1TBモデルと、検証環境のPCに搭載されていたSK-HynixのB2B向けモデル「BC711(512GBモデル)」の2製品を使用した。SSD 970 EVO Plusは、年末に刷新された新パッケージの製品だ。SSD 970 EVO Plusは、PCIe 3.0 SSDの中では最速クラスの製品として知られる人気製品である。

 また、SK-HynixのBC711は、シングルパッケージのワンチップSSD(M.2 BGA SSD)として設計されたB2B向けの製品である。今回テストした製品では、これが標準搭載で、M.2 2280のモジュール基盤にこのSSDが実装されていた。なお、検証環境のPCに搭載されていた製品をそのまま使用したためBC711のみ記憶容量が「512GB」と、他のSSDと比較して少ない点には留意してほしい。

新パッケージが採用された970 EVO Plus。見た目は、旧パッケージの製品と同じだが、コントローラーやNANDメモリが最新のものに変更されているようだ。

BC711は、各社のノートPCへの採用が急増しているSSD。最大速度などの情報は公表されているが、その他の詳細な情報は非公表であるため、その詳細は不明だ

 SATA SSDは、Samsungのリテールモデル「SSD 870 EVO」の1TBモデルを使用している。SSD 870 EVOは、SATA SSDの中では現役最高クラスの性能を実現している製品だ。人気の高いSATA SSDの定番製品である。

SATA SSDの定番製品としてロングセラーを続けているSSD 870 EVO。性能の高さは、SATA SSDの中では最強クラスだ。

 HDDは、検証環境のPCに搭載されていたWestern DigitalのWD Blueの2TBモデル(WD20EZAZ)を使用している。5,400rpmの製品であるため性能的に最上位というわけではないが、WD Blueは常にトップクラスの人気を誇っているHDDの定番製品だ。

定番HDDとして人気の高いWD Blue。今回テストに使用した2TBモデルは、SMRを採用した製品で、回転数は5400rpmの製品である。

 検証環境に使用したPCは、マウスコンピューターのデスクトップPC「G-Tune EN-Z」である。G-Tune EN-Zの詳細スペックは以下にまとめておくが、CPUはIntelの12世代CPU「Core i7-12700K」を採用し、PCIe 4.0対応のM.2スロットを2基備えている。本製品は標準ではPCIe 3.0接続のSSD 512GB(評価機ではBC711)を搭載するが、BTOカスタマイズでPM9A1(512GB or 1TB)に変更可能だ。

 このPCをベースに、ストレージを交換して各種テストを行なっている。また、これらのSSDやHDDは、すべてシステムドライブとして利用し、各種ベンチマークソフトやゲームなどをインストールして利用した。

【テスト環境】
マウスコンピューターG-Tune EN-Z
CPU Inel Core i7-12700K(12コア/8 P-core/4 E-core)
マザーボード Intel Z690チップセット搭載
メモリ 16GB(8GBx2、DDR4-3200)
GPU NVIDIA GeForce RTX 3060 12GB
システムストレージ 512GB NVMe SSD(SK-Hynix BC711/PCIe3.0)
セカンダリストレージ 2TB SATA HDD(Western Digital WD_Blue WD20EZAZ-00GGJB0)
電源ユニット 700W(80PLUS GOLD)
OS Windows 11 Pro 64bit
【各ストレージのスペック】
メーカー名 Samsung SK-Hynix Samsung Western Digital
型番 PM9A1(MZVL21T0HCLR-00B00) SSD 970 EVO Plus BC711(HFM512GD3JX013N) SSD 870 EVO WD Blue(WD20EZAZ)
容量 1TB 512GB 1TB 2TB
インターフェイス PCI Express 4.0 (x4) PCI Express 3.0 (x4) SATA 6 Gbps
プロトコル NVMe 1.3
NANDフラッシュ Samsung V-NAND SK-Hynix 4D V6 TLC Samsung V-NAND
DRAM DDR4 4GB DDR4 1GB 非公表 DDR4 1GB 256MB
シーケンシャルリード(Max) 7,000 MB/s 3,500 MB/s 3,500 MB/s 560 MB/s 180 MB/s(内部転送速度)
シーケンシャルライト(Max) 5,100 MB/s 3,300 MB/s 3,100 MB/s 530 MB/s
ランダムリード(Max) 1,000K IOPS 550K IOPS 520K IOPS 88K IOPS
ランダムライト(Max) 850K IOPS 600K IOPS 530K IOPS 98K IOPS
TBW 600 600 非公表 600

定番ベンチマークでストレージ性能をチェック

 最初に定番ベンチマークソフトを利用して、各種SSDとHDDの性能をチェックしていこう。ベンチマークに利用したのは、最大速度をチェックできるCrystal Disk Mark 8.0.4と、体感性能を数値化するPC Mark 10のFull System Drive Benchmark、ゲームの体感性能を数値化する3D MarkのStorage Benchmarkである。

 まずは、Crystal Disk Markの結果だが、やはり基本性能が高いPCIe 4.0 SSDが圧倒的に強い。PCIe 4.0 SSDであるPM9A1は、シーケンシャル読み出し6,422MB/s、書き込みで4,942MB/sを叩き出している。シーケンシャル読み出し3,500MB/s前後、書き込み3,000MB/s前後だったPCIe 3.0 SSDの2製品と比較して、約2倍の性能をPM9A1は発揮している。

 また、PM9A1は、4KB QD1/T1のランダム読み出し/書き込み性能も高い点に注目しておきたい。さすがに読み書きサイズが4KBと小さいため、シーケンシャル読み出し/書き込みのようにPCIe 3.0 SSDの2倍の性能とはいかないが、SSD 970 EVO Plusとの比較では読み出し約6MB/sで書き込みで約14MB/sほど速く、B711との比較では読み出しで約14MB/s、書き込みで約16MB/sほど速い。また、SATA SSDとの比較では、読み出し/書き込みともに約2倍の性能差をみせている。一方でHDDは、SSDからみると桁違いの遅さで、シーケンシャルだけでなく、ランダム性能もSSDに遠く及ばない。

最大性能が分かるCrytal Disk Markの結果。最大性能は、PCIe 4.0 SSDが圧倒的に速いことがわかる。

 次に体感性能を数値化するPC Mark 10のFull System Drive Benchmarkの結果だが、ここでもPCIe 4.0 SSDは強かった。PM9A1は「3,193」というダントツのスコアをマークし、PCIe 3.0 SSDの2製品を圧倒。また、基本的にはインターフェイスの速度が速い順にスコアが高いが、SSD 970 EVO PlusとBC711の結果からも分かるように、同じPCIe 3.0 SSDだからといって結果も同程度になるとは限らないことは覚えておいてほしい。

 SSDでもSATA SSDとNVMe SSDでは、スコアに大きな開きがあり、明確な性能差があることにも注目しておきたい。さらにHDDのスコアは、SSDと比較するとかなり低く、SSDとHDDの間には大きな体感性能の差があることも見て取れる。

体感性能が分かるPC Mark 10のFull System Drive Benchmarkの結果。ここでもPCIe 4.0 SSDが強い。

 ゲーム利用時の体感性能を数値化する3D MarkのStrage Testの結果も、基本的にはPC Mark 10の結果と同様にインターフェイスの速度が速い順に並んでいる。ただし、トップのPM9A1と次点のBC711の差はわずかしかななく、PCIe 4.0 SSDとPCIe 3.0 SSDとの体感性能の差がPC Mark 10のFull System Drive Benchmarkよりもぐっと縮んでいる。

ゲームの体感性能をスコア化する3D MarkのStrage Test。ゲームに特化した性能を知ることができるこのベンチマークでもPCIe 4.0 SSDが強かった。

 その理由は、3D MarkのStrage Testのゲームロード時の転送速度の結果から推測できる。転送速度は、PCIe 4.0 SSDであるPM9A1でも最大で1,262MB/sしかでておらず、PCIe 3.0 SSDとの差は大きくない。つまり、絶対性能の高さが大きく反映されていないのだ。これは、用途によってはPCIe 3.0 SSDでもPCIe 4.0 SSDに十分に太刀打ち出る体感性能を得られることを示していると言っていい。ちなみにHDDは、ここでもSSDに大きな差を付けられており、全く太刀打ちできない状態となっている。

 また、PC Mark 10では、SSD 970 EVO Plusが2番手、3番手がBC711だったが、これが逆転していることにも注目しておきたい。SSDは、ファームウェアのチューニング次第でワークロードごとに違いが出る。この結果を見る限り、BC711は、熱対策の難しいワンチップSSDでありながら、ゲームに強いチューニングが施されたSSDであると推測できる。

3D MarkのStrage Testの個別結果の中からゲームロードの転送速度を抜き出してグラフ化した。PCIe 4.0 SSDのPM9A1でもその性能を活かしきるほどの速度はでていない。

 ゲーム関連でもう1つ、ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマークのロード時間の結果も紹介しておく。このベンチマークでもトップだったのはやはりPCIe 4.0 SSDのPM9A1である。しかし、PCIe 3.0 SSDのSSD 970 EVO PlusやBC711との差は、コンマ数秒の世界まで縮まるなど、その差はごくわずかしかない。

 また、SATA SSDは、トップのPM9A1との差が「3秒弱」ほどあり、時間的にはわずかかもしれないが明確な差があることが分かる。HDDは、トップのPM9A1から約20秒、SATA SSDと比較しても約17秒も離されており、その差は歴然としている。

ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマークのロード時間。PCIe 4.0 SSDとPCIe 3.0 SSDの差はほとんどない。

ぐっと差が縮まるOSの起動時間や動画アップスケールトランスコード

 次に実用的なテストとして、OSの起動時間と動画のアップスケールトランスコードの結果を見ていく。OSの起動時間は、Windows 11の自動ログインを有効に設定し、PCの電源をオンにしてからデスクトップが表示されるまでの時間と、デスクトップが表示されてから自動起動に設定したアプリが起動するまでの時間をストップウォッチで計測している。

 動画のアップスケールトランスコードは、2時間8分のフルHD動画をAdobe Premiere Pro 2022でカット編集で10分の動画にしたものを、Adobe Media Encorder 2022で4K動画にアップスケールトランスコードして書き出す時間を計測している。

 まずは、OS起動時間だが、PCIe 4.0/PCIe 3.0 SSDの3製品がきれいに横並びになった。3製品の差は、コンマ数秒しかなく、誤差とっても問題ではないほどのわずかの差しかない。また、SATA SSDとPCIe 4.0 SSD/PCIe 3.0 SSDとの差も約1秒ほどしかない。

 この結果から、SATA SSDでもOS起動についてはPCIe 4.0 SSD/PCIe 3.0 SSDにかなり近い体感性能を得られることが分かる。一方でHDDは、特に電源オンからデスクトップが表示されるまでにSSDの約3倍の時間を要するなど、大きな差が出ている。

OS起動時間は7回計測し、最高と最低を除いた5回の平均時間を結果として掲載している。HDDはかなり遅いが、SSD同士では多くな差はでていない。

 続いて4K動画へのアップスケールトランスコードの時間だが、このテストもPCIe 4.0 SSDとPCIe 3.0 SSDの間では明確な差はでなかった。特にハードウェアトランスコードを行なった場合は、3製品すべてが同じ時間となったほか、ソフトウェアトランスコード時もSSD 970 EVOが他の2製品と比較して2秒遅いだけだった。

 SATA SSDは、ハードウェアトランスコード時に12秒、ソフトウェアトランスコード時に7秒ほどトップとの差がでた。SATA SSDは、動画のトランスコードを行なう場合にPCIe 4.0/PCIe 3.0 SSDよりも時間がかかることは覚えておいたほうが良いだろう。

 なお、HDDは、ハードウェアトランスコード時に51秒、ソフトウェアトランスコード時に1分49秒も、トップとの差がついている。動画の時間が長くなるほど差が広がることを考えると、HDDは、動画のトランスコードにも不向きと言えるだろう。

10分のフルHD動画を4K動画にアップスケールトランスコードする時間。時間は、Adobe Media Encorder 2022のログからエンコード時間を抜き出した。

人気ゲーム7本の起動/ロード時間を比較

 ここからは、ゲームの起動やゲーム再開時のゲームデータのロードにかかった時間を比較していく。比較に使用したゲームは、以下の7タイトルだ。ゲームの起動時間やロード時間は、すべてフルHDの解像度で、描画プリセットは最高の品質に設定している。計測は、すべてストップウォッチを利用し、7回を計測を行なって最大と最小を除いた5回の平均時間を用いている。

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077は、ゲーム再開時のロード時間を測定した。ロード時間は、PCIe 4.0/PCIe 3.0 SSDの3製品がすべて「3.5秒」と同じ時間で並んだ。SATA SSDは、これらよりも0.8秒遅く、HDD至っては「17.4秒」も遅かった。

サイバーパンク2077のロード時間

ウォッチドッグス レギオン

 ウォッチドッグス レギオンは、ゲームの起動とゲーム再開時のロード時間を測定した。起動は、Ubisoft Connectのプレイボタンを押してからタイトル画面が表示されるまでの時間、ロードはタイトル画面で「続ける」を押してからプレイ画面になるまでの時間とした。

 起動時間は、PCIe 4.0 SSDのPM9A1が71.1秒でトップ。2番手/3番手はPCIe 3.0 SSDの2製品で、トップから0.9秒遅れのSSD 970 EVO Plusが2番手、1.8秒遅れのBC711が3番手だった。SATA SSDの870 EVO Plusはトップから5.4秒遅れ、HDDはトップから20.9秒遅れだった。SSDの起動時間を考えるとHDDはもっと時間がかかっても良さそうなものだが、意外に健闘していると考えることもできるだろう。

 ロード時間は、PM9A1とSSD 970 EVO Plusが、17.6秒の同一タイムでトップ。次点は0.4秒遅れのBC711だった。SATA SSDの870 EVO Plusはトップから2.3秒遅れ、HDDは22.4秒も遅かった。起動時は健闘したHDDだが、ロード時間ではSSDに大きな差を付けられており、5倍近い時間を要している。

ウォッチドッグス レギオンのロード時間

アサシンクリード ヴァルハラ

 アサシンクリード ヴァルハラは、ゲームの起動とゲーム再開時のロード時間を測定した。測定条件は、ウォッチドッグス レギオンと同じなのでそちらを参考にしてほしい。

 起動時間は、PCIe 4.0 SSDのPM9A1が62秒でトップ。2番手/3番手はPCIe 3.0 SSDの2製品で、トップから1秒遅れのSSD 970 EVO Plusが2番手、2.4秒遅れのBC711が3番手だった。SATA SSDの870 EVO Plusはトップから2.6秒遅れ、HDDはトップから14.4秒遅れだった。起動時間に関してはアサシンクリード ヴァルハラでもHDDが意外な健闘を見せている。

 ロード時間は、PM9A1とSSD 970 EVO Plusの2製品が12.6秒の同一タイムで、BC711がそれから0.1秒遅れ、SATA SSDの870 EVO Plusは0.4秒の遅れだった。SSDの4製品のロード時間は、コンマ数秒の差しかないため、体感できないレベルといってよいだろう。また、HDDはトップから18.4秒も遅く、ロード時間ではSSDに大きな差を付けられた。

アサシンクリード ヴァルハラのロード時間

バイオハザード RE:3

 バイオハザード RE:3は、ゲーム再開時のロード時間を計測した。ロード時間は、起動後にStoryの「Continue」ボタンをクリックしてからゲームが再開するまでとしている。ロード時間は、PCIe 4.0/PCIe 3.0 SSDの3製品がすべて「4.7秒」と同じ時間で並んだ。SATA SSDはこれらよりも0.8秒遅く、HDD至っては10.5秒も遅く、SSDの約3倍もの時間を要している。

バイオハザード RE:3のロード時間

モンスターハンターワールド:アイスボーン

 モンスターハンターワールド:アイスボーンは、ゲームの起動とゲーム再開時のロード時間を測定した。起動は、Steamのプレイボタンを押してからタイトル画面が表示されるまでの時間、ロードはゲーム再開時に「自分で集会エリアを作る」を選択し、確認画面で「はい」を推してからプレイ画面になるまでの時間とした。

 起動時間は、PM9A1、SSD 970 EVP Plus、BC711、SSD 870 EVOの順だが、SSD 4製品の差はコンマ数秒の差しかなく、体感できるレベルの差はでていない。一方でHDDは、SSDから約12秒遅かった。

 ロード時間は6.1秒でPM9A1がトップだったが、2番手のSSD 970 EVO Plusはそれから0.1秒遅れ、3番手のBC711は0.3秒遅れで体感できるレベルの差はでていない。また、SATA SSDの870 EVOはトップから1.3秒遅れ、HDDは約12秒遅かった。HDDは、ロードにPM9A1の約3倍の時間を要している。

モンスターハンターワールド:アイスボーンのロード時間

Apex Legends

 Apex Legendsは、ゲームの起動時間を計測した。起動は、Steamのプレイボタンを推してからタイトル画面が表示されるまでとしている。起動時間は、26.1秒でPM9A1がトップだったが、2番手のBC711はそれから0.1秒遅れ、3番手のSSD 970 EVO Plusは0.4秒遅れで体感できるレベルの差はでていない。また、SATA SSDの870 EVOはトップから1.9秒遅れ、HDDは約13秒遅かった。

Apex Legendsのロード時間

フォートナイト

 フォートナイトは、ゲームの起動時間を計測した。起動は、Epic Game Lancherからフォートナイトをクリックして起動し、ゲームの選択画面がでるまでとしている。起動時間は、36.1秒でPM9A1がトップ。2番手はそれから1秒遅れのSSD 970 EVO Plus。3番手はトップから2.1秒遅れのBC711とSSD 870 EVOだった。SSD 870 EVOは、SATA SSDでありながらPCIe 3.0 SSDと同じ時間をマークしておりかなりの健闘を見せたと言っていいだろう。なお、HDDは、トップのPM9A1から37.7秒も遅れ、起動に2倍以上の時間を必要としている。

HDDとの比較では大幅な高速化を達成ししつも、SSD同士の比較では顕著な高速化がみられない理由とは

 ゲームの起動/ロードの検証結果をまとめると、PCIe 4.0 SSDのPM9A1が最も速く、次がPCIe 3.0 SSDであるSSD 970 EVO PlusとBC711の2製品、SATA SSD、HDDの順となっている。中でもHDDは、SSDと比較してゲームの起動/ロードが非常に遅く、SSDの2倍や3倍の起動/ロード時間は当たり前という結果となった。この結果からも分かるように少なくともゲームを快適に遊びたいなら、HDDからの起動は避けたほうが良いことは明白だ。

 ただし、SSD同士の比較になると話しが違ってくる。というのは、SSD同士の比較では、最大性能を計測するCrystal Disk Markの速度差やPC Mark 10のFull System Drive Benchmarkのスコアの差ほど大きな違いがゲームの起動/ロードではでてないからだ。それどころか、SATA SSDでも意外に戦えるな、と感じた読者も多いのではないだろうか。今回のゲームの起動/ロードの検証結果は、そういった印象を与えるぐらいSATA SSDが健闘している。

 また、PCIe 4.0 SSDとPCIe 3.0 SSDを比較すると、その差はSATA SSD以上に少なくなり、体感できないぐらいの違いしか差が出ていないケースが多かったの事実だ。

 ではなぜストレージ本来がもつ基本性能の高さと実際の使用感に大きな乖離が生まれてしまったのだろうか。この原因を調べるために、今回テストを行なったゲームの起動/ロード時に発生したSSDやHDDの転送データの容量や最大速度などの情報をHWiNFOで取得してまとめたのが、以下の表である。このデータは、OSを起動するシステムドライブとは別のドライブにゲームをインストールして、起動時とロード時のデータを取得している。

ゲームの起動/ロード時に発生したSSDやHDDの転送データの容量と最大速度

 この表の中でまず注目してほしいのが、起動/ロード時の平均読み出し速度だ。平均読み出し速度は、最も速いバイオハザード RE:3のロード時でも246.99MB/sしかでていないほか、100MB/s以上を記録しているのもウォッチドッグス レギオンのロード時のみしかない。また、最大読み出し速度をみても、500MB/s以上の速度がでているのは、ウォッチドッグス レギオンの起動/ロード時のみしかない。このことから現状のゲームは、SATAの転送帯域(600MB/s)で足りてしまうケースが多いことが分かる。

 また、各ゲームの読み出し容量と平均読み出し速度をみると、容量の割に速度が遅いことも目につく。これは、大きなデータのアクセスではなく、小さなデータのアクセスも多いからと推測できる。つまり、小さなデータへのアクセスが、平均速度を押し下げているとうわけだ。さらにゲームの起動やロード時に実際に読み出されるデータの容量は、1GB未満のゲームも多く見られており、インストール時の容量が大きいからといって起動/ロード時に大量のデータの読み出しが行なわれるわけでもない。

 SATA SSDが、今回のゲームの起動やロードで大きく健闘しているだけでなく、PCIe 4.0とPCIe 3.0のSSDで大きな差がでていない理由は、上記の点だと推測される。つまり、現在のゲームでは、比較的小さなデータの転送が多く、結果としてSATAの転送帯域(600MB/s)で足りてしまうケースが多くなっていることが原因だと推測される。

最速を求めるならPCIe 4.0 SSD。コスパ重視ならPCIe 3.0 SSDがオススメ

 今回の検証結果からも分かるように、PCIe 4.0 SSDは、確実にPCIe 3.0 SSDやSATA SSDの性能を凌駕しており、現状最も高性能なSSDであることは間違いない。特にコンマ何秒の違いを求めるといったeスポーツアスリートやとにかく最高の環境で利用したいというユーザーには、PCIe 4.0 SSDをオススメしたい。PCIe 4.0 SSDは、PCIe 3.0 SSDよりも確実にレイテンシ(遅延)が少なくなっている。それが体感できるかどうかは別としても、速くなっていることは間違いない。

 一方で、実際の体感性能を考慮したコスパという観点でみると、現状ではPCIe 3.0 SSDが最も優れている。PCIe 4.0 SSDとPCIe 3.0 SSDのどちらを選ぶかで悩んでいる場合は、敢えてPCIe 3.0 SSDを選択してワンランク上の記憶容量のモデルを狙うといったといった方法も個人的にはオススメだ。

 また、今回の検証結果からも分かるように、ゲームをカジュアルに楽しみたいのであれば、SATA SSDでも十分な体感速度を得ることができる。しかし、PCIe 3.0 SSDは、急速に低価格化が進んでおり、現在では、同容量のSATA SSDと遜色ない価格で購入できるケースも増えた。SATA SSDと同程度の価格でPCIe 3.0 SSDが購入できるのであれば、特別な理由がない限り、敢えてSATA SSDを選択する理由はないだろう。

 この事は、今回利用した評価マシンG-Tune EN-Zにも当てはまる。本製品は標準では512GBのPCIe 3.0 SSDを搭載し、プラス8,690円で512GBのPM9A1に変更できる。最速を求めるならカスタマイズ、コスパを求めるなら標準のSSDというのがオススメになりそうだ。

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