[再]平坂さんに記事になってない部分を聞く

デイリーポータルZ

平坂さんは生き物を捕まえるために離島や海外に行ってます。

記事ではいきなり海外から始まりますが、そこまでどうやって行っているのか、なにを持っていっているのか、普段はなにを食べているのかなど記事には書いてない部分を聞きました。

短期集中連載のまとめです。

いちばん好きなのはマックのポテト

平坂:
いま、道の駅的なところにいます。

林:
それはなぜでしょう?

平坂:
記事を書きたくて。もうすぐ締め切りなんですが自宅では全然はかどらないので。
自然が豊かなところへ行きたいなあっていう。
すみませんロハスな感じで。

林:
平坂さんがロハスでも誰も怒らないですよ。そういうイメージでもおかしくない。

平坂:
ロハスのイメージなんか複雑だなあ。

林:
でもふだんの話を聞くとそんなでもないですよね。

平坂:
全然そんなことないですよ。いちばん好きな食べ物マックのポテトですからね。

林:
みんな平坂さんはふだんからなにか捕って食ってると思ってます。

平坂:
誤解が著しいですね。

林:
今日はそういう平坂さんの記事に書いてないところを聞かせてください。

平坂:
どうぞ。あ、あれ、いま車内に無理やりパソコンを持ち込んでいるので。どんどん傾いてきて。

林:
道の駅とはいっても。

平坂:
車です。

林:
車の中で原稿書いてるんですね。

平坂:
いきなり脱線するんですが、僕の家が事故物件で、なんか出るらしいんですよ。日当たりが悪くて湿気がたまってる。気が滅入る要素が全部乗せなんですよ。スペシャルつけ麺みたいな感じなんで。

林:
家で飼ってる動物には都合がいい環境だったりしませんか。

平坂:
いや、動物にもあんまり良くないんです。

林:
なにを飼ってるんですか?

平坂:
えーと、魚と蛇とサソリとあとヤモリと。でもあれですよ。逃げ出してニュースになるようなのはいないですよ。いちばん大きくて30センチぐらいの魚ですから。脱走対策にはすごく気を使ってますし。

林:
動物たちも日当たりが悪くてまいっている。

平坂:
そうですね。動物用に紫外線が入っている太陽光に近いランプを持ってるんです。植物育成したり、爬虫類を日光浴させるためのもの。最近それを強奪して朝起きたらそのライトあびてエンジンをかけるようにしています。

飼っているヤモリとサソリ。どちらも養殖モノで、自宅でもさらに繁殖させようと画策中。

空港は安全

林:
海外に行くときは飛行機で行くんですよね。

平坂:
そうですね。船で行ったことがまだないですね。

林:
普通にネットでチケット取っていくんですか?

平坂:
そうですね。エクスペディアとかトラベルコちゃんとかそういうやつで。
特殊なルートとかこだわりはとかはないですね。ああいうので安い順に並べて、安いけど、ちょっと時間がかかりすぎるなぁっていうのを除外して。
時間と値段のバランスとれてるやつを選びます。
めちゃめちゃ普通ですね。

林:
トランジットで12時間とかかかるやつとかを除いてって感じですね。

平坂:
12時間ぐらいだったら平気ですね。スケジュールにもよりますけど。
時間の余裕があるタイミングであれば。トランジットでじっと待たされるの大好きなんで。

林:
そうなんですか。

平坂:
空港好きなんですよ。

林:
トランジットで何をやってるんですか?

平坂:
ひたすら動いていい範囲を隅から隅まで歩くとか。トランジットじゃなくても初めて行った国で帰国するときはわざと5~6時間前とか行って時間が許すまで空港の中グルグルしてたりとか。本来はそんな早く行かなくてもいいんだけど。

マイアミ国際空港にて。壁には魚の剥製(模型?)が大量に飾られ、売店ではほそいあやさんが好みそうな飴が売られている。

林:
空港が好きって意外ですね。ギリギリまで川とかにいると思ってました。

平坂:
もちろん川とかも好きなんですけど。空港にいるときってすごくセーフティな感じがするじゃないですか。絶対ここでは殺されないなっていう安心感がある。
とりあえず空港にいれば死なないし、飛行機にも乗り遅れなくて済むっていう安心感と、それでいてほどよい海外感を味わえる。
っていうなんかすごく落ち着くんですよ。

林:
「殺されないという安心感」があると言ってましたが、前に襲われてましたよね。

ガイアナの首都、ジョージタウンで強盗にあった後

平坂:
そうですね。強盗にあった翌日ぐらいですね。デンキウナギを捕まえて帰国するタイミングだったんですけど、もうタクシーの運転手が信じられなくて。
よく聞くじゃないですか。タクシーの運転手に変なところ連れていかれるとか。

林:
聞きますね。

平坂:
空港もわりと外れのほうにあるんですよ。本当にこの運転手空港に向かってるのか?
港のはずれで銃をつきつけられるんじゃないだろうかって。こっそりグーグルマップで向かっている方角を確認したり。また空港のまわりに怖そうな人が溜まってるんですよ。治安が悪い国って。

林:
そうなんだ。

平坂:
空港を出入りする観光客を待ち構えて、ということがあるので。空港の玄関につけてもらったらばっと中に入って。

林:
襲われたのってあのときだけですか?

平坂:
実害に至ったのはそれぐらいですかね?付け回されてやばかった結構ありますけど。

林:
それは怖い。

平坂:
超怖いですよ。しかもだんだん人数増えてったりして。すごくやばそうな人がついて来てるな、撒こうと思って、いろんな道はいるんです。でまた大通りに出て振り返ったらさっきふたりだったのが3人になってたりして。
そう、だからドラクエのモンスターになった気分。
なんか仲間増えてるあ、って。

林:
モンスター側の気持ち。

平坂:
絶対勝てないじゃん!ってはぐれメタルの気持ちわかりますよ。そりゃ逃げますよね。

林:
パリやロンドンでにも行ってましたね。確かにヨーロッパ・アメリカでも空港近くってちょっと怖いですね。

平坂:
タクシーもその空港と契約している正規のタクシー乗らないとぼったくられるとか、微妙なせこいストレスをいっぱい感じます。。
ロンドンで魚釣ってたんですけど、魚捕れて撮影してたら特殊な薬物を飲んでるタイプのかたがすごい目をぎょろぎょろさせながら来て
「お前、魚をいじめるな!」
って。すごく優しい心の持ち主なんだけど、ちょっと怖い。
やばっ思ったんですが、やっとこさ釣れた魚なのでどうにか写真を撮りたい。
ただ撮り続けていると殴られるかもしれない。
ダッシュで連射で撮って。just shooting、逃がすんだ、食べたりしないからって言って事なきを得ましたよね。

ロンドンの街中でデッカい肉食魚『ノーザンパイク』を釣る

林:
日本でも急に話しかけてくる人いますよね。

平坂:
それって酔っ払いとかじゃないですか。 まあまあってなだめたらどうにかなるじゃないですか。海外はイギリスであっても巻き込まれそうで不安になります。

セーヌ川で巨大ナマズを釣る

釣りする場所までの交通手段

林:
釣りするところまでの交通手段ってどうしてるんですか。

平坂:
出来る限りは公共の交通機関を使いたいんですけど。
バスとかタクシーとかどうしようもないってときはレンタカーかりるか。
運転もあんまり好きじゃないんですが。
あるいは物価の安い国であれば、運転手ごと車を借りる。マイクロバスみたいな。
アメリカとかでそんなことやったらお金が飛んじゃうのでレンタカーですけど。

林:
運転手は信頼できる人じゃないと怖いですよね。

平坂:
そうですね。治安がいい場所でしかできないです。タイとかならイケるんですが。
デイリーの記事に載ってるような場所は、アマゾンとか別ですけど、だいたい公共の交通機関、鉄道とかですよ。
あるいは物価の安い国だったらタクシーで。日本だったら5000円払ってもちょっとしかいないですけど、東南アジアだったら5000円分タクシー走らせるとめちゃくちゃ遠くまで何時間も行けるので。そこは安全第一で。
そこはお金がかさんでもしょうがないかな。
その分、航空券代をけちってるんですね。

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どんなかばんを持っていってますか?

林:
海外に行くとき荷物はどれぐらい持っていくんですか。スーツケース?

平坂:
スーツケースはもっていかないですね。

林:
スーツケースは舗装したじゃないと持っていけないですもんね。

平坂:
でも、基本的に道のりの90%は舗装されてるか、舗装されてなくてもちゃんと切り開かれた道にはなってるんで。

林:
僕は平坂さんはジャングルを歩いていると思いこんでますね。バックパック?

平坂:
バックパックにもなるし、車輪もついててキャリーバッグにもなるっていうバッグがあるんですよ。それの60Lぐらいのやつをひとつ。
それだとバイクにも乗れるので。
それ以上でかいと身動きがとれなくなりますし。80Lサイズとかは無理。。

林:
80リットルだと頭の後ろまであるような。

平坂:
そうです。それはそれで危ないですよ。実用的じゃない。

林:
危ないというのは悪路に行ったときにですか。

平坂:
そうですね。そのなんか変なのが来ても、後ろに首を回した時にちゃんと周りが見えない。
60Lのキャリー付きバックパックがメインで、それプラスちっちゃいリュックサックとか。
だから道のりの90%ぐらいはパソコンとかカメラとか入っているちっちゃいリュックサックをしょって、片手でキャリーバッグをガラガラひきながら。
悪路とか山を登らなきゃいけないときとか、あるいはレンタルバイクを借りたときとかはでっかいほうをバックパックモードに切り替えて、ちっちゃいやつは手荷物とか。

道具は日本から持っていく

林:
釣り竿や針は日本から持って行くんですか?

平坂:
そうですね。最低限は。
でも、航空会社のカウンターで超過料金はめったに取られないです。
ターゲットにもよりますけど普通の魚とか虫とかだったら、トータル30キロぐらいですね。重さで言うと。

林:
現地で調達するものはありますか。

平坂:
あります、あります。おもりとか。おもりは日本から持って行くと本当にめちゃくちゃかさんじゃうので。現地で買えそうであれば現地で。

林:
平坂さんが使うおもりって重そうですね。

平坂:
川で使うものは、まあ、こんな10gとか。それはそれで数がたくさん必要になるんですね。
でも深海魚を捕るときは一個あたり2キロとかになるんですよ。
それも1個だけ持ってったらいいかというと、そんなことはなくて。
魚に噛み切られちゃうこともあるので。
だから深海魚をやるときは、おもりをたくさん持って行くことがあるので、荷物が重くなりがちです。
しかも、おもりを現地で買うって言ったんですけど、1個2キロとかって日本でしか売ってないんですよ。そんなバカみたいな重りは。なので深海魚を狙うときはどうにか頑張って持っていく。

林:
2キロのおもりじゃなければ、現地のショップでおもりを買う、と。おもりぐらいですか。現地で買うのって。

平坂:
そう。釣りが盛んな地域、アメリカとかであれば店に寄ってみて使えそうなものを追加するということはありますね。
でも日本みたいにあっちこっち釣り具屋さんがある国ってあんまりないんですよ。

林:
そうなんですね。

平坂:
国道沿い上州屋があるっていうのは、ちょっと世界的に見るとかなり珍しい。
海外に行くと本当に大変です。「釣り具屋さん」というものがあまりないんですよ。漁具屋さん?漁師さんが漁に使う道具をそろえる店みたいなのがあるぐらいで。

林:
プロ用の店だ。

平坂:
ど田舎の町はずれとかにポツンとあったりするんですよね。そういうところで取材に使えそうなものを見つくろうとか。

林:
日本って釣り盛んなんですね。

平坂:
世界一盛んだと思います。

アメリカだと、でっかいウォルマートの中にも釣りコーナーがあったりしますが。でも日米以外は大変ですよね。

林:
パリとかロンドンでは釣りはしないんですね。

平坂:
してる人もいますけど、やや特殊な趣味というか。
現地で買えばいいやってあてにして行くと、現場についてから「あっ、ないね」って話になっちゃうんで、最低限は持っていかないと怖い。

アメリカ、ウォルマートの釣具&アウトドアグッズ売り場でハンティングライセンスを発行してもらっているところ。さらっとガラスケースに銃が並んでる。

昆虫採集は日本にしかない文化

平坂:
釣りに関してはまだましなほうで、いちばん困るのが昆虫です。昆虫採集用の道具。
昆虫採集って文化が日本にしかないんですよ。

林:
そうなんですか。

平坂:
ほぼ日本とドイツにしかない。日本とドイツだけずば抜けて虫好きが集まってる国で。
例えばアメリカとかマレーシアとか、インドネシアとかいい虫いっぱいいるんだけど、文化がないから虫捕り網、虫かごが絶対手に入らないんですよ。
昆虫を捕まえて遊ぶとかコレクションするっていうのが本当にマイナーな趣味で。
そういう国の虫好きの人に、日本から虫捕りアミとか標本箱を持ってってあげるとすごく喜ぶ。

林:
虫取り網を持っていかないといけないんですね。

平坂:
持っていきます。

林:
かばんに入らないのでは?

平坂:
虫かごなら折りたたみ式のやつがあるんです。
虫撮りアミは棹の部分がジュラルミン製でで三脚のように小さくたためる。網は枠ににワイヤーが入っててカメラのレフ板のように瞬時に畳んだり広げたりできる離すと開く。虫かごも同様に折りたたみ式です。
スーツケースに入れても邪魔にならない。
だから現地であいついつの間にか虫捕りアミ持ってるなってたまにびっくりされます。

これが折りたたみ式の虫かご

林:
ドイツ人って日本人と趣味合うものが多いですね。鉄道模型とか。

平坂:
似てますね。国民性とかが。いろんな生き物をペットとして飼育するのも日本とドイツがツートップで。びっくりですね。
僕はまだドイツ人の知り合いがいなくて、行ったこともないんですが。行ったらすごい友達いっぱいできそうな気がします。だからなるべく行かないようにしようと思って。

林:
なんで?

平坂:
悪い仲間が増えちゃうから。

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1日テトリスする日を設けている

林:
宿はちゃんと取ってるんですか?

平坂:
その時々ですけど、基本的には毎回とります。ブッキングドットコムとかで。

林:
普通だ。夜通し釣りををしているようで寝てるのかなと思うんですが。

平坂:
僕は体力がないんですぐ寝ます。仲間同士で行くときは、テント張ってキャンプすればいいよな!ってこともあるんですけど。
ひとりだとちょっと…。そこを野盗とかに襲われたら怖いので。
基本的にはポイントになるべく近い宿とかとります。
基本、体力ないので、例えば1週間日程があったら真ん中に1日か2日ぐらいひたすら宿でゴロゴロする日を設定します。

林:そうなんですね。意外。

平坂:
もったいないとか意外だとか言われるんですけど。それがないとやってられないですよ。
ひたすら宿で寝転がってテトリスとかやる日。ドラクエ5とかやらないと精神もたない。

海外に行くと宿から出なくてもおもしろいことがいっぱいある。宿の明かりによってくる蛾とかも全部が見たことないやつだし。むやみやたらに毎日動くよりも1日挟んで情報を精査したり、撮影した写真を整理したりっていう時間があったほうが結局最終的なパフォーマンスは上がるはずだ、と自分に言い訳しながら。

タイで泊まった宿。こういう狭くて簡素な部屋が好きです。安心感のあるクラシックな施錠システムで防犯対策もバッチリ。
オーストラリアで泊まった宿。取材場所がリゾート地のど真ん中だったりすると、こういう良い部屋を取らざるを得なくなったりもします。

林:
テトリスの日はごはんは地元で食べているんですね

平坂:
興味はありますけど、ごりごりに地元のローカルフードを追い求めるみたいなことしないですね。
だから近くに定食屋さんとかがあれば入ってみて、現地流みたいなものがあればそれを食べますし。
市場巡りが好きなんですよ。どんな魚売ってるのかとか。市場とかめぐるついでにその土地の食材っていったら大げさですけど、出来合いのサンドイッチとか。謎のおにぎり的なものだったりあげぱんとか。そういうものを買い込んで宿に持ってかえって食べるっていう。

…いま林さんが「こいつ普通だな~」って思ってんのが分かります。

市場にはたいてい屋台やテイクアウトの店があるので楽しいです。
タイに行くと毎回食べるロティというお菓子。
ローカルフィッシュが手軽に食べられるのも素敵です。

林:思ってました。でもギャップがあっておもしろいです。

平坂:
海外に向こう行くと。日清が出しているカップ麺なんだけど、日本じゃ売ってないタイプとかあるので、ああいうのとか。

林:
それだけで記事1本書けますよ。

平坂:
かけますね。言われてみると。もったいないことしちゃった。

林:
でもそれを平坂さんが書いてきたらびっくりします。

スペインで食べた日清のカップヌードル・カレー味。日本のカレーヌードルとは全く違う薄口の味付けで、具材にフリーズドライのグリーンピースが入ってます。はっきり言ってあまり日本人の口に合う味ではありませんでしたが、「日清がカレー味のカップヌードルを商品化する」というアクションの結果が、国が違うだけでここまで変わってくるというのは衝撃でした。

平坂:
記事の合間にポンと写真だけだけ挿れたりしますけどね。せっかくだから面白いもの食べようぐらいの興味関心はありますよ。

林:
美味しかったものはありますか?

平坂:
なんだろうな?香港で食べた揚げパン美味しかったな。
粥屋さんがいっぱいあって。お粥は店内で食べるんですけど、なぜか揚げパンは店内でもテイクアウトでも買えるんです。
その揚げパンをね、お粥と一緒に食べるらしいんですけどね、ちょっとほんのり甘くてすごく美味しい味がついて、それをひとりで宿に持って帰ってもりもり単品たべてました。

釣った魚はつまらない精神状態で食べる

林:
とった魚は食べますよね。

平坂:
食べますね。

林:
さばくのはホテル持って帰ってからですか。

平坂:
ホテルだったり、法律的に問題がなければ、現場でウロコ落として内臓を出すぐらいまではやりまります。おろすとか。極力スーパーで売られている状態に近づけて、持って帰る。
だいたいホテル選ぶときはキッチン付きのところを借ります。
で、持って帰って屋内の部屋の中でたべる。っていう感じですね。

火をおこすとかそういうスキルは持ってないので。あんまり外で焚き火とかすると、山火事になりそうで怖いんですよ。基本ビビりなんで。

林:
別にサバイバルやってるわけじゃないですもんね。

平坂:
そうなんですよ。サバイバルやってるとその極現状態における昂りとかがあって…。よく「自分で釣った魚はおいしい」っていうじゃないですか?
そういうバイアスがかかるのが嫌なんですよ。
それ言い出すと素材の味というか、その生物そのものの味が公平にジャッジできなくなってしまう。それはもったいない。
だから持ち帰って。ひと息ついて、フラットな状態で食べたい。
っていうのがあるので、なるべくキッチン付きの宿で、なるべくつまらない精神状態で食べる。

林:
つまらない精神状態で!

これはキッチンのない宿で、従業員さんにお願いしてバスルームでナマズを解体させてもらった時の写真。

平坂:
川原で焚き火して仲間とコーヒー飲みながら塩焼きとかやっちゃうと余計なスパイスかかちゃうじゃないですか。精神的な。
美味しいって言わなきゃ駄目だみたいな。いやなんですよ。

林:
そういうのはイヤなんですね。
平坂:
そう。もったいないですよ。
林:
ねっこが文化系ですよね。
平坂:
決して体育会系ではない。

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アメリカの釣りはライセンスが必要

林:
海外にも禁漁期間や地区ってありますか?

平坂:
結構うるさいです。とくにアメリカはめちゃくちゃうるさいです。「この魚は何月何日から何月何日までの間に、この川のあの橋とこの橋の間でしか捕っちゃダメ」とかすっごく細かいです。
だからアメリカ、カナダに関してはぶっつけ本番で行くと痛い目にあうので、まず最初にアウトドア用品の店とかに行って、その時期のマップを買うんです。
あと、ライセンスも取らなきゃいけないんです。
淡水で魚を採る際のライセンスと、海で魚を採るためのライセンスと、鹿とか動物を捕まえるためのライセンスがあるので、それぞれ選んで。

林:
ライセンスがないけど、釣りをしてはいけない?

平坂:
国によりますけど、アメリカはそうですね。バリバリそうですね。
自分が捕りたい魚について、その冊子かパンフレットみたいなものをもらって、その店員さんにこれが捕りたいんだけど、そのこの辺の地域は今の時期だと問題ないか?という確認したりとか。下調べの日が1日必要ですね。

林:
地元に行って聞いたほうが確実ですね。

平坂:
確かにそうですね。ハンティングとかを仕切っている省庁があって、そこのページに行くと、大体のこと書いてあるんですよ。でもどローカルの話になってくると詳細はわからないんですよ。だから現地に行ってから、って感じですね。

こんなサイトです

林:
やりとりは全部英語でやってるんですね。

平坂:
そうですね。って言っても僕、別に英語が得意ではないので「なんとかフィッシュOK?」「ヒア?」「ノー?」と単語をひたすら言うというごり押しでどうにかしてますね。
むこうもわざわざ外国から来た人を邪険にはしないです。案外。
逆に僕らが日本にいて、アメリカからわざわざすごいマイナーな魚を探しに来たんだけどっていう人きたら、できるだけ手伝いたくなるじゃないですか。
そういう感じなんじゃないかな。

東南アジアとかにいくと漁業権みたいなものへの意識は薄かったりしますすけど。ダイナマイトで漁とかしてるぐらいだから。
ただ私有地ばっかりなんで、それはそれで勝手に釣りしてると鉄砲持ったおっさんがでてきたりします。
この辺大丈夫なの?って地元の方に聞いて、地主さんにちょっと釣りしたいんだけどってチップを渡して、とか。

林:
釣りそのものより、その前後で緊張するシーン多いですね。

平坂:
多いですね。だから僕海外いってもわざわざどぶ川で釣りしたりしてますけど、あれは
トラブルが少ないっていう良さもあるんですよ。
釣りして良いかどうかおまわりさんに聞けばすぐわかるし。人通りが多いからあんまり悪さもされないというか。

林:
すごい知恵だ。

捕れるまで帰れない、はやめた

林:
帰る日は決めてるんですか?

平坂:
決めてますね。以前には決めてなかった時期、捕れるまで帰らない!とかやってた時期もあったんですけど。何回もそれやってるうちに結局、早く帰りたくなる(笑)
とれなくても、仕切り直せばいいじゃんって思うようになって。たぶん心が年をとったんだと思います。
10日頑張ってダメだったら、帰ろうよって。

むしろ最初に何日かを決めて、その日から精いっぱい頑張った方が良いよって心が叫び始めてきたんです最近。
ここ5年ぐらいは。そっちのほうが安くあがったりしますし。

林:
1回の日程で何日ぐらい頑張るんですか。

平坂:
1週間ぐらいで心が疲れてくるのでフルで活動できる日を1週間とるというのが基準。2週間以上滞在する場合もありますけど。
あと締切があるじゃないですか。仕事の。向こうで締切に追われ始めると、結局何もできないので。
たいてい1週間ごとになにかしらの締め切りが来るので、1週間を基準にしてますよ。
たとえば10日いたところで、締め切りラッシュがくるからラストの2日間は動けない。宿で原稿書いてるわけなので。それだったら1週間滞在とあまり変わらないじゃないですか。
仕事との兼ね合いを考えながら、1週間から10日が基準ですね。

林:
飛行機の中で原稿書いたりしてるんですか?

平坂:
めちゃめちゃしますね。飛行機のなかがいちばん原稿はかどるんですよ。新幹線のなかとか。
だいたい海外行くぞってなると、準備とかでいろいろいそがしくなるじゃないですか。
それで原稿が押すんです。それを羽田から向かう国際線の中だけでがーって書いて、目的地へ到着するまでにフリーな状態になって。取材1週間でまたどんどん溜まって帰路便でがーっと書くという。
トランジット長いと助かるというのはそれもあるんですよ。国際空港ってwifi飛んでるから入稿できるし。

バルセロナ国際空港

グーグルマップで魚がいる場所がわかる

林:
ガイドは頼むんでしょうか。

平坂:
場合によってはつけますね。大きい魚を捕ってると読者の方々から「すごい!」って言われるんですけど、実はあれ全然すごくなくて。大きい魚って世界中の釣り人が釣りたいわけですよ。つまり、大きい魚は金になるのでどれもこれもフィッシングガイドが存在するんです。
実際タイで大きいエイを釣る記事とかは現地でガイドを雇っています。

広さ2畳の川魚!タイで巨大淡水エイを釣る旅

平坂:
そうするのが、ぶっちゃけコスパはいいです。確実に捕れるし、ガイドさんが現場に連れて行ってくれるんで。。ただそれって、本当にただの観光で終わっちゃうので。
お金払って大きい魚捕らせてもらいました、で終わっちゃって、取材にならないというか、勉強にならないので、なるべく雇わないですね。

林:
ガイドって地元で依頼するんですか。

平坂:
日本にいながら手配できますね。最近はインターネットに窓口があるので、そこでから連絡するとガイド本人じゃなくて英語が堪能な方がいらっしゃって、その人に相談すると1日いくらですよとか、宿まだ取ってないから、こっちの近くのいい宿を手配したっりとかいろいろやってくれたりもするんですよ。
で、現地に行くと、その窓口の人とは別のゴリゴリのローカルの漁師さんがいたりする。
もちろん、魚がいる場所はその方がよく知っている。

金で釣果を変えるので楽チンではあるんですが、なるべく最初は使いたくないですね。まずは自力で挑みたい。自力で行って玉砕することも多いですけど。
とりあえず行ってみて。なんとなくグーグルマップを見てこのへんに魚いるんじゃないかなみたいなところに行ってみて。

林:
ちょっ、グーグルマップで魚いる場所わかるんですか?

平坂:
わかります。地形で。ミシシッピ川に住んでるとか、なんとか州にいるとか、なんとか島にいるとかまではおおよそわかれば。
具体的なポイントとなると、分かりやすい例だと滝の下とか。
滝って落下してきた水で掻き回されて酸素濃度が高くなるので小さい魚があつまる。で、それを食いに大きい魚があつまる。
あと人工的に作られたダムの下とかもそうだし。川の途中が行き止まりになってると、魚がみんなそこにたまっちゃう。
あと海だったら岬の先端。潮の流れがいいので、魚があつまるんですよ。

ただ、「ここだ!」ってグーグルマップを見て行くと、どう頑張っても水面に近づけないとか。行ったら私有地で、立ち入ったら殺すみたいな看板が立ってるとか。

あるいはグーグルマップ上では完璧だった。でもなぜか釣れない。
なんでだろうって現地の人に聞いたら、「ここはしょっちゅうダイナマイトで魚とってるから、もう大きい魚いない」とか。

それぐらい打ちのめされて、もうどうしても自分の力じゃ無理だってなったらガイドを雇う。それが理想。

林:
ダイナマイトの漁って一般的なんですか?

平坂:
開発途上国だとよくありますね。ダイナマイト使っちゃうと本当に根こそぎ獲っちゃうことになるので。市場を覗いてみても、あまりに品揃えが貧相だと「ここダイナマイトやってんだろな」って分かります。

林:
わかる?

平坂:
はい、雑魚しか並んでないんですよ。
こんなのまで食べる?っていうような、日本だったらまず漁師さんが海に戻すような魚まですっごいキレイな海の前に並んでたりすると。「あ、やってんなー!」って。
本来ならこんなに貧しい海ではないはずなのに、こんな小魚をね、たくさんザルに集めて売ってたりすると…。「コレはなんか不自然なことやってるな」っていうのを感じますね。

東南アジアの某離島にて。海は超キレイなのに、市場には指のように細い小魚しか並んでいないという不自然さ。
いったん広告です

防水カメラでもだめにする

林:
カメラはオリンパスですか?

平坂:
TG-4とあとは一眼。そっちも防滴で。ちょっとは濡らしていいやつ。濡らしていいやつですらだめにしてしまう。

林:
どうやったらだめになるんですか。

平坂:
濡らしすぎるとか。完全防水やつでも延々何時間も水につかっているとだめなんですよ。あと、やたら深くに入れちゃうとか。パッキンとかに髪の毛が挟まったりしても当然ダメ。
あとは単純に岩に落とすとか。
濡れてもいいやって思うと慢心して扱いがどんどん雑になってて。

林:メーカーも想定外でしょうね。

OLYMPUS STYLUS TG-4 Tough

1年ごしで行くこともある

林:
捕りたい魚や虫があって国を決める感じですよね。

平坂:
そうですね。基本的にはそうなんですけど、Aっていう魚とか虫を捕りに行って、それを探してる間に「他にこんな面白いのもいるんだ!」ってターゲットBの存在を知って、一旦帰国してまた次の年の同じタイミングでそれを捕りに行くということもあります。

あるいはAが想定外に早く捕れたら、残りの日程は現地で知ったBを捕まえるのに全力投球したりとか。

林:
珍しい生き物情報は日本にいれば耳に入ってきますよね。

平坂:
そうですね。おおよそは。すごくマイナーなちっちゃい虫とか、小魚とかだと情報が入ってきてないものもあるので、そういうのに遭遇できると嬉しいですよね。

虫の研究室に行けば新種に名前をつけられる

林:
リュウジンオオムカデは平坂さんがみつけたわけじゃないんですね。

新種の巨大ムカデ『リュウジンオオムカデ』を捕まえた&咬まれた

平坂:
いやいや、あれはもう僕が大学に入学するぐらいの年…少なくとも15年ぐらい前から存在自体は生物好きのみんなに知られてたんですよ。
なんか沖縄に超でっかいムカデいるよね、って。
ムカデはすごく分類がむずかしいらしくて。形がみんな一緒じゃないですか。
研究者も少ないから、明らかにあれは新種のムカデなんだけど名前はついてないっていう状態がずっと続いてたみたいなんですよ。
このたび晴れて名前がついたという。

林:
まだ名前が付いてない新種って多いんですね。

平坂:
めちゃくちゃ多いです。
大学時代は魚の研究室だったんですけど、虫の研究室からも声かけられてて、そのときの口説き文句が「うちに来たら卒論で新種に名前つけられるよ」だった。
「あんた、学生のうちに100%の確率で新種を発見できるんだよ」って。
あーそれ心踊るな-と思いながらも、魚の研究室にしました。

林:
魚も新種いそうですね。

平坂:
たぶん出ますね。いま黒潮生物研究所というところに声かけてもらって。客員研究員として働いているんですけど、日本の、特に沖縄の海で新種の深海魚を探すっていうプロジェクトをやってます。

林:
名前つけられますね

平坂:
うん、まあ見つかればですね、見つかると思うんですけどね。

林:
2キロの重りで。深海魚を。

平坂:
大変なんですよ。引き上げるのも電動で勝手に巻いてくれるリールじゃないと。
たまにバッテリー切れとかで手で巻くことあるんですけど。めちゃめちゃしんどいですよ。

マックのポテトの話に戻る

林:
いちばん好きなのマックのポテトなんですね。

平坂:
マックのポテト美味いですね。分かりやすい味で。

林:
ジャンクフードはお腹壊すっていってませんでした?

平坂:
インスタントラーメンですね。特に袋麺。大好きなんですけど。食べると100%おなか痛くなります。それでも好きだから無理して食べるんですけどね。

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