10年後の紅白歌合戦

アゴラ 言論プラットフォーム

NHK紅白歌合戦は1951年に始まったギネス入りする長寿番組です。視聴率は8割を超えた時代もありますが、現在でも4割前後となるお化け番組で国民にとって大みそかの風物詩とされます。それゆえにNHKも趣向を凝らした番組作りに励んでいますが、若い人は裏番組とされる民法に流れたり、そもそもテレビを見る層が減っている中でもう少し議論を進めてもいいこともありそうです。

第72回紅白歌合戦
NHkページより

まず、視聴率。これは確かに番組の人気のバロメーターでありますが、その算出方法はビデオリサーチ社が選んだ10700世帯の視聴状況をベースに計算されます。つまり日本全国で誰がテレビを見ているかという算出はなく、サンプルとして選ばれているこの特定の世帯の動向であると考えると必ずしも日本を代表する大みそかの風物詩かどうかは傾向は分かっても切り口によっては見え方も違ってきます。

視聴率はこの10700世帯がまずテレビをつけているかどうかがポイントで仮に1000世帯しかつけていなければそもそもテレビそのものの視聴率は10%しかないことになり、この10%について番組ごとにどれを見たか、と分け合う仕組みです。よって紅白が40%の視聴率だということは1万人の調査世帯のうち4000世帯が見ていたという計算です。

ただ、この調査はテレビをつけているかどうかの判断であり、それに見入っていたかどうかは別の問題です。ご承知の通り紅白の放送時間は午後7時半から11時45分と4時間15分もあります。人間が集中できる時間は概ね2時間がMAXです。多くのスポーツや映画が2時間程度で終わるようになっているのはそれ以上になると集中力を欠くのです。大学の講義が90分、学校の授業は45分といった具合になっているのは全て集中力の維持が前提になっています。

それゆえ、紅白も二部制になっているのですが、そもそもそんな長時間も番組時間を引っ張れば当然、ずっと見入っている人は少ないわけで4時間強の番組のうち、自分の見たいところだけを抽出視聴しているのではないかと思います。好みがばらける老若男女を満足させるためには苦肉の策ともいえますが、正直、紅白ありきという守りの姿勢がありありと見えてきます。

次の問題は「紅白」=「男女」の「歌」を介した「合戦」という視点です。いわゆる今流行のジェンダー問題を考えると今更男女という区別が恐ろしく時代遅れでこれは明らかに話題になるべき事象なのですが、なぜかその声は表立って出てこないのです。どこかで政治的な力が働いているのか、紅白は男女の戦いではないとしているか、であります。

NHKも工夫をしており、今年から紅組司会、白組司会という呼称はなくなり、「司会」だけになります。これはNHKがジェンダー配慮をしたものとされます。ただ、ご承知の通り、番組の最後には勝敗を決めるので男女の合戦は変わりません。では男女混成のグループならどうするか、基本はリードボーカルの性別次第という決め方をしていますが、デュエットは基本紅組、混成グループはその時々の雰囲気で同じグループが赤ででたり白で出たりする時もあります。まぁ、苦労しているというか無理やり決めごとの枠にはめているという気がします。

ジェンダーフリーの象徴は虹色です。将来、「虹色歌合戦」と呼称変更をしたらNHKもやるねぇ、ということになります。こんなことは異論があろうがなかろうが、姿勢の問題なのでNHK会長が国会に呼ばれても胸を張って「世界に発信するNHKとしては…」と大上段に構えれば良いでしょう。

ところで紅白は世界各地でも同時放送されていますが、主に現地の在留邦人や日系人向けだと思います。私は放送関係に疎いのですが、なぜこれだけの番組ならアジア各国の国営放送に放映権を売却して稼がないのかなと思っています。受信料問題が話題になります。NHKの収益は96%が受信料です。なぜ、NHKが制作するドラマや番組を海外に放映権として売却し、稼ぐ一方、日本の文化を紹介したり、日本をもっと理解してもらえるようにできないのか、不思議なのです。

ルールでそうなっているというならルールを変えればいい、それだけです。変えられないルールはないという発想に立てば何でもできるのです。受信料を上げる、下げるという議論の前にNHKが稼きながながら日本の文化芸術から外交の側面まで担う機関としての役割を持たせれる機能を持てばまるで立ち位置は変わると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月26日の記事より転載させていただきました。