今週のつぶやき:ジャパンロスほか

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大阪のビル火災、これから本格的な捜査するのだと思いますが、仮に報じられている男が紙袋を蹴ってそこから漏れた液体に火が引火したとすればこの男は精神的に「やけくそ」になっていた可能性があります。昨日のブログでちらっと触れたように最近、人が感情を抑制できないケースが増えています。これは個人へのデジタル包囲網と同時にコロナ禍もあり、社会全体が冷たくなりコミュニケーションを取らなくなったことで周囲が様々な事件を未然に防ぐことが出来なくなっているように感じます。このような事件は今後も続くのでしょう。社会が病んでいます。

RomoloTavani/iStock

では今週のつぶやきをお送りします。

溶けるバブルマネー

ここに来て世界の株式市場が変調をきたしています。チャートをざっくり見るとダウ、ナスダック、東京市場共に8月終わりの水準にあります。唯一S&Pだけが大崩れしていませんが、それでも10月末レベルです。FRBの政策が引き金だとは思えず、コロナでもなく、インフレ懸念だとしても日本は低い水準で抑えられています。(日本の企業物価は40年ぶりの上昇ですが。)とすれば何が株価を抑えているのでしょうか?

株価は景気の先行指標で概ね3-6カ月先の状態を表すとしています。とすれば今の冴えない株価は春先に景気が落ち込むことを見通している可能性があります。アメリカは3月ぐらいまでに量的緩和プログラムを終了し、多分5月ぐらいから22年度は3度利上げしたいという希望があるようです。ただ、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は22年度の利上げはないとしています。日銀もまだ緩和策は継続です。とすればアメリカや英国だけが踊り過ぎたようにも見えます。物価は上がり、賃金は上がり、人々はないものねだりをした、ということです。そもそも我慢が出来ない性分がアメリカ人ですので消費爆発が起きたということかと思います。

ならばその爆発のエネルギーの持続性には疑問符が付きます。春先に先行き期待感がしぼみ、人手不足と賃金上昇に負ける企業が出ると同時に企業景況がさえないものになれば株価がはげ落ちるのは自明になります。アメリカのハイテク株を見ているとGAFAMを除き年間の高値と安値の中間以下になっている銘柄が主流で年初来安値に近づいている銘柄も増えています。更に下げれば売りが売りを誘い、抑制の効かないプログラム売買がキックインしますので冬の嵐に備えた方が良いかもしれません。

EV強化方針を打ち出したトヨタ、なぜ?

電気自動車VS内燃機関の自動車という構図の中でトヨタをはじめ日本のメーカーはその中間的な解を求め続けてきました。日本自動車工業会の会長である豊田章男氏の発言はEV化にやや否定的とされましたが私はそれは豊田氏のポジショントークと再三申し上げてきました。事実、豊田氏はトヨタはEV化に反対どころか積極的と明白に答えており、今週には2030年のEV目標を今年5月発表時の200万台(含むFCV)から350万台まで75%も上方修正しています。これはなぜでしょうか?

自工における発言の裏には脱炭素の動きに対するけん制でした。つまり、自動車をEV化するだけでは脱炭素化を達成できるわけではない、よって自動車と脱炭素化を単純に紐づけないで欲しいというメッセージでありました。豊田氏の発言と報道のギャップがあったので、豊田氏の真意がきちんと伝わっていなかったとみています。では今回の大規模な見直しは何か、と言えば産業の立ち位置の変化と人々がそれを受け入れる土壌が出来つつあることを予見し、あくまでも経営方針としてEV化に舵を切るということでしょう。

つまり脱炭素が先にありきではないのです。世の中のパーセプション(認知)が「車はEV」という時代がさほど遠くない時代に来る、とすればガラケーとスマホの違いぐらい、ごく一部の人を除き、EVを選択する時代になるということです。また下請け構造もそれまでに変わるということです。もちろん、スマホの寿命は4-5年、車の寿命は10年以上になりつつある中で世の中の景色が突然変わることはありませんが、子供たちが「昔の車はガソリンで動いていたらしい」と話す時代は必ず来るということです。あくまでも経営的判断だという点を評価すべきだと思います。

ジャパンロス 鎖国は続くよ、どこまでも

日経によると11月30日に発表した1カ月間の経過措置としての外国人新規入国停止を政府は延長する方針だと報じています。まぁそうなるだろうな、と想定していましたので驚きもありませんが、私も日本がまた遠くなったと感じています。日本人は入国可能ですが、それに伴う煩雑な手続きや待ち時間等はTime is Moneyの発想からすれば論外です。私は別に日本食が恋しいとか温泉に浸かりたいという希望はゼロで単に仕事をしたかった、それだけなのですが残念です。

日本が陥った気持ちとは「もう、コロナに振り回されたくない」、だから「鎖国すれば感染は防げるのだ」というこの2年間を通じた国民全般が持つ結論なのだと理解しています。よって岸田総理がかなり思い切った外国人入国禁止に対して世論は極めて高い支持を示したのです。更に小池百合子都知事は「もっと厳しくしたい」と意気揚々であります。その割にワクチン接種率は75%を超えた11月11日からひと月強経ってほぼ足踏み状態になり現在は78%にとどまっています。

問題は鎖国が常態化すると開国するタイミングに議論が生まれる点です。日本的判断を予言すると「一部の国から徐々に」「一日の入国制限を〇人に」といった経過措置がしばらく続くはずです。しかし、確実に鎖国は日本の存在が世界から薄くなるデメリットも大きいのです。国際会議もできないしビジネスも展開しません。多くの方が「それがどうした?」とおっしゃるはずでそれに歯向かうつもりも毛頭ありません。だけど日本のファン層も確実に減らすこの「ジャパンロス」は将来取り戻すのに2年や3年では済まないと思っています。

後記

アメリカで起きた竜巻は同国の歴史で最悪のものだったとされます。その原因はこの時期にしてははるかに暖かい地上の温度とその上空に入り込んだ寒気がスーパーセルを生んだとされます。異常気象の一環なのでしょう。尋常ではない気象状況は世界で日常的に起きつつあります。今夏、シベリアの北極圏の38度は史上最高気温と国連が認定しました。我々の社会は技術やマネーについ目が向きがちですが、いつやってくるかもしれないこの異常気象にどう対峙すべきか、異次元のスタンダードが求められると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月18日の記事より転載させていただきました。

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