気象予報士、増田雅昭さんに天気について聞く月イチ連載。今月も3回に分けて掲載します。
第2回は人間の活動と気温の関係、天気のことを歌っているキリンジについてです!(構成 編集部林)
2021年12月 月イチ天気
その1 気象予報士は11月に夏休みをとる(2021.12.15公開)
その2 人が活動しなくなると気温が下がる(2021.12.16公開・この記事)
その3 佐渡があるから新潟市内は雪が少ない(2021.12.17公開)
都心の上の飛行機が季語
林:
最近は南風だと羽田に着陸する飛行機が都心の上を通るんですよね。渋谷で飛行機見ると暖かいなと思うようになりました。
西村:
飛行機のルートで季節を感じるようになった。季語ですね。
小林:
キリンジの『エイリアンズ』に「遙か空にボーイング」って歌詞がありましたね。
増田:
キリンジ!
小林:
どうしたんですか?
増田:
堀込高樹(キリンジのリーダー)さんはほんとに天気のことをたくさん書いてらっしゃいますね。前に『ジェーン・スー 生活は踊る』でご一緒したときに調べましたが、いろんなのがありました。
増田:
天気のことをすごくわかった上で書かれてらっしゃる。『絶対に晴れてほしい日』という曲。歌い出しが「センター試験の朝は大雪で交通は麻痺」。
小林:
天気原稿みたい。
増田:
『絶対に晴れてほしい日』という曲の中で、「雨雲吹き飛ばしてくれロケット」って歌詞があって、北京オリンピックの開会式のことをイメージして書いたのか聞いてみたらそのとおりだったんです。やっぱり!って興奮して、近くにコップに水があったらガシャーーンってやってた。おもしろかったな。
注)2008年の北京オリンピックで北京の西で雨雲に小型ミサイルを打ち込んで雨を降らし、北京中心部では雨がふらなかった。
林:
永久凍土とか意外な単語が歌詞に登場しますよね。キリンジって。
増田:
少し前の曲だと「朝焼けは雨のきざし」。これはことわざですよね。
西村:
朝焼けは雨が降るんですか。
増田:
毎回じゃないんですけど、そういうタイプの朝焼けがあって。湿気が多くなってきてってパターンですね。空がオレンジになったりしやすい。毎回じゃなくて、焼けてても今日は晴れだなって日もあるんですけどね。
西村:
ことわざで聞くんですけどほんとかなと思っていて。
増田:
多いまでは言えないかな。「そういうこともある」ぐらいのレベル。
林:
キリンジは雨の歌もいくつかあるし
西村:
気象ソング多いんじゃないですか。
人間の活動が少ないと寒くなる
林:
祝日の後で社会活動が少ない日に雪が降ったという話が先月ありましたが、ってことはお正月は下がりますか?
増田:
お正月の都市部は気温が下がりやすいんですよね。東京の初霜や初氷って一時期、お正月の時期に観測されることが多かったんです。それって、気温が下がりやすいタイミングだからじゃないかという話がありましたね。あと、初霜や初氷が観測されるのは月曜日も多かった。休日明けが多かったというのはありましたね。
西村:
日曜に活動がなくて、気温が下がって。次の日にっていう。
増田:
最近は調べてないですけど、以前調べたら、東京で雪が積もるのは土・日・祝日や月曜日の朝がやたら多かった。
林:
さっきのキリンジの歌詞の、”センター試験が雪”っていうのもセンター試験は日曜日ですもんね。
林:
積雪でセンター試験に間に合わなかった子のために試験時間ずらしましたってニュースを毎年聞いている気がする。
増田:
2014年の時点でのデータですけど、90年代以降で東京で5cm以上の積雪があったのが12回あって、そのうち10回が土日祝日。
西村:
それはすごいですね。
増田:
80年代はそういう傾向は見られない。一方で2000年以降に関しては、5cm以上は全て土日祝日。
林:
そんなに。車が通らないだけでも全然違うんだ。
増田:
都心と郊外で平均的に平日に比べて0.2℃ぐらいの差が出てくるという話があるんです。
「たった0.2℃!?」って思うかもしれないんですけど、雨か雪かってほんと0.何度の差で結果が変わってくるので、0.何度というのは都心周辺では馬鹿にできないですね。
増田:
東京で2018年1月22日に23cmの積雪。これは月曜日で、朝から雪が降り始めてますね。
林:
土日に冷えたのかな。
増田:
スタートが気温が低くて、ある意味条件が良かったということになりますね。
西村:
0.2℃なら人間の活動が影響しているかもしれないですね。確かに。
増田:
あくまで平均的な話ではありますけどね。
小林:
森田さんが発表してましたよね。気象学会で。月曜日は寒いって。
西村:
人間の活動が天気に影響を与えるというのはおもしろいですよね。
増田:
昔の話ですけど、いわゆる公害がひどかった時に。ロンドンだったかな。塵埃が多いとそれに水蒸気などがくっつきやすくなる。雨粒になりやすいというような話もあったと思いますね。
林:
東京は空気がきれいになってるから、雨が減るんですかね。
増田:
そういうふうにはっきり現れてないですからね。話が単純じゃなく、難しいですよね。どこまでが影響しているのか。
林:
要素が多いですからね。
増田:
こういう話をしてると、今年は雪がドカッと来そうな気がする。12月。人が少なくなった時に来そうな気がするな。
西村:
ドカッと。
林:
去年の緊急事態宣言で人が少なくなったとき、温度が低くなりましたか?
増田:
少しは影響があったという話もあれば、ほぼ影響はないという話もあり…。色んな報告を読んでるとなんとも言えないんだなって。
西村:
公害に関しては工場が稼働してないからっていうのはあったかもしれないけれど、気温まで下がるかと言われたら難しいですね。
増田:
インドでしたっけ。大気がすごいクリアになって、遠くの景色が見えるようになったって。
林:
ヒマラヤが見えちゃったって。じゃあ12月はそんな感じで、ドカッと来そう。
増田:
来そうな気がする。備えておきましょうってことですね。
昨日の12月の寒気の話とあわせてお考えください。
12月の問題:東京の最低気温(小数点以下1桁まで)
2021年12月 月イチ天気
その1 気象予報士は11月に夏休みをとる (2021.12.15公開)
その2 人が活動しなくなると気温が下がる(2021.12.16公開・この記事)
その3 佐渡があるから新潟市内は雪が少ない(2021.12.17公開)