2021年12月1日、私は約3カ月半の海外生活を終え日本行きの飛行機に乗り込んだ。世間を騒がす “オミクロン株” の影響で「今後日本への入国が厳しくなるかも」というニュースが流れたタイミングと重なり、乗客たちは皆どこか不安げである。
おまけに帰国できたとしても、その先には14日間の過酷な隔離生活が確定しているワケで。覚悟していたとはいえ、それはそれは辛い戦いになるのだろう。最悪の場合 “日本へ入れずトンボ返り” というシナリオも想定しておかねばなるまいな……
……ってことで、本記事では気になるコロナ禍での出国 〜 帰国 〜 隔離先到着までの流れを一挙にご紹介するぞ!
・トントン拍子に……
私が帰国の途についたのはエジプトの玄関口・カイロ国際空港。
宗教上の理由からか、検査ゲートが男性用と女性用とに分かれていたのが印象的だった。
早めに空港へ到着したが「チェックインは出発予定時刻の3時間前から」と言われる。空港内に無料Wi-Fiもないため、ただボーッと待つしかない。
ようやく辿り着いた搭乗ゲート周辺には、ビジネスマンとみられる10名ほどの日本人の姿が見られた。おそらく彼らとはこの先、成田までずっと一緒なのだろう。
この日搭乗したのはエティハド航空便。まずアブダビ(アラブ首長国連邦)へ飛び、そこから成田行きに乗り換えるルートだ。アブダビ行きの機内はアラビア人を中心に100%の満席状態。
なおエティハド航空は世界でも珍しい「全便で搭乗前のPCR検査が義務化」されている航空会社である。つまり「陰性証明書の提出を求めていない国へ行く場合も、飛行機に乗るための陰性証明書が必要」ということだ。
よってエティハド航空は、日本から他国へ向かう際は注意が必要(うっかり検査を忘れると搭乗不可)だが、どのみち証明書が必要な日本帰国時であれば、かなり安心な航空会社といえるだろう。機内での感染リスクを極力減らすことができる。
アブダビまでは約3時間のフライト。これ、日本行きも混んでたら辛いなぁ……。
・アブダビでエジプト人と雑談
初めてのアブダビ国際空港。エジプトでは一般的にお酒が売られていなかった(宗教上の理由)ため、久々にビールを飲むべく売店をのぞくと……
高っ!!! 350ml缶が約1200円!?
「とても買えん」とションボリ床に座り込む私。そこへ「アナタニホンジン?」とエジプト人男性が話しかけてきた。聞けば日本へ行くのだというが、確か現在(12月1日時点)外国人の新規入国は停止されているはずである。彼はそのことをご存知なのだろうか?
恐る恐る尋ねてみると、「娘が日本に住んでいる」との答え。家族滞在ビザを所有する彼は新規入国者に該当せず、今のところは入国可能なのだそうだ。
よく見ると同じ便で日本へ向かう客のうち、約半分ほどが外国人っぽい見た目でいらっしゃる。みんな色々な事情やルーツを持っているんだなァ……と、しみじみ感じるアブダビの夜だった。
日本行きの便は1割ほどの搭乗率。
航空会社はたまったものではないだろうが、座席を多く使えるのはありがたい。機内食を食べて横になると……気づいた頃には中国大陸をとうに超え、飛行機は宮崎県上空まで到達していた。
・空港での流れ
成田空港に到着すると、手続きを進めながら到着ロビーまでの通路を歩くことになる。
注意事項や誓約事項の書かれた紙を渡されるので記入。
なお日本入国に際して必要なアプリ『COCOA』と『My SOS』については、出国前にあらかじめダウンロードしておくことが推奨されている。
入力のやり方などは成田空港で丁寧に教えてもらえるので、とりあえずダウンロードだけしておけばOKだ。
手続きは様々な段階に分かれており、歩いたり座ったりと忙しい。しかし難しいことは何もないのでご安心。
最終的に唾液検査を行い……
陰性結果をもらったら終了だ。ここまで到着から2時間15分。この時はかなり空いていたほうだと思うので、混み合っている場合は長時間待つことを覚悟しておくべきだろう。
手荷物を受け取ったら検疫に進み……
導かれるままに進んでいくと…………
唐突に解き放たれるシャバ!!!!
・あまりにも急な自由
実は私の出発地であるエジプトは、この日の段階で国が定める「検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める国」のリストに入っていない。したがって入国手続きが終われば、あとはもう自力で動くのである。
もちろん「入国後14日間の待機」「公共交通機関を利用しない」などの条件は全ての入国者に適用される。私はこのまま自宅に帰ることも可能なのだが、念のため3日間は自分で手配したホテルで “自主隔離” を行うことを決めていた。
空港周辺のホテルへは無料のシャトルバス(帰国者専用)が運行している。それ以外の行き先へは各自でタクシー、レンタカー、誰かに車で迎えに来てもらう等の手配が必要だ。事前の準備をお忘れなきよう。
それにしても……いくら自主隔離とはいえ、かなり “野放し状態” であることに驚きを隠せない。私はてっきり、入国者全員がもっと厳しい監視下におかれるものと思っていた。極端な話、このまま電車に乗って繁華街へ繰り出そうと思えばいくらでもできてしまいそうだ。もちろんやらんけど。
また宿泊するホテルには “隔離者専用フロア” のようなものがあるとばかり思っていたが、確認したところ「普通に予約して普通に宿泊すればOK」とのこと。けっこう各自の良識に任せてる部分が大きいんだなァ……。
・AIと過ごす隔離生活
さて、ここからの14日間、待機者に課された最大の任務は「入国者健康確認センターからの着信」に応答すること。このやりとりは『My SOS』アプリ経由でなされ、ちゃんと部屋にいるかどうか、そして位置情報の確認となる。
帰国当日は14日間に含まれないため、翌12月2日から私の隔離生活は本格スタート。朝起きて……昼が過ぎて…………なかなか着信はない。ヒマだからオンライン麻雀アプリ『MJモバイル』でもプレイするか。
そして午後5時……
あっ! ついに着信キタ!!!!!
クソッ、よりによって親番で……でも仕方ない。ゲームをオートプレイモードにし、即座にアプリを切り替えるワタシ(オンラインプレイなので中断不可)。
同時にビデオ通話が開始……と言っても、相手はAIである。空港職員の方によると、稀に生身の人間からかかってくることもあるらしい。注意点は「必ず背景に部屋のインテリアが収まるようにすること」。真っ白な壁はNGだ。
30秒間無言で画面を見つめ、通話は自動的に終了する。とりあえず一発目の着信に無事対応できてヨカッタ。急いでゲームに戻るワタシ。すると……
ハネマン振り込んでもうてるやんッ…………!
AIと通話する裏でAIが暴走していたとは……まるで人類の不吉な未来を予言しているかのようだ。AIに振り回されそうな予感しかしない私の自主隔離は、まだ始まったばかり。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.