書き出し小説大賞226回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

今年ハマったお菓子、亀田製菓の「つまみ種」は、ひとつの小袋の中に10種類のスナックが入っていて全員キャラが立っている!まるでアベンジャーズ、ひょっとしておつまみとして初の映画化もあるかも、と食べるたび思うので是非お試しください。
それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門

バイトの冷えた体に、しし座流星群。

人馬一体勘

2001年のしし座流星群は駐車場で寝そべって見た。

この街の雨は、決まってわたしの頭から泣き始める。

髙橋きよてん

兄が拾った怪しいゲームを起動する。僕らの手が、徐々に薄くなっている。

七寒六温

冷たい雪がココアに落ちてきた、午後のこと。

坂上田村麻呂の従兄弟

80年代のティーン小説のような。

ああわたしもとうみんしたい。

花惑

冷えきった爪先をローファーに押し込む。

山棲み少女

あの人の鼻歌になりたかった。

午前0時

かかとから伸びた影が、つま先に届くのを待っている。

昼行灯

誰もいないバス停で泣いていると、回想バスが停まった。

みよおぶ

回送ではなく。同音異義語がネタではなく小説のことばになっている。

丸呑みされた歯の隙間から、一瞬、虹が見えた。

morin

彼が入った時にファミマの入店音が変わった。

節度亜図夢

オーケストラVer.で聴きたい!

蝿は死体に飽き、LP盤の上で居眠りしている。

ろっさん

架空の偉人を作って、存在しない功績に感謝する。

鳥はさえずり、金魚は泣いていた。

夢雀

後半の金魚は泣いていた、が秀逸。対立項を置くだけで小説世界が生まれた。

好きなだけ悩んでいい公園を探す。

ベランダ

安アパートの日陰になってるような、ブランコだけの公園。

手裏剣の勢いでスワイプしている。

井沢

午後、俄雨、抜歯。

ウチボリ

一度お題にもした三つの単語を並べるだけの手法。上手くハマるとやはり良い。

「オチはあなたが決めなさい」そういうと先生は僕の右手にペンを左手に銃を握らせた

淋しいと死んじゃうさぎ

いったん広告です

続いては規定部門。今回のテーマは『大作感』でした。たぶん上中下巻ある本編の、ほんの触りをどうぞ!

書き出し規定部門・モチーフ『大作感』

西暦2000000X年。

八重樫

0多っ!(笑)

時は西暦28年。ナザレのイエスが洗礼者ヨハネから洗礼を授けたのと時を同じくして、ある男もまた、洗礼を授けんとしていた。

代理店

王道の大作感。この書き出しで平凡な男の一生を描いたものでも(それはそれで)いい。

あの日、大統領の前に現れた、傷ついた翼を持つ少女は、彼女の言う通り天使なののだろうか、それともーー。

Yuzie

1945年2月ドイツ西部、ある少女と青年将校の秘密の約束。

八王寺義昭

公転が遅れている。最初に気付いたのはペンシルベニア州の養蜂家だった。

高田

映画「コンタクト」っぽいSFになりそう。

銀河戦争の勝利を、陰から支えた町工場があった。

もろみじょうゆ

池井戸潤×スペースオペラ

病室から紙飛行機を飛ばしていた少年が今、宇宙飛行士として飛び立つ。

いずも

西洋建築群の一角で、クラシックのリズムにのせながらスコッチを飲む男(以下これをaとする)。

大西ダイナマイトヒサト

冒頭からの情報量がすごい。

朽ちた裸婦像。少年は自分の名を刻んだ。

寂寥

移民の朝は白く濁っている。

高田

火を手に入れてしまった。

きゃん

神話コメディ?

世界中の魔術師が血眼で探している秘伝書は、実は最初のダンジョンに落ちている。

prefab

『ベスビオ火山大噴火』と名付けられたその絵は、全て点描で描かれていた。

ベル

挿絵も負けてない!

この砂はかつてアレクサンドロスの血を吸った砂かもしれなかった。隣の砂も。

suzukishika

これから波乱万丈という言葉の語源となった一人の男の話をしよう。

節度亜図夢

世界樹が朽ちた日、けだものどもの宴が始まった。

モンゴノグノム

割れなかったくす玉の中で、ハトたちは文明を築いてきた。

住民パワー

地球のみなさん、お元気ですか?

こちらは群馬県です。

南極行太郎

レジェンド校長が朝礼台で咳払いをし「3つのお話」を語り始めた。

g-udon

次のイカゲームに取り入れて欲しい(笑)

「動き出すシベリア鉄道の座席で、すすり泣く女を3年間演じたことがある…」ある日の夕方、デイサービスから帰宅した曾祖母は玄関先で靴を脱ぐ間もなく突然に、その数奇な運命を語りだした。

葱山紫蘇子

まずはお婆ちゃんに上がって欲しい。

それでは次回のお題を発表します。

次回モチーフ
『偽偉人伝』

次回のテーマは、今回自由部門で採用したいずも氏の作品「架空の偉人を作って、存在しない功績に感謝する」を頂いて、偽の偉人伝とします。(ひょっとしたら過去に同じようなお題を出したかもしれませんが……)
架空の偉人がどんな功績を果たしたか、新発見や新発明か、革命家か暴君か、そしてその人の一生をどこから切り取るか、これは考えるだけで相当楽しそうです。
締め切りは12月10日、発表は12月12日を予定しています。下の投稿フォームからご応募ください。力作待ってます!

最終選考通過者

もちもちの血 タカトウリョウ 鯨谷いさな ぐりはも ぐるりん 首廻り寝具 大体そう 驚き桃の木 ウチボリ アイク 笠原颯真 淋しいと死んじゃうさぎ モリダイ 継人 たこフェリー 吉田髑髏 Atnel JING, Airda em. いそうろう とんか あらららら 青々 はまぼうさん KESHI もろみじょうゆ タカトウリョウ 劇団斉藤 振り向き侍 むすめがはく タクタクさん 小野芋子

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