[再]はらぺこあおむしが土曜日に食べたものをワンプレートにして食べる

デイリーポータルZ

はらぺこあおむし、こんなに色々食べていてすごい。

『はらぺこあおむし』という全世界でベストセラーになった絵本がある。「土曜日」にあおむしが食べたものをワンプレートで再現して食べてみた。

『はらぺこあおむし』の土曜日が気になる

『はらぺこあおむし』という絵本があって、2歳の子どもとよく読んでいる。食欲旺盛なあおむしがたくさん食べて最後に立派な蝶になるというサクセスストーリーである。

『はらぺこあおむし』

あおむしは日曜日に生まれて、月曜はこれを食べた、火曜はこれを食べた、という風にページをめくりながら食事が進んでいくのだけど、一番盛り上がるのが6日目の土曜日である。

すごい食べてる。(エリック・カール 作 もり ひさし 訳『はらぺこあおむし』偕成社、1997、p.17-18)

(以下、17ページ、18ページの引用)

どようび、

あおむしの たべたものは なんでしょう。

チョコレートケーキと アイスクリームと ピクルスと チーズと サラミと ぺろぺろキャンディーと さくらんぼパイと ソーセージと カップケーキと それからすいかですって!

「ですって!」と言いたくなるのわかる。すごい食べてる。

このたくさんの食べ物の羅列が子どもには楽しいらしく、一生懸命自分で読もうとする。一緒に読んでいるうちに僕もこのシーンが好きになった。

食べ物の絵がおしゃれでかわいくておいしそう。それも全体として良いのだ。すごく食べ合わせが悪そうなのになんでこんなに魅力的に見えるのだろう。絵がおしゃれだからだろうか。本当にそれだけだろうか。

おしゃれなプレートにしよう

はらぺこあおむしの土曜日を僕も経験したいと思った。

そして、ただ食べるだけじゃなくておしゃれなプレートのご飯にしよう。人間が食べるわけだから見た目も気にしたい。

絵本のおしゃれな食べ物を、おしゃれなまま現実の世界に呼び寄せ、それを食べたいのだ。

実写版『はらぺこあおむしが土曜日に食べたもの』を作る。この10品をあつめてきれいに盛り付けよう。(エリック・カール 作 もり ひさし 訳『はらぺこあおむし』偕成社、1997、p.17-18)

10品、集まりました

スーパー、ケーキ屋さん、お菓子屋さんなどを行き来して10品集まった。『はらぺこあおむし』みたいに見ていこう。

どようび、あおむしの たべたものは なんでしょう。

チョコレートケーキと
アイスクリームと
ピクルスと(写真中央)
チーズと
サラミと
ぺろぺろキャンディーと
さくらんぼパイと(さくらんぼのタルトで代用)
ソーセージと
カップケーキと
それからすいかですって!

集まった…! けっこうな数、写真を撮り忘れていて盛り付けの工程が見えちゃっているが、この、実物の全然絵本らしくない生々しさが伝わればと思う。じっくり順番に見るとやはり食べわせが悪そうで胸が少し苦しくなる。だからじっくり見なくても大丈夫です。

ちなみに10品の中で見つけるのが大変だったのはぺろぺろキャンディーとさくらんぼパイである。ぺろぺろキャンディーは上野の二木の菓子で、さくらんぼパイは偶然通りかかったケーキ屋さんにさくらんぼのタルトが売っていて飛びついて買った。それまでさくらんぼを使ったケーキすら見つけられていなかったのだ。

逆に、二木の菓子でこれを見つけた時はイメージ通りすぎて一瞬混乱した。こんなマンガみたいな物体、売ってるんですね。

何はともあれ10品そろった。盛り付けて食べよう。

盛り付け

大きなお皿を出して、事前に考えていた通りに盛り付けていく。

ケーキ2種を隣り合わせで置くことはなんとなく決めていた。

ただ盛るだけでも10品あると一仕事だった。タッパーや小皿をたくさん使った。ドタバタと冷蔵庫とテーブルを往復して、最後にアイスを盛ったら完成した。

できた…! 「はらぺこあおむしが土曜日に食べたもの」 けっこうかわいいんじゃないだろうか。
10品、こうなっています。
すいかとサラミはお花の形に抜き、ウインナーはタコさんにして立たせた。ピクルスは半分に切って立たせた。

概ねかわいくなったと思うが、ピクルスの工夫だけよく分からなくなってしまった。チンアナゴみたいでかわいいけど、そういうかわいさを目指していたんじゃない気がする。

しかし意外だったのは色合いの良さである。さくらんぼとすいかの赤、チーズとアイスの白、ウインナーやサラミの茶がバランスよくおさまっていてきれいだ。なんかおいしそうだなーとすら思う。買ってきた状態を見た時より全然いい。

いいぞ。ここで立ち止まってよく考えだすと食べ合わせの悪さが気になってくるので、よく考える前に食べてしまおう。見る前に飛べ、というやつである。

食べる

30分かかったがぺろぺろキャンディー以外は全部食べた。もしぺろぺろキャンディーも完食したかったらプラス3時間は見ておいた方がいい。

そして食べた感想だが、意外なことにすごくよかった。甘いと塩っぱいのバランスがいいし色んなものが食べられて楽しい。すごい量なのに食べきれたのは、この味の振れ幅の大きさと、種類の多さのおかげだろう。めちゃくちゃにボリュームのあるおやつとしてすごく優秀なプレートである。あおむしやるな、と思った。

そして食べながら気づいたのだが、このプレートをおいしく食べるために大切なのは食べる順番である。

アイスを最初に食べないといけないのは仕方がないとして、そのあとは塩っぱい、甘い、の順番で食べるといいと思う。
まとめるとこんな感じだ。

もっと塩っぱいと甘いを行ったり来たりしたい人は、塩っぱいものの後にすいかかカップケーキ(甘すぎないやつ)を食べるといい。チョコレートケーキなどを食べてしまうともう塩っぱいものを食べようという気持ちになれなくなる。

あと、それぞれの量も大切だと思った。ピクルスとかがたくさんあるとペース配分がかなり難しくなる。

注意することが多くなってしまったが、意外と良い、という事実が嬉しいのでどんな風に食べたらより良くなるかを考えるのも楽しかった。とにかくあおむしやるな、という気持ちである。

あおむし、俺はやったぞ

はらぺこあおむしが土曜日に食べたものをワンプレートで食べた。ほぼ全部を再現できたし、ほぼ全部をおいしく食べられたのが嬉しかった。あおむし、俺はやったぞ、という気持ちである。

これからこのページを見るたびに、この満足感を思い出せる。(エリック・カール 作 もり ひさし 訳『はらぺこあおむし』偕成社、1997、p.17-18)

では、はらぺこあおむしに敬意を表して日曜日も再現して終わろう。

つぎのひは また にちようび

あおむしは みどりのはっぱを たべました。

とても おいしい はっぱでした。

おなかの ぐあいも すっかり よくなりました。

こう続くのだけど、特にお腹は壊してなかったし、むしろ丼いっぱいの葉っぱを食べる方が大変だった。

ベビーほうれん草。

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