Intel、ゲーミング向けCPUで最速の座奪還を狙う第12世代Coreを11月4日に発売

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Pコア、Eコア、そしてIntel Thread Director

 第12世代Coreの技術的な詳細について、既に8月に開催した「Intel Architecture Day 2021」で一部明らかとなっている。具体的に言えば、1つのチップ内に性能重視コア(Pコア)と電力効率重視コア(Eコア)の2種類のコアを混在させ、負荷に応じて最適なコアにスレッドを割り振る「Intel Thread Director」によって、効率性と性能の両立を図ったアーキテクチャが特徴となっている。

 Pコアは「Golden Cove」で、第10世代のComet Lakeと比較して同クロック下で28%増、第11世代と比較しても14%増の性能向上が見られるという。一方でEコアは「Gracemont」で、こちらも同クロックのComet Lakeと比較して1%の性能向上があるという。それだけ第12世代CoreはPコアもEコアも非常に強力な構成だ。

最大8基のPコアと、8基のEコアを混在させた16コア構成

同クロックの条件では平均19%の性能向上を実現したという

Intel Thread Directorを搭載し、Windows 11利用時に最適な性能を発揮

L3をPコアとEコアで共有している

 このPコアとEコアの両方をうまく使いわける仕組みがIntel Thread Directorで、現時点ではWindows 11でのみその真価が発揮され、アプリケーション自体のワークロードや優先度をOSが判断して最適なコアが選択される。

 Windows 11では発売時からこの仕組みをフルに利用できる。Windows 10ではIntel Thread Directorの一部機能の実装にのみ留まるため、完全に発揮されるわけではないが、それでも十分な性能を実現できるという。一方でChromeOSなどについてはこれから最適化をしていくとのことだった。

気になる性能は?

 もっとも注目される性能であるが、250Wでフル稼働するCore i9-11900Kに対して、Core i9-12900Kは241Wの消費電力で+50%のピーク性能を実現できるという。125Wに制限しても+30%、65Wで同等のことだ。このあたりは純粋にコア数が倍増していることによる影響が大きいと見ていいだろう。

 これまで長時間負荷をかけた時の電力はPL1、短時間負荷をかけた時の電力はPL2と表現してきたが、それぞれ「Processor Base Power」と「Maximum Turbo Power」という表現に変更された。Core i9-12900Kを例に取ると前者は125W、後者は241Wとなるわけだが、第12世代のアンロック版では標準でいずれも最大値、つまりCore i9-12900Kでは241Wが設定されるという。これにより最大限の性能を発揮できるようにしたとしている。

 この結果、Core i9-11900Kと比較して多くのゲームで20%近い性能向上を実現。また、Pコアでゲームを走らせる裏側でキャプチャしてストリーミングを行なうような用途だとEコアが活き、「Mount & Blade II: Bannerlord」のような多コアに最適化したようなゲームだと、84%もフレームレートが向上するとしている。

 一方でコンテンツ製作のような用途だと、フォアグラウンドでRAW現像やJPEGへの吐き出しをしながら、編集したビデオを出力するといった作業を同時に行なえるようになるため、Core i9-11900Kと比較して47%も作業時間の高速化が図れるとした。そしてごく一般的な生産性アプリケーションでも、15~19%程度の性能向上を実現できるとしている。

 気になる競合のRyzen 9 5950Xとの比較だが、説明の時点ではまだRyzen向けのL3キャッシュ遅延問題に対処したパッチを適用した状態でベンチマークが取得できなかったとしているが、例え当てたとしても、多くのゲームでより高い性能を実現できるとしている。

今度こそオーバークロッカーの福音となるか……?

 第12世代Coreではオーバークロック可能なSKUから投入していることからも伺えるように、オーバークロッカーやエンスージアストが「遊べる」プロセッサとして仕上げている。

 Intelは第2世代CoreことSandy Bridge世代で、CPUのダイとヒートスプレッダの間をソルダリングで接合していた。この時のソルダリングは熱伝送のボトルネックとならず、あまり問題とならなかったのだが、第3世代CoreであるIvy Bridgeでこの間の接合材(TIM)をシリコングリスに変更したことで、オーバークロックをした際にボトルネックとなってしまった

 その後シリコングリスの改良を加えながらも、抜本的な問題解決にならず、オーバークロッカーの間でCPUのヒートスプレッダを除去してTIMを液体金属に置き換える改造が流行してしまう。これが第9世代Coreで再びソルダリングに戻すという試みが行なわれたが、ダイとソルダリング両方に厚みがあったためボトルネックが存在し、オーバークロッカーにとって十分とは言えるものではなかった。第10世代/第11世代ではダイこそ薄型化したが、ソルダリング部は厚いままだった。

 この問題をついにIntelも認識したのか、第12世代ではダイもソルダリングも薄くしてボトルネックを軽減したとしている。ただオーバークロックのヘッドルームについては説明されておらず、発売後のオーバークロッカーの報告を楽しみに待ってほしいとしている。

従来と比較して、ダイもソルダリング部分も薄型化し、熱伝送のボトルネックを軽減したという

 一方Windows上からオーバークロックできるツールとして、「Intel Extreme Tuning Utility 7.5」から対応を行なう。このバージョンではPコアのみならずEコアのオーバークロックが可能となるほか、DDR5メモリのオーバークロック機能、XMP 3.0への対応、Dynamic Memory Boost機能、Synthetic Internal BCLKコントロール機能などが追加された。

 Core i9-12900Kを例に挙げると、Pコアは標準で4.9GHz、Eコアは標準で3.9GHz駆動となっている。Intel XTU 7.5では各々を設定できるのはもちろんだが、初心者向けに「Intel Speed Optimizer」と呼ばれるワンクリックオーバークロック機能も用意している。これを利用すると、数秒でPコアは5GHz、Eコアは4GHzに設定されるとのことだった。

DDR5メモリで加わるXMP 3.0などの機能

 一方XMP 3.0はDDR5に対応した、SPDに基づく新しいメモリプロファイル拡張規格。従来XMPプロファイルは2つまでとなっていたが、新たに5つのプロファイルを保存できるようになり、このうちの3つはベンダーが使用、2つは書き込み可能でユーザーが利用可能となっている。また、プロファイルの名前も16文字までユーザーが設定できるようになった。一例だが、バンド幅を重視したプロファイルと、レイテンシを重視したプロファイルの2つを用意しておき、用途に合わせて切り替えて最適化するということも可能になる。

 また、負荷に応じてメモリクロックを変動させる機能が、「Intel Dynamic Memory Boost Technology」として実装された。これまでメモリのクロックをリアルタイムに変更させる機能はデスクトップ向け第11世代Coreでも実現できていたが、負荷に応じて変動させられるようになったのは初。XMPを持つメモリであれば、JEDEC標準プロファイルとXMPプロファイルを切り替えられるとしている。なお、この機能はDDR4でも有効となる。

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