自民党の金子恭之総務相10月22日、富山市で開かれた自民党候補の集会で、自公の与党が過半数を失えば岸田文雄首相の退陣は避けられないとの認識を示したそうだが、憲政の常識をわきまえないと思う。
金子氏は、「勝敗ラインとして首相が与党の過半数確保」を挙げていることを踏まえた発言し、「今回は政権選択選挙だ。自公でこれからも続けていくのか(立憲民主党や共産党などに)譲っていくのか。岸田政権が過半数割れした場合、当然退陣しなければならない」といったそうだ。
だが、たとえば、自公で1議席過半数を失ったら、立憲民主党や共産党に政権を渡す気か? まず、そのケースでは、立憲と共産で過半数あるわけでないので、金子総務相ら自民党が過半数を失ったので、枝野幸男首相を首相にするように投票でもしなければ、枝野政権は成立しないのだが、金子総務相自身は枝野氏に投票する気なのか。
世界的な憲政の常識は連立政権で過半数を失っても、比較第一党がまず組閣を組織するように各党と交渉に入るのこそが常識だ。
もちろん、新しい連立政権を成立させるために、新議会の過半数を持つ政党が閣外協力も含めて連立政権についての協定を結んだうえで首班指名に臨めばいいが、少なくとも維新は参加しないだろうし、国民民主党などもおそらく共産党込み過半数では政権に参加するまい。
となれば、まず、第一党党首たる岸田首相が維新や場合によっては、国民民主党や無所属当選者と連立交渉をしたり、閣外協力を求めるのが筋であろう。
もちろん、岸田首相が敗北の責任をとって党総裁を辞任し、新しい総裁を国会召集までに選び、首班指名に臨むということは、不可能ではないが、その場合に、自民党の党則上、国会召集前でも新しい当選者が新総裁を選ぶ投票に参加できるのかとかいった資格問題もあるし、新総裁は先の総裁選挙で2位になった河野太郎氏なのか、議員投票で2位の高市早苗氏なのかだって難しい。
常識的には、岸田首相がそのまま連立交渉にあたり、それに失敗して、枝野氏が首班となったり、維新などとの連立協議で、別の首相候補擁立に各党間合意を成立させて、その人が首班に指名されるのはありだ。
それが自民党員なのか、それとも、細川護熙氏が首班になったときのように別の政治家なのかによっても違うが、自民党は新たな総裁を首班指名後に選ぶこともありえないわけでない。
しかし、いずれにしても、過半数を1議席でも割ったからといって岸田首相が、首班指名をすぐに放棄したり、あるいは、総裁を辞任するというのは、上記の日程的にも技術的にも無理を生じるわけであって、金子恭之総務相のような岸田派出身の閣僚が軽々に口にするのは筋が通らないと思う。
私は立憲民主党が過半数を獲得するか、あらためて、きちんとした連立協定を結んだ野党が過半数を獲得するまで岸田首相は、最後まで諦めないのが筋だと思う。
これは、前回の総裁選挙のときにも、260議席割り込んだら安倍退陣とかいった愚か者がいたときに、私は書いたことがあるが、こんな憲政の常識を説かねばならないほど、日本の与野党の国会議員のレベルが低いことが嘆かわしい。
あらためていうが、共産党まで実質与党として参加した政権なんぞ、あらゆる方法を使って阻止すべきなのだ。