鏡よ鏡、日本で一番深い湖は、何湖?…
「明鏡止水」って言葉があるだろう。曇りのない鏡のように澄んでいて、流れずにとどまっている水面のように落ち着き払った不動の心、という意味合いだ。
ここしばらくの世間の混迷ぶりを目の当たりにして、せめて心の中だけはこのような境地にいれまいかと考え、制作いたしました。
ということでは全然なく、ただ単に「湖の立体模型で鏡作ったら面白かろう、お!“みずうミラー”だ、あはは」と、うかうか作ってみたわけである。
地形が手のひらの上に!
みずうミラー、みずうミラー。唱えているとなんだか怪獣みたいだな。と思ったがケムラーとかミクラスとか思い起こさせるからかな、そして全然似てないな。
というわけで、いそいそと準備に取り掛かる。まずは3D地形図の入手だ。その地形図を3Dプリンターで実体化して、湖面にあたる領域に鏡を貼れば完成である。湖と、周辺の山々との差が際立つほど良いだろうから、まずはカルデラ湖から作りやすそうなのを選ぼう。
国土地理院のこのページから「地理院地図」に飛んで、3Dデータを取得する。
まずは秋田県の田沢湖を選んだ。日本一の深さを誇る。深いので冬でも湖面が凍らないらしいぞ。湖畔にたたずむ「たつこ像」のお守り、昔お菓子メーカーの懸賞で当たったんだけどどこ行ったんでしょうね、母さん。
しかしこの3D化は楽しい。楽しくて、実家とか出身地域とかキャプチャしまくってたがハッと我に帰る。そうだプリントし終わるまで、べらぼうに時間かかるんだったわ。
うちの3Dプリンターは、高さ1cm分出力するのにだいたい1時間かかる。鏡=湖面の大きさからして、全体を10cmほどに設定したい。ということは、出力まで10時間かかる計算である。こりゃ夜なべ作業だな、私は寝るけど。とにかく急ごう。
ここで出力後のお写真を入れるべきだが(というか撮り忘れた)、はたと気づいた。手鏡って、丸いイメージもあるよね。そのほうが無駄がなくて、鏡っぽくていいのではないか。
あちゃー出し直しか、と思ったが田沢湖はこのままでいいや。他に2つ、違う形でバリエーションを持たせることによう。
次のモデルさんは、今度は日本一の透明度を誇る、しかもカルデラ湖からのエントリー、摩周湖である。
Blenderという3Dモデリングソフトで、なんとか円形に切り抜けた。これを出力してみる。
真ん中の摩周湖は少しだけ厚みを増して、高低差を強調している。そして左端にあるのが、ご存知、日本一大きな琵琶湖であるが…?
いや、単にプリンターの不具合です。それよりも。
琵琶湖はついつい日本一ということで採用してしまったが、カルデラ湖ではない。よって、湖面とほぼ見分けのつかない低地が多い。うーむ、ここまで境界線がわかりにくいとは…鏡を切り抜く時、形がわかるかしら。
ここから一気に手作業シークエンス
さてここからが少し面倒だ。3Dプリントするとき、大きさを適当に拡大・縮小してしまったので、出力した現物を基準に湖面の型紙を作らねばならない。さっきまでのデジタルぶりはどうした。
こういうときはレーザーカッターだよな…と思いつつ、そういうものが置いてあるカフェにサッと行けない私である。
鏡も、手で切るわ…。0.5mm厚ならレーザーなくても家で切れるな、と買った、この「どこでもミラー」をだ。
ハサミだと切り口がゆがみがちになるので、細い彫刻刀で腕が痛くなるくらいがんばった。が、結局うまくハマらず微調整の連続となり、最後はずっとハサミで切ってたけど、仕上がり具合はあまり変わらなかった。なんなんだ。
地味な苦労の連続だったが、ようやくできたぞ「みずうミラー」が。
3D出力した湖面がいまいち平坦でないせいか、薄い鏡が歪んでしまった。私の心のようである、とかなんとか…
実際に暮らしの中で使ってみよう。
んなわけない。
でも「みずうミラー」を作れた時点で実は相当満足してしまった。もっとミラーをきっちり作れたら、もう持ってるだけでうっとりだと思う。電車とかで取り出してうっとりと眺めちゃうと、周囲から誤解されかねないのでそこは気をつけたい。
もっと私に3Dモデリングの技術があったら、湖面を数ミリ下げて、鏡が完全に埋まるようにできただろう。そして額縁風の縁取りもつけたいところだ。いつかでっかいカスピ海ミラー作って、ちっちゃい目のゴミ取りたいな。
【告知】
デザインフェスタVol.54に、1日目(11/13)のみ出展します。ブースNo.は「I (アイ)-200」、4Fの西4ホールです。ベアリングマとかガチャ版ベアリングマとかソフビとか持っていきます。ご都合よろしければぜひ。