CEATEC 2021 ONLINEのオープニングイベントが、2021年10月15日に開催された。
主催者である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の綱川智会長(東芝社長兼CEO)は、「CEATECは、2年連続で完全オンライン開催となったが、未来に向けた共創がひとつでも多く、生み出されることを願っている」と述べた。
ニューノーマル社会おける「Society 5.0」実現に向けた4つのテーマに重点
CEATEC 2021 ONLINEは、昨年に続き、完全オンラインで開催され、2021年9月9日からはすでにプレイベントを開催。10月18日には、報道関係者を対象にしたメディアデーを実施し、10月19日~22日まで、メインイベントを開催する。さらに、11月30日までは、アフターイベントを開催する予定であるほか、アーカイブによるカンファレンスの視聴が可能になっている。
今年の開催テーマは、「つながる社会、共創する未来」。スローガンは、「ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC」を掲げ、「カーボンニュートラル」「5G」「モビリティ」「スーパーシティ/スマートシティ」の4つを重点テーマに、様々なカンファレンスを用意しているほか、オンライン展示会場には、300以上の企業、団体が出展する予定だ。会期中には15万人以上の参加を見込んでいる。
JEITAの綱川会長は、「CEATECは、2016年から、CPS/IoTをテーマに掲げ、Society 5.0の実現を目指し、業種や業界を超えた共創により、新しい市場を創出する展示会となった。これはオンライン開催となっても変わらない。社会のあり方や価値観、行動様式が目まぐるしく変化しつつあるなか、社会に対して、幅広い提案を行うべく、昨年と同じ推進スローガンを掲げた。だが、昨年は、『ニューノーマル』そのものをキーワードとして扱っていたが、今年は、『ニューノーマル社会』とし、withコロナにおけるSociety 5.0の実現に向けた4つの重点テーマを取り上げる」とした。
「カーボンニュートラル」は、コロナ禍で世界全体が直面している課題であること、その解決に企業や社会のDXと、それを加速させるインフラである「5G」、さらに5Gも活用した「モビリティ」、それらによって実現される姿として、「スーパーシティ/スマートシティ」の取り組みが重視されることを示し、これによって、Society 5.0の実現につなげていく姿勢を強調した。
綱川会長は、「今年のCEATECは、この4つの重点テーマのもと、日本国内のみならず、世界中から出展した企業や団体が、幅広い提案を発信するとともに、多彩なフロントランナーによる数多くのコンファレンスを実施する。場所や時間にとらわれず、より多くの方々に参加してもらいたい」と述べるとともに、「新型コロナウイルス感染症が早期に終息し、来年こそは、CEATECがリアルとオンラインを組み合わせた新しい形で開催できることを期待している」と締めくくった。
なお、主催者では、メインイベントの開催初日には、会場へのアクセスが集中するため、事前に入場登録することを勧めている。登録は無料。
総務大臣、情報通信基盤の整備と戦略的投資の推進を語る
オープニングイベントでは、JEITAの綱川会長の挨拶に続き、国内外からメッセージが寄せられた。
総務省の金子恭之大臣は、「昨年に引き続き、オンラインでの開催となったが、オンラインだからこそ、日本全国、世界各国の多くの方々にCEATECを体験してもらえる絶好の機会になると期待している。テレワークの推進やSociety 5.0の基盤となる5Gの早期全国展開など、デジタル社会に対応する取り組みを通じて、ニューノーマル社会の実現を官民あげて、迅速に進めていく必要がある。総務省は、5Gや光ファイバーなど、ニューノーマル社会を支える情報通信基盤の整備、サイバーセキュリティ対策など、安全で信頼できるサイバー空間の確保、テレワークの推進や高齢者へのデジタル活用支援、Beyond 5Gなどの最先端技術への戦略的投資の推進といった施策を進めていく。なかでも5Gは、今年のCEATECのなかでも大きく取り上げられている。5Gに関する最新動向や利活用方策などの意見交換が活発に行われることを期待している。CEATECで示されたソリューションや技術を社会に実装し、活用してもらうことが、ニューノーマル時代の礎を築くことにつながる」などと述べた。
経済産業大臣「ニューノーマルの未来を先取りして、体験してほしい」
経済産業省の萩生田光一大臣は、「CEATEC 2021 ONLINEは、時間、場所に制約されないため、あらゆる国々や、日本全国の企業とつながりやすい展示会となっている。岸田総理が目指す地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こすデジタル田園都市国家構想の実現に向けた先進事例が紹介されることになる。コロナ禍によって、日常の様々な場面でデジタル化が加速する一方、日本の行政サービスや民間でのデジタル化の遅れを浮き彫りにした。日本は、この難局をチャンスと捉え、デジタル技術を積極的に活用し、自らを変革することができるかといった分水嶺に立っている。CEATECで紹介されるIoTやAIなどの最先端技術は、企業のビジネスモデルを進化させ、人々の生活を豊かにする上での鍵となる。CEATECを通じてニューノーマルの未来を先取りして、体験してほしい」とした。また、「誰もがデジタル化の恩恵を受けられる社会の実現には、半導体、データセンター、5Gなどのデジタル基盤が不可欠である。経済産業省は、先端半導体の製造基盤の確保や、大量のデータを瞬時に伝達、処理するために必要な5G、データセンターの整備を進めていく」と述べた。
経団連副会長「経団連も日本社会を復活させる取り組みを全力で」
経団連の南場智子副会長(DeNA会長)は、「日本経済は岐路に立っている。この30年間で、世界経済の中心となるプレーヤーが大きく入れ替わり、ベンチャーキャピタルの出資を得た企業が主役になっている。日本が反転攻勢を仕掛けるためにも、世界で勝てる分野で戦っていかなくてはいけない。IoTやロボティクスといった新たな技術革新を扱うCEATECにおいて、新しいビジネスや事業が創造されることは大きな意義がある。CEATECが新たなイノベーション創出の場となること、スタートアップ企業や大学発の技術やアイデアから、日本発のイノベーションが世界に広がることを期待している。経団連としても日本社会を復活させるための取り組みを全力で進める」と述べた。
レジリエンスを発揮する「ニンジャ・イノベータ」が必要
一方、米CESの主催団体である米国民生技術協会(CTA)のゲーリー・シャピロ社長兼CEOは、「CEATECの『つながる社会、共創する未来』というテーマは、適切で、重要なビジョンである。デジタルツールを活用して、新たなコネクションをつくり、新たなビジネスチャンスを探索するものになる。日本は、テクノロジーリーダーシップを将来に向けて発揮している。それは、日本が持つ強力なエコシステムによるものである。日本の大学の学位の半分はSTEMの領域であり、将来に必要とされるイノベーションを生み出すことができるユニークな立場にある。また、研究開発を優先しており、GDPの3%をここに投資している。これは米国やオランダを上回る水準である。日本はレジリエントなインフラに投資をし、自然災害にも備えている。いまこそ、速く動き、早く適応し、レジリエンスを発揮するニンジャ・イノベータが必要である。限界に疑問を感じず挑戦する忍者のように、物事を考えなくてはいけない」などと語った。
18年前にはSFだった世界を経験している
IFA/国際コンシューマエレクトロニクス展メッセ・ベルリングループ副社長兼IFAエグゼクティブ・ダイレクターのイエンズ・ハイデッカー氏は、「いま、あたり前のように経験していることは、18年前にはSFの世界であった。日本のコンシューマエレクトロニクス産業や日本の消費者は、テクノロジーリーダーとして、可能性の限界を押し広げてきた。生活を生産的に、健康的に変え、より楽しいものにしてきた。東京オリンピックの成功は、テクノロジーが世界にとって必要不可欠なものであり、物理的な距離を超えて、イマーシブな経験を実現した証明でもある。これからの未来は、以前の普通には戻らない。DXによって、世界には仮想的な世界が生まれた。カーボンニュートラル、5G、モビリティ、スーパーシティ/スマートシティというCEATECの4つの重要テーマは、デジタル技術が、いかにして持続可能性を実現するかを取り上げたものになる」などと語った。
また、オープニングイベントではキーノートが行われ、JEITA会長を務める東芝の綱川智社長兼CEOが、「カーボンニュートラルとインフラレジリエンスへの東芝の取り組み」と題して講演。また、Cognite ASのジョン・マーカス・ラービック共同創業者兼CEOが、「産業の収益性とサステナビリティへの貢献をもたらすデジタルトランスフォーメーション」と題して講演した。
デジタル大臣は「デジタルで温かさを実感してもらうための政策」に意欲
キーノートでは、デジタル庁の牧島かれん大臣も登壇。「コロナ禍では、手続きのために行政の窓口に行かなくてはいけなかったり、オンラインで申請ができても、完結できないといったように、日本のデジタルの遅れを、さまざまな場面で感じたのではないか。20年前にIT基本法が作られ、枠組みやインフラとして、ITが実装されてきたが、それを活用してデジタル社会へと形を変えることが十分にできていなかった。デジタル庁では、規制改革、行政改革、デジタルをあわせて推進することになり、これまで以上に強力に成果を出したい」と語った。
また、「デジタルと聞くと『冷たい感じがする』という声があるが、デジタルで温かさを実感してもらうための政策を進めたい。デジタル田園都市国家構想で示されたように、どの場所からも、デジタルの恩恵を受けられ、メリットを感じることができる社会にしていきたい。現在、デジタル技術を、霞が関や地方自治体、行政機関といった公共分野から、医療、介護、健康、防災といった準公共分野へと広げようとしている。自然災害が多い日本では、デジタルで一人ひとりの命を守ることにも向き合う必要がある。また、DFFT (Data Free Flow with Trust=信頼ある自由なデータ流通)という日本発の概念を世界に発信しよう考えている」などと述べた。
デジタル庁では、10月10日、11日をデジタルの日とした。「デジタル日を制定したことで、定期的に振り返り、体験し、見直すことができる。来年もデジタルの日がやってくるが、来年は10月をデジタル月間とする。さらなるイノベーションが生まれ、多くの人をワクワクした体験に誘うことができる」としたほか、「今年は、民間企業の力を借りて、オンラインでイベントを開催し、延べ視聴回数は250万回に達した。多くの人に関心を持ってもらった。テーマは、『#デジタルを贈ろう』とし、デジタルを通じて、温かい心も贈ってもらうことを目指した。離れて暮らす家族にPCを贈ったり、使い方に慣れていない人をサポートしたりといったことも行われている。デジタルデバイドの解決には民間の力が必要である。一人ひとりの心の持ちようでデジタルデバイド対策が進むと感じた。力をあわせてデジタル社会を推進していこう」とした。