真鍋氏にノーベル物理学賞 地球温暖化予測に貢献―「気候モデル」確立(時事通信)
スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、コンピューターを使った地球温暖化などの予測手法を確立した米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(90)ら3氏に授与すると発表した。
真鍋氏は愛媛県出身。1958年に渡米し、米海洋大気局などで研究を続け、75年に米国籍を取得した。
(中略)
日本人のノーベル賞は2019年に吉野彰・旭化成名誉フェロー(73)が化学賞を受賞して以来で計28人目(米国籍取得者を含む)。物理学賞は15年の梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(62)以来で6年ぶり、12人目となる。
さて今年も終身名誉ノーベル賞候補である村上春樹氏の落選を聞く季節がやってきました。文学賞はさておき物理学賞に関してはアメリカで活動するアメリカ国籍の真鍋淑郎氏等が選出されたそうです。曰く「日本人のノーベル賞は2019年に吉野彰・旭化成名誉フェロー(73)が化学賞を受賞して以来で計28人目(米国籍取得者を含む)」とのこと。
言うまでもなく日本は現代もなお成年の二重国籍を認めていませんので、アメリカ国籍を選択した以上、今回の真鍋氏を含む一部のノーベル賞受賞者は日本国籍ではないことになります。ただ日本国籍であろうとなかろうと、「日本人」のノーベル賞受賞者としてカウントされることには特に異論は出ていません。国籍の有無は、日本人の要件とは関係がないのでしょう。
栄えある国民栄誉賞の第一号受賞者である王貞治氏もまた日本国籍ではありません。そんな王氏はかつてWBCでのインタビューで自身について問われた際、「私は生まれたときより日本で育ち、日本の教育を受け、日本のプロ野球人として人生を送ってきました。疑うことなく日本人です」と答えたことが伝えられています。
似たような境遇としては同様に中華民国籍の父親を持ち、生まれたときより日本で育ち、日本の教育を受け、日本の芸能人を経て日本の政治家として人生を送ってきた蓮舫氏が挙げられるところです。まぁ蓮舫にもまた「疑うことなく日本人」と言い切るだけの資格はありますよね。ではアメリカの研究者として人生を送ってきた人はどうなんだ、と思わないでもありませんが。
外国籍を取得すると日本国籍を失う国籍法の規定は憲法違反だとして、海外在住の原告が日本国籍を維持していることの確認などを国に求めた訴訟もありましたが、これは今年の1月に合憲として訴えを退ける判決が地裁から出ています。今回の真鍋氏も日本の法律に違反していない限り、日本国籍の剥奪からは逃れられないわけですね。
一方、大相撲では白鵬や武蔵丸、旭天鵬など日本国籍の力士が優勝したり横綱として活躍したりしてきました。しかるに「日本出身」という用語が好んで使われ、同じ日本国籍でも外国出身とそうでない力士を区別してきたのは広く知られるところで、この辺りからも日本国籍の有無は「日本人」であることの要件にはならないことが分かります。
現実問題として「日本人」であるかどうかによって社会における扱いは大きく変わってきます。しかし外国出身者は日本国籍を取得しても日本人とは認められない、他国の国籍を取得しても「日本人」として扱われる、かと思えば日本国籍を維持していることの確認を裁判に訴えれば退けられる等々、日本人の条件は時と場合によって都合良く使い分けられるのだろうな、と思うばかりです。