Windows 11のリリースが10月5日と迫ってきた。すでにプレビュー版を試しているユーザーも多いと思われるが、本番環境のPCをアップグレードするための要件を改めて確認しておきたい。対応CPUやTPMの有無も重要だが、UEFIのアップデートも忘れずに実行しておくことをおすすめする。
Windows 11のシステム要件とは
まずは、OSが要求する最小要件を確認しておこう。Windows 11のインストール(アップグレード含む)には、次の最小要件を満たしている必要がある。
Windows 11の最小システム要件 | |
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CPU | 1GHz以上で2コア以上の64bit互換プロセッサまたはSoC |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 64GB以上(インストールやアップグレード、OS更新のための十分な空き領域が必要) |
システム ファームウェア | UEFI、セキュアブート対応 |
TPM | TPM バージョン 2.0 |
GPU | DirectX 12以上(WDDM 2.0 ドライバ)に対応 |
ディスプレイ | 対角サイズ9インチ以上で8bit カラーの高解像度(720p)ディスプレイ |
なお、今後更新される可能性もないとは言えないため、以下の公式サイトで最新情報を参照してほしい。
CPUはIntel第8世代またはAMD Zen2以降
このように、Windows 11に求められる要件は、一見さほど高くないが、注意すべきはCPUに関する条件だ。
Windows 11では、OSの安定性やセキュリティを確保するために、仮想化ベースのセキュリティなどのCPUの機能を活用する。詳細は以下の記事を参照してほしいが、こうした理由から対応するCPUがある程度限られている。
具体的には、Intelであれば第8世代以降(8000番台)、AMDであればZen2以降(2000番台)のCPUが必要となっており、公式にWindows 11でサポートされるCPUは、以下のサイトから検索可能となっている。
なお、8月27日になり、当初発表よりCPUに関する要件が引き下げられたが、Core Xシリーズ、Xeon Wシリーズ、Core 7820HQ(Surface Studio 2含むDCH設計原則に基づく最新ドライバ付属デバイスのみ)が追加されたのみで、Intelの第7世代およびAMDのZen1のサポートは見送られた。
Intel 第7世代およびAMD Zen1がサポートされない理由について、Microsoftは信頼性の問題を挙げている。「最小システム要件を満たしてないデバイスでは、カーネルモードのクラッシュが52%多くなり、最小システム要件を満たしたデバイスでは99.8%のクラッシュフリーエクスペリエンスを実現」としており、Windows 11の安定性を確保するための判断と言える。
Windows 11の要件を満たしているかチェック
実際に自分のPCがWindows 11の要件を満たしているかどうかは、Microsoftが無料で公開している「PC正常性チェック」アプリを実行することで確認できる。Windows 11の公式サイトの「互換性の確認」に記載されているリンクからダウンロード可能だ。
アプリの実行後、「今すぐチェック」をクリックすると、結果が表示され「このPCはWindows 11の要件を満たしています」と表示されれば、問題なくWindows 11にアップグレードすることができる。
一方、要件を満たしていない場合は、その原因を確認できる。CPUなど項目が物理的なハードウェアに依存する場合は、アップグレードを断念せざるを得ないが、設定で回避できる項目もあるため、後述する対処方法によってアップグレードが可能になる場合もある。
アップグレードが困難なケース
- プロセッサがNG
→CPUおよびマザーボード交換が可能なら対処可能だがノートPCなどでは困難 - システムディスクがNG
→OS領域を含むストレージ換装可能なら対処可能だが時間と労力がかかる
ハードウェアの交換・追加で対処可能なケース
- システムメモリがNG
→メモリを増設できる場合は対応可能
設定やUEFIアップデートで対処可能なケース
- セキュアブートが無効
→システムが対応している場合はUEFIでオンにすることで対応可能 - TPMが無効
→システムがfTPMをサポートしている場合は有効にすることで対応可能
アップグレード要件を満たしていない場合の対処法
PCの正常性チェックの結果でアップグレードができないと表示された場合は、以下のような対処が考えられる。
ファームウェアのアップグレード
メーカーから提供されているファームウェアを最新にすることで、Windows 11への対応が可能になる場合がある。
例えば、筆者が利用しているASUSのTUF GAMING B550-PLUSというマザーボードは、8月4日に公開されたUEFIのバージョン(2407)で、以下のようにWindows 11の要件に対応できるようにデフォルト設定を変更するUEFIを提供している(ただし筆者の環境では適用しても標準でTPMなどが有効にならなかった)。
ほかのシリーズでも同様にWindows 11対応のUEFIが提供されている場合があるので確認しておくといいだろう。
また、筆者の手元にあるSurface Go 2(Core m3モデル)だが、こちらはWindows Update経由で何度かシステムアップデートが提供され、Windows 10時代ではオフになっていた仮想化関連の機能が自動的に有効化された。
Surface Go 2は、UEFI設定で仮想化関連の項目が表示されず、オン/オフはメーカー側の設定に依存していたのだが、システムアップデートで自動的にオンになり、いつの間にかWindows 11で「コア分離」が有効になっていたことになる(初期Windows 11ビルドでは無効だった)。
このため、Windows 11へのアップグレード前にWindows Updateでデバイスのドライバーなどを含めた更新を実行しておくことも推奨する。
このように、セキュアブートやTPM、仮想化関連の機能は、UEFIと密接に関係するため、とにかく最新バージョンにした状態でWindows 11にアップグレードすることを強く推奨する。場合によっては、アップデートするだけで、PC正常性チェックの項目をパスできる可能性がある。
UEFI設定の変更
残念ながら、ファームウェアのアップデートだけでは対応可能にならなかった場合は、自作PCであれば、以下の関連記事でメーカーが公表している手順に従ってUEFI設定を表示し、「セキュアブート」や「Intel PPT」(Intelプラットフォームの場合)、「AMD fTPM」(AMDプラットフォームの場合)をオンにしておく。
このほか、前述したようにコア分離などで仮想化に関連する機能も必要になるため、「Virtualization Technology」関連の機能(Intel VT、VT-d、TXTまたはSVM(AMD-V)もオンにしておくことを推奨する(無効の状態でもインストールは可能)。
新規インストールの場合はセキュアブートを一時的に無効に
なお、アップグレードの場合は関係ないが、USBメディアからWindows 11を新規インストールする場合、UEFIでセキュアブートが有効になっていると、USBからブートできないケースがある(署名を確認できないため起動しない)。
セキュアブートはWindows 11のインストール要件の1つだが、USBメディアからのブート時は有効になっていると逆に失敗する場合がある。インストール時のみ一時的にセキュアブートを無効にし、インストールが完了したらセキュアブートをオンにするという方法で対処するといいだろう。
事前にデータのバックアップをしておこう
Windows 11へのアップグレードでは、データが基本的に保持される。また、互換性も高いため、Windows 10で利用していたアプリのほとんどを引き継ぎ利用することができる。
ただし、アップグレード時にトラブルが発生しないとは限らないため、念のためデータのバックアップは実行しておくべきだ。OneDriveを利用可能な場合は同期によって主なデータを保護できるが、そうでない場合は手動でバックアップしておこう。
Windows 11の更新とサポート期限
Windows 10は、春と秋の機能更新によって年2回の大規模なアップデートが実施されてきたが、Windows 11では、この頻度が年1回に変更される。現状は「毎年後半のリリース」とされているので秋のみの更新となる予定だ。
サポート期限は、Windows 10は2025年10月14日に終了することがすでに発表されているが、Windows 11は機能更新の提供から24カ月(Home、Pro)、または36カ月(Enterprise)となる。
従来のWindows 10より製品のライフサイクルが長くなるが、これはユーザー(主に法人)からの更新頻度が多すぎるという声が反映されてのことと考えられる。
Windows 11の提供方法
10月5日の時点での提供方法は、Windows Update経由でのアップグレード、および一部のプリインストールPCの発売のみが正式に発表されている。
PCパーツなどと合わせて購入するDSP版やパッケージ版に関しては時期は未定だが、6年前のWindows 10と同様に、DSP版は、さほど待たされることなく販売が予想される。一方、パッケージ版は約1カ月後程度の提供開始になるのではないかと予想される。
価格に関しても不明だが、2021年9月18日に発表されたOffice 2021が従来版から価格の変更がなされなかったことを考えると、Windows 11もWindows 11の価格に準ずるものとなる可能性が高い。
Windows 11はいつまで無料でアップグレードできるか?
Windows 10からWindows 11へのアップグレードは無料だが、これは恒久的にというわけではない可能性がある。Windows 11公式サイトに掲載されている「よくある質問」には、以下のような項目がある。
無料のアップグレードが可能な期間はいつまでですか?
対象となるシステムに対する無料アップグレードに特定の終了日は設けていません。しかし、Microsoft は無料アップグレードに対するサポートをいずれ終了する権利を留保します。この終了日は一般提供の開始から 1 年以内に来ることはありません。
現状は無料で、少なくとも1年間は継続するが、将来的に有料になる可能性は否定していない。Windows 10の無償アップグレードも販売開始から1年間であったことを考えると、同様に正式な無償アップグレード期間は1年間になる可能性も十分に考えられる。
いずれにせよWindows 10のサポート期限(2025年10月14日)が決まっているので、早めにWindows 11に移行しておいた方が安心なのは確実だ。
アップグレード後にWindows 10に戻すことができるか?
こちらもWindows 11の「よくある質問」に掲載されている重要な項目の1つだ。
アップグレード後に Windows 11 が気に入らなかった場合、Windows 10 に戻すことはできますか?
はい。Windows 11 にアップグレードしてから 10 日間は、ファイルとデータを保持したままで Windows 10 に戻すことができます。10 日が過ぎてから Windows 10 に戻すときは、データをバックアップしてから「クリーン インストール」することが必要です。
これによると、10日以内であれば、完全な状態で元に戻せるが、10日を過ぎるとクリーンインストールとなるため、データが消える可能性がある。実際はOneDriveなどの同期があるので戻せるデータもあるが、デバイスからは削除される可能性があるため注意が必要だ。
Windows 11の互換性
Windowsが新しいバージョンにアップグレードされる際は、Microsoftのサイトで互換性に関する情報が掲載されるのが通例だった。しかしながら、本稿執筆時点ではWindows 10への移行に関する情報が残っているだけで、Windows 11の互換性情報は掲載されていない。
Windows 11はWindows 10がベースなので、ほとんどの周辺機器やアプリをそのまま利用できる可能性が高いが、ユーザーがきちんと互換性について確認できるサイトは必要だろう。
また、Windows 10の時代は「Ready for Windows」というサイトが提供され、ソフトウェアなどの対応状況を検索できたが、現在は廃止されている。法人用途ではConfiguration Managerと連携する「Desktop Analytics」の利用が推奨されるが、コンシューマが気軽に互換性を検索できるサイトは、残念ながらなくなってしまった。こうした点は改善の余地がありそうだ。
Windows 11のまとまった情報へのリンク
参考までにWindows 11関連の情報を確認できる公式サイトへのリンクを掲載しておく。情報が更新されている場合もあるので、必ず最新情報をチェックしてからアップグレードしよう。
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