自民党の選択は、味方を増やすよりも敵を作らないことだったのかもしれない。それは、国民の多くが政権交代を望んでいないという見立てを持った与党の選択として妥当なものだったといえる。
石破、小泉両氏と「小石河連合」を組み、ワクチン接種推進担当大臣としてスポットライトを浴びる立場にいてワクチン接種推進という成果を強調出来、さらにはワクチン接種推進を自画自賛する菅総理の支持も取り付けるなど、自民党総裁選の過程で主役の座を務めた河野太郎だったが、結果はこれまで禅譲で総理の座を狙うという甘えを捨てた岸田候補の前に「突破力」を発揮することなく惨敗。
自らを「国民的人気が高い」という買い被り過ぎた政治家による「小石河連合」の敗北は「国民的人気」という評価の曖昧さを示したもの。
一方、横浜市長選での小此木候補に続いて「国民的人気」を完全に失い総裁選辞退に追い込まれた菅総理が支持した河野候補が惨敗を喫したことは「国民的不人気」は額面通りだったということ。「人気」はあてにはならないが「不人気」は確度が高い。
さらに「ワクチン接種成果強調連合」の敗北は、国民のだれも「ワクチン接種拡大」を政治的成果だと考えていないことの証左だといえる。
岸田新総裁の誕生に対して「改革よりも現状維持を望んだ」というネガティブな見方もあるが、必ずしもそうとは言い切れない。今回の総裁選は、いろいろな面で残り3候補が色が濃過ぎたことで「無難な選択」「消去法的選択」をせざるを得ない状況にあったからだ。
今回の総裁選で明らかになった事は、自民党内で菅総理と石破氏は完全にオワコンとなり、小泉氏もそれに近付いているということ。その一方で、キングメーカーを目指した「AA+2F」はしぶとく生き残った形。
岸田総裁の今後は、立候補時に見せた「覚悟」を実行するかどうかにかかっている。しぶとく生き残ったキングメーカー達の操り人形に甘んじるようであれば「国民的人気を失った」前総理や、「国民的人気」があると過信してオワコンになった政治家と同じ道を歩むことになるだろう。そもそも岸田氏は「国民的人気」があるわけではないからだ。逆説的にいえば期待できるところはこの点だといえる。