ASUS JAPANは、薄型軽量14型ビジネスモバイルPCの新モデル「ExpertBook B9 B9400CEA」を発表した。従来同様の薄型軽量かつ堅牢性に優れるボディを受け継ぎつつ、2020年に登場したExpertBookシリーズの新モデルで、第11世代Coreプロセッサの採用による性能向上に加え、機能面でも進化を遂げている。
今回、発売に先駈けていち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。2021年9月下旬の発売を予定しており、価格は19万1,400円から。
従来モデル同様のシンプルな薄型軽量ボディ
2020年5月に発売された「ExpertBook B9450」は、14型ディスプレイ搭載ながら870gという圧倒的な軽さを実現する点が大きな特徴だった。
今回登場した後継モデルとなる「ExpertBook B9 B9400CEA」(以下、B9 B9400CEA)は、従来モデルの特徴を受け継ぎつつ、進化を遂げている。
本体デザインは、従来モデルをほぼそのまま踏襲。カラーもまた従来モデル同様に、深みのある紺色をベースにラメを加えたスターブラックで、ビジネスモバイルPCらしい落ち着いた印象となっている。デザイン性も重視したZenBookシリーズには質感で敵わない部分もあるが、安っぽさは皆無で、十分に上質な印象。
フラットな天板や直線的なボディデザインも従来モデル同様だ。一般的にビジネスモバイルPCのデザインはどちらかというとあまり冒険心がなく凡庸というイメージがあるかもしれないが、B9 B9400CEAはシンプルながら直線を多用することで先鋭的なデザインとなっており、ビジネスモバイルPCの中でも一線を画すボディに仕上がっている。このあたりは、デザインにこだわるASUSらしさが伝わってくる。
ボディ素材は、天板と底面にマグネシウムリチウム合金を、キーボード面にはマグネシウムアルミニウム合金をそれぞれ採用。また、天板や底面のマグネシウムリチウム合金は加工が難しいが、天板は20工程、底面は21工程に及ぶコンピュータ制御の切削加工により、軽さや強度を保ちつつ高精度に加工。
また、ASUSが定める基準で落下、衝撃、圧力、温度、湿度、防滴、耐久など18種類の耐久性テストをクリアするだけでなく、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠した9種類の堅牢性試験もクリアしており、非常に優れた堅牢性も兼ね備えている。これなら、毎日のように外へ持ち出す場合でも安心だ。
サイズは、320×203×14.9mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルと全く同じ。ただ、重量は1,005gと従来モデルの最小870gからかなり重くなっている。ただこれは、従来モデルでは容量33Whの軽量バッテリを搭載していたのに対し、B9 B9400CEAでは容量66Whの大容量バッテリを搭載しているためだ。
ちなみに従来モデルでも大容量バッテリ搭載モデルが用意され、そちらの重量は995gだったので、新モデルは従来モデルから10gの重量増ということになる。この差であれば、実際に手にしても違いはほぼ感じられないはずで、重量増はほぼ気にならないだろう。
なお、試用機は大容量バッテリを搭載していたが、実測の重量は999.5gとわずかながら1kgを切っていた。
sRGBカバー率100%の14型フルHD液晶を搭載
ディスプレイは、従来モデル同様に1,920×1,080ドット表示に対応する14型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、視野角は十分な広さを確保。また、sRGBカバー率100%の広色域パネルを採用しており、ビジネス向けモバイルノートとしては発色性能が優れている。
実際に写真や動画を表示してみても、なかなか鮮やかな発色が確認できた。映像クリエイター向けノートPCのディスプレイには及ばないものの、ビジネスモバイルPCとしては発色性能は十分満足できるだろう。合わせて、ディスプレイ表面は非光沢仕様となっているため、外光の映り込みもほとんど感じられず、快適な作業が行なえる。
ディスプレイベゼルの狭さも従来モデル同様。左右ベゼル幅はわずか4mm、上部ベセル幅は8mmしかなく、下部ベゼル幅もかなり狭められており、画面占有率は94%に達している。実際に正面から見ると、ほとんどが表示領域と感じるほどだ。もちろん、この狭額縁仕様がボディの小型化と軽量化にも貢献している。
キーボードは従来モデルからやや仕様が変更
キーボードは、アイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載。主要キーのキーピッチは約18.5mmとわずかにフルピッチに届いていない点や、ストロークが1.5mmとまずまず深く、打鍵感が良好な点は従来同様。キーボードバックライトも搭載。
ディスプレイを開くとディスプレイ部後方が本体後方をリフトアップしてキーボード面に適度な角度を用意する「エルゴリフトヒンジ」も引き続き採用。さらに、キーボードは防滴仕様となり、少々の液体であれば内部への侵入を防ぐ点も大きな魅力。
ただし、キー配列に関しては、従来モデルから一部仕様が変更されている。
まず、Enterキー付近の一部キーは従来モデルよりもさらにピッチが狭くなっている。さらに、[¥]キーはBackspaceキーとの分割、[無変換]と[変換]キーがスペースキーとの分割で搭載されるようになり、キーの隙間がほとんどなくなってしまっている。しかも[¥]キーはピッチがほかのキーの半分ほどしかなく、[¥]を押そうとしてBackspaceを押してしまうことが多発した。
なぜキーボードの仕様が変更されたのかは不明だが、できれば従来モデルと同じキーボードを採用してもらいたかった。
加えて、キーボード左右には従来モデル同様にかなり広いスペースが確保されたままとなっている。そのスペースを活用すれば、全てのキーをフルピッチで搭載することも不可能ではないだろう。
そのほかのキーボードの仕様や、エルゴリフトヒンジによる適度な角度でタイピング時の快適度が高められている点などは十分な魅力となっているだけに、配列に関しては少々残念だ。
ポインティングデバイスも、従来モデル同様のテンキー機能一体型タッチパッド「NumberPad 2.0」を採用。パッド部分のサイズは129×65mm(幅×奥行き)とかなり大きく、ジェスチャー操作にも対応しており、軽快な操作が可能。
そして、パッド右上角を長押しするとパッド内部のバックライトが点灯してテンキー表示が現れ、テンキーとして利用可能となる。しかも、テンキー表示時でもパッドとして操作できるため、常にテンキーを表示したままでの利用も大きな支障はない。
テンキーバックライトの明るさは2段階に調節可能。また、左上角を内に向かってスワイプすると、Windows標準の電卓アプリが起動するランチャー機能も搭載している。
ただ、NumberPad 2.0の搭載位置はホームポジションからやや右にずれているため、キーボード操作時に右手の手の平がパッドに触れてカーソルが誤動作する場合がある点は少々気になった。
顔認証カメラや近接センサーの搭載でセキュリティ性を向上
B9 B9400CEAでは、セキュリティ性が高められている点も見逃せない特徴の1つだ。
生体認証機能としては、従来モデル同様に右パームレストにWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載するのに加えて、ディスプレイ上部にWindows Hello対応の顔認証カメラも同時搭載されるようになった。
これにより、例えばマスクを装着している時には指紋認証、マスクを装着していない場合には顔認証と場面に応じて使い分けられるようになり、優れたセキュリティ性を確保しつつ利便性が高められている。
また、顔認証カメラの左側に近接センサーを新たに搭載し、近接センサーを活用したセキュリティ機能「アダプティブロック」が追加されている。
アダプティブロックでは、近接センサーと顔認証カメラを組み合わせ、ディスプレイ前から人がいなくなると画面輝度を暗くしたり自動的に画面をロックし、人が戻ってくると自動的にウェイクアップし、顔認証でログオン認証、という運用が可能となる。
画面輝度の低減や画面ロックまでのタイミングも細かく設定できるが、自動ロックまでは最短で1分となるため、公共の場などではあまり活用すべきではないが、自宅やオフィスなど、厳密なセキュリティ運用が不要な場所ではかなり便利に活用できるだろう。
このほか、顔認証カメラをシャッターで覆うプライバシーシールドや、TPM 2.0チップなど、基本的なセキュリティ機能もしっかり網羅。そのため、優れたセキュリティ機能が求められるビジネス用途でも問題なく活用できるだろう。
Tiger Lakeを採用し性能も強化
B9 B9400CEAでは、スペック面も進化している。
CPUには第11世代Coreプロセッサシリーズを採用しており、試用機ではCore i5-1135G7を搭載。メモリはLPDDR4x-4266を8GB搭載していた。
なお、CPUはCore i7-1165G7搭載モデルも用意され、Core i7モデルではメモリは16GB搭載となる。OSはWindows 10 Pro 64bit。
内蔵ストレージはPCIe 3.0×4準拠のSSDを採用しており、容量は512GB。なお試用機ではSSDは1基のみの搭載だったが、内部にはSSD用のM.2スロットが2基用意されており、SSDを2台装着してRAID 0またはRAID 1構成での運用も可能となっており、容量も最大4TBまで拡張可能だ。
無線機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LAN(2×2)とBluetooth 5.0を標準搭載。
オーディオ機能は、Harman Kardon共同開発のステレオスピーカーを搭載。ASUSのノートPCでは、以前より搭載スピーカーの音質が優れることで定評があるが、B9 B9400CEAのスピーカーもかなり迫力のあるサウンドが再生される。同クラスのモバイルPCの中でトップクラスの音質で、動画視聴や音楽も十分に楽しめる。
また4つのマイクを搭載し、360度全方向から音を拾うとともに、高性能なノイズキャンセリング機能を搭載。ノイズキャンセリング機能は「AIノイズキャンセリングマイク」と呼ばれ、バックグラウンドの様々な騒音をほぼ気にならないレベルにまで低減。出先でのWeb会議も安心して参加できるだろう。
機能的には、以前取り上げた「ZenBook 14 Ultralight UX435EAL」に搭載されているものと同等。その時のテスト音声は以下の通りだが、B9 B9400CEAでも同等の効果が確認できた。
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外部ポートは、左側面にThunderbolt 4×2、HDMI、Micro HDMIを流用した付属有線LANアダプタ接続端子を、右側面にはオーディオジャックとUSB 3.1準拠のType-Aの各端子を配置。
Thunderbolt 4はいずれもUSB PD対応で、付属ACアダプタや汎用のUSB PD準拠ACアダプタを接続することで給電およびバッテリの充電が可能。従来モデルと比較すると、Thunderbolt 3×2がThunderbolt 4×2に強化されている。
付属品は、専用ポートに接続して利用するGigabit Ethernet対応LANアダプタ、出力65WのACアダプタ、専用スリーブケースに加えて、86×30×30mm(幅×奥行き×高さ)の超小型65W ACアダプタ「ウルトラミニ・ユニバーサルアダプター」も付属する。
標準のACアダプタはやや大きく、電源ケーブル込みの重量は実測で320.5gと重い。それに対しウルトラミニ・ユニバーサルアダプターは、単体重量が実測で104.2gとかなり軽く、同じく付属のUSB Type-Cケーブルと合わせても実測で157.7gしかない。
もっと軽いUSB Type-Cケーブルを用意すればさらなる軽量化も可能で、携帯性を高めたい人にとって非常にありがたい存在だ。
ファンモードを変更することでCPUパワーを最大限引き出せる
では簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL Benchmarksの「PCMark 10 v2.1.2523」、「3DMark Professional Edition v2.17.7181」、Maxonの「Cinebench R23.200」の3種類。
ところで、B9 B9400CEAにはCPUクーラーのファン動作モードを切り替える機能が用意されている。CPUの最大限の性能を引き出す「パフォーマンスモード」、性能と冷却のバランスを重視した「スタンダードモード」、ファンの回転数抑えて静音性を重視する「ウィスパーモード」の3つのモードが用意され、専用ユーティリティのMyASUSを利用するか、[Fn]+[F]キーで切り替えられるようになっている。
今回は、パフォーマンスモードとスタンダードモードの2つのモードに設定してベンチマークテストを行なった。
パフォーマンスモード | スタンダードモード | |
---|---|---|
CPU | Core i5-1135G7(4コア/8スレッド、2.4~4.2GHz) | |
ビデオチップ | Iris Xe Graphics | |
メモリ | LPDDR4x-4266 SDRAM 8GB | |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe/PCIe 3.0×4) | |
OS | Windows 10 Pro | |
PCMark 10 | v2.1.2523 | |
PCMark 10 Score | 4,922 | 4,632 |
Essentials | 9,919 | 9,765 |
App Start-up Score | 13,469 | 12,764 |
Video Conferencing Score | 8,069 | 8,092 |
Web Browsing Score | 8,982 | 9,017 |
Productivity | 6,454 | 5,703 |
Spreadsheets Score | 5,775 | 5,755 |
Writing Score | 7,239 | 5,653 |
Digital Content Creation | 5,056 | 4,845 |
Photo Editing Score | 7,044 | 6,957 |
Rendering and Visualization Score | 3,642 | 3,251 |
Video Editting Score | 5,039 | 5,031 |
Cinebench R23.200 | ||
CPU | 4,246 | 3,827 |
CPU (Single Core) | 1,357 | 1,316 |
3DMark Professional Edition | v2.19.7227 | |
Night Raid | 16,862 | 10,511 |
Graphics Score | 19,902 | 13,118 |
CPU Score | 9,040 | 4,944 |
Wild Life | 11,139 | 10,711 |
Time Spy | 1,583 | 1,097 |
Graphics Score | 1,411 | 985 |
CPU Score | 5,126 | 3,097 |
結果を見ると、スタンダードモードに比べてパフォーマンスモードではかなりスコアが向上していることが分かる。特に3DMarkの結果は大幅な上昇となっており、パフォーマンスモードの威力がはっきり分かる。パフォーマンスモードでは、競合製品と比べても同等以上のスコアが得られており、性能面での不安はない。
ただし、パフォーマンスモードでは冷却ファンの動作音がかなり大きくなる。ゲーミングPCのような爆音というわけではないが、モバイルノートとしてはかなり大きな音が耳に届くため、静かな場所では少々ためらわれる。
また、パフォーマンスモードではCPUの消費電力も高まるため、ACアダプタを接続した状態でなければ利用できない。
それに対し、スタンダードモードのファン動作音は、やや大きくなることもあるが、全体的にはまずまず静かだ。
スタンダードモードでも、性能的には大きな不満はなく、B9 B9400CEAがターゲットとするビジネス用途では十分な性能を発揮する。そのため、普段は性能と動作音、消費電力のバランスを考えてスタンダードモードで利用し、処理の重い作業を行なう場合などにパフォーマンスモードに切り替えて最大限の性能を発揮させる、という運用がお勧めだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。
B9 B9400CEAでは容量65Whの大容量バッテリを内蔵しており、公称の駆動時間は約16.7時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。
それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、キーボードバックライトをオフ、無線LANを有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、16時間11分を記録した。
これなら、実利用でも10時間は問題なく利用できるはずで、1日の外出でもバッテリ容量はほぼ気にせず利用できそうだ。
加えて、バッテリ容量の60%を約39分で充電できる急速充電も可能。バッテリの充電を忘れた場合でも短時間の充電で十分まかなえる点も嬉しい。
キーボードはクセがあるが、高性能ビジネスモバイルPCとして魅力
B9 B9400CEAは、従来モデル同様の堅牢性に優れる薄型軽量ボディはそのままに、性能や機能が強化され、ビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ性も網羅することで、ビジネスモバイルPCとしての完成度がさらに高まっている。
キーボードの仕様に一部気になる部分はあるものの、その点を考慮しても申し分ない魅力がある。携帯性、性能面、セキュリティなど、全方位で妥協のないモバイルノートを探しているビジネスユーザーにお勧めしたい。
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