反政府武装勢力・タリバンがアフガニスタンの政権を掌握したことを受け、政府は2021年8月23日、国家安全保障会議(NSC)を開いて、現地に残留する日本人らを退避させるための自衛隊機派遣を決めた。派遣されるのは、航空自衛隊のC-130輸送機2機と、C-2輸送機1機の計3機。そのうち先遣隊のC-2型機1機が同夕方、残りの2機が8月24日、現地に向けて出発した。
すでに日本大使館員は英国軍機で退避しており、政府は8月20日の時点では自衛隊機派遣の可能性に言及してこなかった。唐突感のある派遣の決定だが、現時点では正面から反対する声は見当たらない。ただ、野党からは、大使館員を他の日本人よりも先行して退避させたことへの違和感や、派遣を決めた経緯の説明不足を指摘する声も出ている。
3日前は自衛隊機派遣の可能性問われ「外務省にお問い合わせを」
首都・カブールにある日本大使館は8月15日に一時閉館され、大使館員12人は17日に英国軍機でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避した。岸信夫防衛相は8月20日の記者会見で、自衛隊機ではなく英国軍機で退避した経緯について
「現地における治安情勢が急激に悪化する中で、実際に現地に出入りしている関係国の軍用機により退避をすることが最も迅速な手段であることを踏まえて、大使館員については、友好国の軍用機により退避することが最善との判断に至った」
と説明。自衛隊機派遣の可能性については
「そうした件については外務省にお問い合わせをいただければ」
としていた。
自衛隊機派遣が決まったのは、土日を挟んで3日後の8月23日だった。自衛隊法第84条の3では「在外邦人等の保護措置」について定めているが、アフガン政府の同意が必要なため、適用は見送られ、「在外邦人等の輸送」を定めた84条の4が根拠条文になっている。84条の4には「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは」という前提条件がついているが、政府は(1)カブール空港は米軍が治安維持や航空管制を行っており、航空機の離発着が正常に行われている(2)タリバンもカブール空港から輸送を妨害していない、として、条件は満たされているとの立場だ。