ASUSからZenWiFiシリーズの新モデル「ZenWiFi XD6」が登場した。Wi-Fi 6に対応したメッシュルーターで、最大4804Mbpsの5GHz帯と最大574Mbpsの2.4GHz帯を利用できるデュアルバンドに対応したシリーズ中のミドルレンジモデル。実地でのテストから、本製品のポイントを探ってみた。
全てがちょうどいい
ASUSの「ZenWiFi XD6」を一言で表現するなら「ちょうどいい」製品だ。
コンパクトで設置場所に困らないだけでなく、4804+574Mbpsのパフォーマンスも優秀な上、価格も2台セットで実売4万5000円前後と、比較的入手しやすい。
もっと言えば、メッシュ対応だし、Zenシリーズの落ち着いたデザインだし、「AiProtection」によるセキュリティ機能や「Adaptive QoS」、さらにVPNサーバーも搭載されていて、スマホアプリで簡単に設定できるし………、と、まあ「てんこ盛り」感が満載の製品だ。
弊誌読者であれば、MAP-EやDS-LiteなどIPv4 over IPv6への対応を求めてしまうが、環境によっては不要な機能。結論から言ってしまえば、ASUSらしい多機能さと、有線LAN並みとも言える高い無線性能で、バランスのいい製品に仕上がっている。
同シリーズの製品では、トライバンド対応でとにかく速い上位モデル「ZenWiFi XT8」(4804+1201+574Mbps)や、コンパクトでスタイリッシュなエントリーモデル「ZenWiFi mini XD4」(1201+574Mbps)も魅力的だが、実際に買うとなると、サイズもそこそこで、性能面でも文句なく、手にしやすい価格の本製品が第1候補となる。
同じ「ちょうどいい」でも、妥協したものではなく、積極的に選びたくなる「ちょうどいい」製品と言えそうだ。
ZenWiFi XD6 | |
実売価格 | 4万5000円前後(2台セット) |
CPU | トリプルコア、1.5GHz |
メモリ | 512MB |
Wi-Fiチップ(5GHz) | – |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 2 |
160MHz幅対応 | ○ |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz) | 4804Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1~13 |
チャネル(5GHz) | W52/W53/W56 |
ストリーム数 | 4 |
アンテナ | 内蔵(6) |
WPA3 | × |
WAN | 1Gbps×1 |
LAN | 1Gbps×3 |
動作モード | RT/AP/RP/MB/AiMesh |
ファームウェア自動更新 | ○(標準オフ) |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 126.4mm×129.7mm×59mm |
静けさを感じるZenデザイン
それでは実機を見ていこう。
本製品のサイズは、ZenWiFiシリーズの中では中間に位置する大きさで、設置場所に困らないコンパクトさが特徴だ。
角を丸めたスクエアなデザインは全体的に柔らかな印象で、一種の静けささえ感じさせるものとなっている。「ルーターのデザインのトップ3を選べ」と言われたら、筆者としては必ずランクインさせたいと思える外観だ。
インターフェースは背面下部に配置されており、有線LANはWAN×1、LAN×3の構成で、全て1Gbps対応となっている。上位モデルである「ZenWiFi AX XT8」のような2.5Gbps対応ポートは用意されないが、エントリーモデルである「ZenWiFi XD4」の1つから3つへとLANポートが増えているのはメリットだ。
セットアップには、スマートフォン用の「ASUS Router」アプリを利用するのが簡単だ。ウィザード形式で、インターネット接続や管理者パスワード、Wi-Fi接続のSSIDや暗号化キーなどを簡単に設定できる。
今回、使用したのは2台セットのモデルだが、1台目をルーターとしてセットアップし、後から2台目をノードとして追加してメッシュを構成するのも、アプリを使えば、ほぼ自動的にできる。
海外メーカー製のルーター、特にASUSのルーターは多機能なため、「セットアップも難しめではないか?」とのイメージを持っている人もいるかもしれない。だが、アプリを使ったセットアップや管理は、基本的に画面の指示に従うだけでいいので、実際には敷居の高さを感じることはないだろう。
パフォーマンスは優秀
パフォーマンスも優秀だ。以下は、木造3階建ての筆者宅にてiPerf3による速度を測定した結果だ。1台目(ルーター)は1階、2台目は3階の階段踊り場に設置して値を計測している。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | |||
単体 | PC | 上り | 902 | 420 | 308 | 32 |
下り | 913 | 516 | 454 | 55 | ||
iPhone | 上り | 526 | 209 | 109 | 42 | |
下り | 762 | 153 | 92 | 44 | ||
メッシュ構成(2台) | PC | 上り | 912 | 484 | 318 | 322 |
下り | 931 | 495 | 415 | 378 | ||
iPhone | 上り | 473 | 279 | 288 | 271 | |
下り | 789 | 353 | 341 | 347 |
結果を見ると、やはり近距離の性能が光る。本製品の最大速度は4804Mbps対応となっているが、現状、存在するWi-Fi子機は、2402Mbps(2ストリーム、160MHz幅)のPCが最大となっている。この速度で接続すると、有線の1Gbpsが逆にボトルネックになるほど無線が高速になり、iPerf3でも1Gbpsの有線LANと並ぶ900Mbpsオーバーが実現できている。
遠距離の性能に関しては、単体では環境に左右される部分が大きい。例えば、筆者宅の3階では2.4GHz帯で子機が接続されたが、筆者宅周辺は2.4GHz帯が多く利用されているので、この帯域だと速度が出にくい。このため、単体では3階で50Mbps以下になるケースが目立った。
一方、メッシュ構成の場合、こうした遠い場所での通信を中継によって確実にカバーできるため、2階以上のフロアでは、どこで計測しても300Mbpsオーバーという、非常に高速かつ安定した速度を実現できた。
本製品はデュアルバンド対応なので、中継(バックホール)とクライアント接続で5GHz帯を共有する場合があるが(上記ベンチ結果もそう)、無線帯域を効率化できるWi-Fi 6による好影響と、最大4804Mbpsの帯域を使えることの恩恵で、トライバンド対応メッシュ対応機にも劣らない性能が発揮できている。
接続クライアントが多い環境であれば、依然としてトライバンドに対応する上位モデルのZenWiFi AX XT8などが有利だが、同時接続端末の数がさほど多くない一般的な家庭であれば、本製品でも十分なパフォーマンスが期待できるはずだ。
ASUSならではの多機能さ
本製品は、ZenWiFiシリーズだが、従来のASUSルーターならではの多機能さも健在だ。
まず、この分野では先駆者と言えるトレンドマイクロのセキュリティ技術を活用した「AiProtection」を搭載する。
これは、ネットワーク内の通信をチェックし、フィッシングサイトなどの悪質なサイトにアクセスしてしまいそうになることを防いだり、侵入システム(IPS)によってネットワークの脆弱性を狙った攻撃を自動的に遮断したり、逆にマルウェアに感染した端末やボットに乗っ取られた端末が、外部へ不正に通信するのを検知してブロックすることもできる。
また、ペアレンタルコントロール機能も充実しており、子どもが利用するスマートフォンやPCなどの端末ごとにアクセス可能なサイトやアプリを制限できる。「成人向け」「コミュニケーション」「ストリーミング」など、カテゴリーごとに分かりやすい設定ができるので、遠隔授業などで自宅からPCを使う機会が増えた子どもを守るのにも最適だ。
このほか、「Adaptive QoS」も、テレワーク時代に地味にありがたい機能だ。テレワーク用のPCを指定して通信の優先度を高く設定したり、「在宅学習」や「テレワーク」といったカテゴリーで、アプリごとの優先度を自動的に設定できる。
テレワークが普及した今、家族がゲームや映画などを利用しているときに、ビデオ会議を同時に実施するようなケースも増えている。こうしたケースで、ビデオ会議の帯域をしっかりと優先処理できるのは、大きなメリットだ。
ZenWiFiシリーズのいいところは、シンプルな見た目に反し、こうしたASUSならではの機能を省くことなく搭載している点だ。いい意味で見た目を裏切る製品と言えるだろう。
ZenWiFiのお買い得モデル
以上、ASUSから新たに登場したZenWiFi XD6を実際に使ってみたが、非常にバランスのいい製品だ。
パフォーマンスも高く、機能面も充実し、しかもデザインも優れているのに、お買い得な価格を実現している。パフォーマンスに特化したXT8も個人的にはお勧めなのだが、高価なので買うのを躊躇していた人には、XD6は待望のモデルと言える。
テレワーク向けのQoS設定が簡単にできるなど、実用面でも優れた実力を持ったお買い得な製品と言えるだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)