ごく一部の魚だけが体温を保つ能力を獲得した理由とは?

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ほとんどの魚は外界の温度によって自身の体温が変化する変温動物ですが、全魚類のわずか0.1%に相当する35種で体温を保つ能力が確認されています。ごくわずかな魚だけが体温を保つ能力を獲得した理由について、ダブリン大学トリニティ・カレッジの魚類学者であるルーシー・ハーディング氏が解説しています。

Endothermy makes fishes faster but does not expand their thermal niche – Harding – – Functional Ecology – Wiley Online Library
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1365-2435.13869

We solved the mystery of why some fish are warm-blooded
https://theconversation.com/we-solved-the-mystery-of-why-some-fish-are-warm-blooded-163774

ハーディング氏によると、これまでに恒温性が確認された魚はホオジロザメやタイセイヨウクロマグロなどのサメ・マグロを主とする35種。世界で初めて恒温性を持つ魚を報告したのは1973年のタイセイヨウクロマグロに関する研究でしたが、この報告から約50年間にわたって「ごく一部の魚だけが恒温性を獲得した理由」について明確な回答は存在せず、「体温が高いほうが筋肉の力が大きくなるため、速く泳げるようになる」「体温を一定に保つことで幅広い水温に適応できる」という2説が存在するのみでした。

この2説を検証するため、ハーディング氏が率いるオーストラリア・アメリカ・タスマニア・日本の多国籍チームはサメや硬骨魚綱の遊泳速度について調査を実施。釣り上げたサメやクロマグロに遠隔からデータを収集できる防水性の行動記録デバイスを取り付け、再び海にリリースするという実験を行いました。実験時の画像が以下。


行動記録デバイスによって収集された生息地や水温、遊泳速度、水深などのデータを分析したところ、体重を考慮に入れた場合、恒温性の魚のほうが変温性の魚よりも1.6倍の速度で泳ぐと判明。このことからハーディング氏らは「遊泳速度が速いほど狩りや移動などに適しているため、この観察結果は恒温性を持つ魚の進化上有利な点を示す直接的な証拠になり得る」と主張しています。

一方、今回の調査では、変温性の魚が生息する水温と恒温性の魚が生息する水温にはほぼ差がみられず、「恒温性を持った魚のほうが幅広い水温に適応できる」という説については証拠が見つかりませんでした。この説は1991年の研究によって支持されていたため、今回の研究結果から「恒温性の魚が有すると考えられていた海水温の変化への対応能力は誇張されていた可能性があります」とハーディング氏は言及しています。

恒温性の魚の一種であるタイセイヨウクロマグロは絶滅危惧種であり、ホオジロザメは危急種に分類されています。そのため、ハーディング氏は「今回の調査結果が、これらのユニークながらも絶滅の危機に瀕している魚に関する保全・保護に役立つことを願っています」とコメントしています。

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2021年08月14日 12時00分00秒 in サイエンス,   生き物, Posted by log1k_iy

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