畝というものがある。畑で作物を植えるために土を盛り上げたもののことだ。畑を耕して、畝を作り、そこに種や苗を植える。小さな畑の場合はクワなどで自力で作るが、大きな畑ではトラクターで畝を作る。
北海道の畑などは、当然大規模なので、トラクターを使うのだけれど、一部の畑では、その畝が真っ直ぐな、全く曲がりのない真っ直ぐな畝が作られている。気持ちがいいレベルで真っ直ぐだ。その畝を作っているトラクターを見に行こうと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)
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畝は真っ直ぐ
直線に美しさを感じることがある。曲線も美しいけれど、たとえば車で山道を走り、降りてきた時に視界が開け、真っ直ぐな道が見える。すると気持ちがいい、と感じる。どこまでも見渡せると感動すらする。
畑を作る際は規模が大きければ、トラクターを使うことになる。私もたまに畑作業をするのだけれど、私のやる畑の規模ではトラクターなんて使わないし、耕運機さえ使わない。けれど、規模が大きければ、大きいほどトラクターがないことは考えられない。
トラクターを使えば簡単に真っ直ぐな畝を作れるんでしょ、と思うかもしれないがそうではない。人が操れば、必ず曲がってくるのだ。収量を上げるには、その畑の面積に最大限の畝を作り、畝と畝の間隔が均一であることが望ましい。しかし、人が作ればどんなにがんばっても曲がってしまう。
数年前に北海道に行った際に、畑を見ていたら、うっとりするほどに真っ直ぐな畑をいくつも見かけた。美しいなと心から思ったのだ。それは収量がどうの、という話ではなく、純粋に真っ直ぐで綺麗だなと思ったのだ。
トラクターにGPS
なぜこんなにも真っ直ぐなのか、と北海道の農家さんにお話を聞いた。するとGPSということがわかった。トラクターがGPS制御なので、真っ直ぐな畝を作ることができるのだそうだ。未来が来ている。
上記のトラクターのどこにGPSの装置があるのかわかるだろうか。ちなみに値段は約500万円。トラクターとは別にGPSの値段がそのくらいする。半分ほど補助が出るので、農家さんの負担としては250万円程度になる。
カーナビのようにGPSの後付けもできるようだ。設定などは必要だけれど、いざ耕す時は、トラクターが勝手に動き、綺麗な、とても綺麗な畝を作ってくれる。もちろんその時も人は乗るのだけれど、操作は必要ない。
農家さんにお話を聞けば、もうGPSのなかった頃には戻れない、と言っていた。収量も上がったそうだ。肥料もトラクターでやるのだけれど、どこにどれくらい肥料がいるのか、などもGPS等を使い制御するそうだ。未来だ。
昔のトラクター
その昔はトラクターを使わず、人力や馬を使い畑を耕していた。気が遠くなる作業だと思う。偉大なことだ。何度か畑を作ったけれど、本当に大変で、しかも私の畑は狭いけれど、北海道は広大。偉大だ。
北海道では昭和25年に3台のホイールトラクターが導入された。今のトラクターと比べると、心細く感じる。全体的に細い感じがする。スリムと言ってもいいかもしれない。しかし、これで畑作業をしていたのだ。
上記は昭和10年から22年にかけて製造された国産では初期のトラクターとなる。耕起作業で馬耕では1日に耕せる面積が0.5ヘクタールだったのが、このトラクターにより、1日に3ヘクタールほどを耕すことができるようになった。
今のトラクターと比べると小さい。私が思うに、北海道のトラクターは特に大きい。タイヤが私の身長より大きいこともある。昔は随分と小さいものを使っていたことがわかる。さらに今はGPSだ。
北海道は大きい
北海道は大きいものが多いように思える。たとえば、シカ。本州に生息するシカと比べると大きい。オオカミもニホンオオカミとエゾオオカミでは、エゾオオカミの方が大きかった。畑も大きい。
道の駅はなやか小清水に行くと「なんだこりゃスティック」が売られていた。私もそう思う、なんだこりゃ、って。知床、網走、小清水の名物が1本の串に全て刺さっている。上から知床「タコの柔らか煮」、網走「揚げ蒲鉾エビ入り」、小清水「ジャガイモの揚げたやつ」だ。
「なんだこりゃ」って食べる度に私は思っている。好きで行く度に食べるのだけれど、毎回「なんだこりゃ」とは思うのだ。1本にまとめちゃおうおぜ、という心意気が好きだ。しかも、どれも美味しいのだ。
この辺りの畑では、ジャガイモ、ビーツ、小麦というのをよく見かける。トラクターを見せていただいた農家さんもその3つを育てているそうだ。GPSになって作業効率が上がり、身体的にも随分楽になった、と言っていた。
私は大きいとワクワクするタイプで、常々大きい葛を選ぶお爺さんのことを自分に正直で本当はいいお爺さんなのではないか、と思っている。そんな私だからこそ、北海道が好きなのだ。だって、全てが大きいから。そして、美しいから。北海道ではぜひ畑を見てほしい。
農業はもはや宇宙
近年は農業にも人工衛星を使うのが一般的になってきている。たとえば、青森の青天の霹靂というお米では、人工衛星からのデータを活用して生産管理を行っている。トラクターのGPSもそうだし、農業はもはや宇宙なのだ。今後もっと進化して行くだろうから楽しみだ。