中学生の息子にLINEブームが起きている。前回に続いて、子どものLINE利用で感じた大人との違いや安全のための対策などについて解説したい。
友だちから利用を学ぶ子どもたち
息子がタブレットでLINEデビューしてから、約1カ月経った。スマホやSNSを使う意味がない、面倒くさいと毛嫌いして頑なに利用したがらなかった息子だが、利用が習慣化するまでには2日も経っていない。
彼が感じたメリットは、友だちみんなの連絡先がわかる点や、学校にいない時にもコミュニケーションが取れる点、誘いやすい、かったり誘われやすいといった点のようだ。誘ったり誘われたりして、既に3、4回ほども友だちと遊びに出かけている。プリントをなくしたから教えてくれと言われて、写真に撮ってデータを送ったこともある。
面白かったのは、知らぬ間にLINE MUSICを利用していたことだ。LINEプロフィール BGMとして設定している子がおり、そこから知ったらしい。メッセージへのリアクションなども把握しており、友だちのやり取りの中から自然と学び取っていた。
親は連絡用、子どもはコミュニケーション用
スタンプの連打、通称「スタ爆」をしたことはあるだろうか。用もなくメッセージを送り、長々とやり取りをすることはあるだろうか。大人であれば、している方はそれほど多くないのではないか。
息子が見たがったので、スマホを渡して筆者のLINEアカウント自由に見せてみた。興味深そうに「○○ちゃんママ」などの自分が知っている人のアカウントを探したり、開いてメッセージのやり取りを眺めたりと、色々と確認していた。しばらく見た感想は、次のようなものだった。
「友だちが多いね。僕はまだ20人いないのに。あと、あんまりやり取りしないんだね。やり取りが短い。グループの数は僕とあまり変わらないけど、こっちには投稿がないグループもあるんだよね」
息子の世界は中学校のクラスと部活、小学校の一部だけだ。LINE IDも作っておらず、知らない友だちが増えることもないので、人数はかなり限られる。それに対して、筆者には学生時代や教員時代の友人、ママ友、PTA、仕事の付き合いなどでさまざまな友だちがいるのが驚きらしい。
親はLINEを主に連絡用に使うが、子どもはコミュニケーション用に使う。大人は連絡のためなど、目的があってLINEでやり取りするのがほとんどだ。それ故、PTAでの決め事などがある場合は時間が取られるが、それ以外は長いやり取りはほとんど行わない。
一方で、子どもたちの間ではLINEで連絡だけでなく、コミュニケーションが目的化することがある。ネタ投稿をする子がおり、それに対してリアクションが続くやり取りが楽しいようだ。
大人世代は、グループを増やしすぎて失敗した経験があるなど、増やすことに慎重だ。一方子どもたちは、楽しさのあまり、大小さまざまなグループを作ってやり取りして遊んでいるようだ。使わないグループがあっても、まだ困る経験をしていないのだ。
LINEでも知らない人と交流できる
中1のスマホ利用やLINEには、それなりに制限が多いことは前回説明した。保護者世代はスマホやLINEを怖がっており、警戒感が強いのだ。心配は、LINEでのいじめや長時間利用、知らない人とのやり取りなど、多岐にわたるようだ。
LINEでのいじめは、グループの外から分かりづらいため、発覚しづらいという問題がある。これは、子どもとLINEでのやり取りについて意識的に会話したり、心配事について聞くようにしたりすることで、早期に気づけると考えている。
長時間利用は、利用時間制限機能である程度防ぐことができる。iOS端末のスクリーンタイム機能、Android端末のウェルビーイング機能、あんしんフィルターなどで可能だ。スマホゲームやLINEでスタ爆など長時間利用しすぎたある子は、最近、スマホの利用時間を制限されてしまったそうだ。
連絡用ツールのため、LINEだけは子どもに使わせている家庭が多い。しかし、実はLINEにも興味や関心で友だち以外と交流できるコミュニティ機能「オープンチャット」や、やはりフォローを通じて友だち以外と交流できるTikTok風ショート動画機能「LINE VOOM」などがある。
オープンチャットは、「square-api.line.me」というURLへのアクセスを制限すれば利用できなくなる。特定のURLへのアクセス制限は、iOS端末は「設定」→「スクリーンタイム」、Android端末は「保護者向けGoogleファミリーリンク」アプリの「Google Chromeのフィルタ」から制限しよう。
LINE VOOM自体は非表示や制限はできないので、LINEの「設定」→「LINE VOOM」→「LINE VOOM通知」をオフにして見る機会を減らそう。「新しい友だちに自動公開」はオフにすれば、新たに追加した友だちを投稿の公開リストに自動追加しない設定にできる。
さらに、「LINE VOOM」→「フォロー設定」→「フォローを許可」→「フォロー情報を公開」をオフで、友だち以外のユーザーがフォローしたり、他のユーザーがフォロワーとフォロー中のユーザーを見たりできなくなる。
ただし、設定は子どもも変更できるため、保護者が変えても安心というわけではない。低年齢の子どもの場合は、知らない人とやり取りしない、会わないことなどを約束し、心配なことがあったら相談するように伝えておくといいだろう。
多くの子どもは、友だちとやり取りできる点をLINEの一番の魅力ととらえている。ただし、周囲の友だちが知らない人とも交流している場合は利用しやくなるし、そもそも好奇心からさまざまな機能を試してみる子どももいる。設定を随時見直したり、子どもの利用について会話を通じて把握したり、ルールや約束事を決めるなどの対策が求められるだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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