現在、アメリカでTikTokを利用するユーザーは約1億7000万人。
最高裁が介入しなければ、早くて2025年1月19日にもTikTokはアメリカで禁止されるかもしれません。
ユーザーたちはすでに1日中スクロールして過ごすための新たな場所を探しているようですが、その代替として選ばれているのはYouTubeショート動画やInstagramのリールではなく、中国企業「Xingyin Information Technology」が所有するソーシャルメディアアプリ「RedNote(小紅書)」。ここ数日でダウンロード数が急激に伸び、Apple App Storeのトップに躍り出ました。
インフルエンサーたちはRedNoteに移行中
中国在住のRedNote既存ユーザーは、TikTokから移ってきたアメリカのユーザーを歓迎しているようで、“#TikTokRefugees”などのハッシュタグがついたアプリの使い方を説明する動画が増えています。一方の米国新規ユーザーもRedNoteに敬意を示し、習近平国家主席への賛辞を投稿するなど友好的なムードのようです。
ユナイテッドヘルスケアのCEO殺害事件の容疑者であるルイジ・マンジョーネ氏を讃える投稿が多いのも、この2つのアプリに共通する点ですね。
ファッションに特化したソーシャルショッピングアプリとして始まったRedNote。そのインターフェースは、TikTokのような無限スクロール動画というよりPinterestに似ており、中国版Instagramとも呼ばれています。しかし、RedNoteはTikTokと同様に縦型動画をネイティブに扱うプラットフォームかつ、TikTokショップに似たショッピング機能が組み込まれており、店舗を開設したいクリエイターにとって大きなメリットとなっています。
TikTokを禁止にした理由とは裏腹に…
そもそも、TikTokがアメリカで禁止となったのは、中国当局に情報が送られるのではという国家安全保障上の懸念が理由です。アメリカ政府は、米国版TikTokがロサンゼルスに本社を構えているにもかかわらず、中国当局との関係が不明瞭であることを理由にTikTokを禁止しようとしています。
一方のRedNoteは、モロ中国所有のサービス。そう、RedNoteは中国政府と直接的なつながりを持つ中国企業「Xingyin Information Technology」が所有しているのです。
アメリカのユーザーが殺到する前、2024年のRedNoteの評価額は170億ドルでした。ちなみに、これは年間総収益が10億ドルを突破する前のこと。TikTokからのユーザー増加が今後どのくらい続くかは分かりませんが、さらに市場にアピールする理由になるかもしれません。
RedNoteが勢いを増し続ければ、アメリカの政治家から怒りを向けられることは間違いありません。今後、アメリカにおいて中国に拠点を置く企業には、TikTokを事実上禁止するのと同じ法律が適用される可能性が高いでしょう。TikTok親会社のバイトダンス社が所有する姉妹アプリ「Lemon8」も同様に禁止されるはずです。
っていうか、アメリカ政府が中国企業系アプリを潰したいのなら、国民ひとりひとりの使用を禁止するのではなく、アメリカ国内のベンチャーキャピタリストがアプリに資金を注ぎ込むのを阻止するほうが得策かと。金儲けの魔力に取り憑かれちゃった出資者たちが“国家安全保障”やその他の懸念を気にするわけもなく…。RedNoteやTikTokの急成長を後押ししたのは、少なからず米ドルですからね。