Zero Zero Roboticsの「HOVERAir X1 Smart」は、わずか99gの重量とポケットサイズが魅力の登録不要なドローンだ。パーソナルAI飛行カメラを搭載しており、リモコン不要で手のひらの上で離着陸が可能だ。あらかじめプログラムされている5種類以上の飛行モードを使い、さまざまなアングルから美しい写真や動画を撮影することができる。ホバリング性能が高く、安定した自撮りができる、いわば「空飛ぶ専属AIカメラマン」だ。今回、白・黒のカラーバリエーションの中から、黒の製品をお借りしたので、さっそくレビューしよう。
■HOVERAir X1 Smartとは?
Zero Zero Roboticsはドローンを中心に製品を提供してきた中国系の会社だ。世界中でドローンを販売しているが、小型軽量化をはかり本機で日本に進出してきたようだ。
本機は99gという軽量なので、新航空法の適用外となり、基本的には飛行申請の必要がない。だからといってどこでも自由に飛ばして良いとはならないが、比較的気軽に飛ばせる超小型ドローンである。(詳しくは後述する)
本機の特徴は何といってもホバリングの性能が飛躍的に向上したことだろう。
ホバリングとは、重力や風に逆らって飛行中に一点でじっととどまることで、その間に撮影をすることもできる。このおかげで筆者のようなドローン初心者にも操縦しやすくなっている。さらに本機では多彩な自動操縦プログラムがあらかじめ設定されているので、特に大げさな練習をしなくても、簡単にすぐに飛ばすことができる。
本機は手のひらにのるサイズで、114 x 142 x 27 mm。手のひらから離陸させて、手のひらに着陸させるのが基本だ。
飛行中には機体はかなり揺れカメラ映像が乱れるところだが、「ジンバル」の技術で揺れを打ち消すようにカメラが自動制御され、撮影画像もかなり安定している。
■さっそく飛ばしてみよう
本体上面に操作部があり、電源を入れて飛行モードを設定し、もう一度ボタンを押すと離陸する。
飛行モードは「ホバリングモード」、「フォローモード」、「ズームアウトモード」、「俯瞰撮影モード」、「オービットモード」などがある。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」ホバリング飛行(1)
YouTube:https://youtu.be/VvTmr2dHPCg
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」ホバリング飛行(2)
YouTube:https://youtu.be/Xt7wsfP8uPg
□ hovering1.mp4 ホバリングモード (ホバリング飛行(2)を撮影している筆者)
□ hovering2.mp4 ホバリングモード。その場でとどまり、カメラは筆者を追いかけて撮影
□ follow.mp4 フォローモード 筆者の後をついてくる動画撮影
□ zoomout.mp4 ズームアウトモード 筆者の前方に飛び戻ってくる動画撮影
□ fukan.mp4 俯瞰撮影モード 筆者真上に飛び戻ってくる動画撮影
□ orbit.mp4 オービットモード 筆者の周りをぐるっと回る動画撮影
□ manual.mp4 マニュアルモード アプリから飛行をリモコン操作して動画撮影
たとえば、「ホバリングモード」で操作者の顔を認識させ離陸させると、操作者が動き回っても、その場にホバリングしたまま、カメラは操作者を追いかけて撮影してくれる。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」ホバリングモード(1)
YouTube:https://youtu.be/mqRk9FlIxcI
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」ホバリングモード(2)
YouTube:https://youtu.be/-aSQLxigu3s
「フォローモード」では顔を認識させたひとのあとをついてくる。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」フォローモード
YouTube:https://youtu.be/NAu-EKabUq0
「ズームアウトモード」では撮影しながら前方に飛行し戻ってくる。撮影者から離れるに従って周りの景色が画面に入って、操作者がじょじょにズームアウトし、戻ってくるときはズームインされるような映像を撮影することができる。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」ズームアウトモード
YouTube:https://youtu.be/3xLGRabyXIg
「俯瞰撮影モード」では操作者を撮影しながら真上に上昇し、戻ってくる。撮影者を真上から見た印象的な映像になる。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」俯瞰撮影モード
YouTube:https://youtu.be/cRzlbrm9rOI
「オービットモード」では操作者の上空でぐるぐる回りながら撮影を行い、戻ってくる。
このほか、スマホと接続し、スマホから手動で操作しながらの飛行も可能である。自動操作の場合でもスマホから飛行モードを選んだり、飛行距離などのオプションを設定して飛行させることができる。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」オービットモード
YouTube:https://youtu.be/eEKPn_6xjys
撮影が終わり戻ってきたら、本機の下に手のひらを広げておくと、そこに静かに着陸する。なかなかよくできていて、飛行操作はとても簡単である。
こうしたさまざまな飛行モードは、アプリ内にわかりやすい説明動画(チュートリアル)が用意されていて、初心者にとてもやさしい。
筆者のような初心者でも簡単に飛ばせるが、さらに慣れてくるとより遠くに飛ばしたり、マニュアルモードなどをもっと高度に活用しての撮影も可能になる。これはとても楽しそうだ。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」マニュアルモード
https://youtu.be/yREaoR11vd4
YouTube:https://youtu.be/yREaoR11vd4
本体にはカメラで撮影したデータを保存するために32GBのストレージが内蔵されている。メモリカードではないので、データはスマホアプリを使って取り出す必要がある。
今回の撮影では熱海 伊豆山温泉のホテル「ハートピア熱海」様に許可を得て本機を飛ばし撮影を行った。あいにくこの日屋外は台風が来ていて、とても撮影ができる状態ではなかったが、ホテルがすぐに許可を出してくださりとても助かった。このホテルは高台に位置しており、動画でわかるように海の見える景色が大変素晴らしい。
・熱海伊豆山温泉リゾートホテル「ハートピア熱海」のホームページ
URL:https://www.h-atami.com/
ドローンを飛ばし撮影する許可をくださった上記ホテルに感謝している。
■本機をさらに詳しく
本体の各部を少し詳しく写真で見てみよう。
写真からわかるように、本体は樹脂製のフレームで覆われており、回転するプロペラを含め保護されていて、柔らかい素材のため、壁などに衝突したり落下してもよほどのことがない限り壊れにくく、相手を傷つけないようになっている。また、ひとにぶつかっても、よほどのことがない限りケガをさせることはないと思える。
とはいうものの、それでも高いところでコントロールを失って落下し、運悪くひとにあたった場合は、ケガをさせる可能性はあるかもしれない。この点は頭に入れて、危険のないように飛ばしたい。
バッテリーは本体正面中央に装着されている。装着したまま後部のUSB Type-C ポートから充電ができる。また、オプションで充電器(充電ハブ)とACアダプタのセットが用意されている。
バッテリーは690mAhのリチウムイオン電池で、最大飛行時間の公称値は約10分であるが、飛行後充電している間の時間がもったいないので、電池は複数用意して多く方が良いだろう。そうすると、オプションの充電器もあった方が良いと思う。
充電器は同時にバッテリーを2個充電できる。バッテリーは本体充電、充電器による充電ともに、1個あたり12W~14Wの急速充電ができる。
今回は別売の専用収納ケースを合わせてお借りすることができた。本機と充電器、ACアダプタ、USBケーブルをコンパクトに収納して持ち運べてとても便利である。
本体の梱包箱は2重になっており、内側の白い箱にはちょっとしたギミックが施されていた。箱の中身を引き出すとプロペラがくるくる回り、楽しい。
99gの専属AIカメラマン・ドローン「HOVERAir X1 Smart」 梱包箱を開けるとプロペラが回る
YouTube:https://youtu.be/XwDqp64gYYI
気になる騒音レベルや風の影響であるが、それなりの音はするし風も起こす。しかし、小型なので周りに大きな迷惑をかけると言うほどではないだろう。
■楽しく飛ばすために知っておくべき法規制と注意点
2015年(平成27年)航空法が改正され、ドローンや無人航空機の飛行ルール(機体の登録や飛行申請のルール)が制定された。この中で100g未満の本機のようなドローンは登録や飛行申請の対象外になっている。
他に、警察庁所轄の「小型無人機等飛行禁止法」で規定される重要施設(皇居、霞ヶ関の諸官庁、国会、政党本部、原子力発電所、米軍基地など)付近や、各自治体が定める公営の公園などでの飛行禁止ルールがある。
民法の規定等により、私有地や施設の使用者の許可を得ずにドローンを飛ばすのも咎められる場合がある。迷惑行為と見なされないように許可を得て飛ばすことが必要だろう。
これらはドローンの重量による規定はなく、100g未満の本機でも適用される。
もちろん、そのほかにも周りに危険や迷惑を感じさせないような気配りが必要である。
たとえば都内は都立の公園など、貴重な広い場所なのにドローンを禁止している施設が多く、気軽に飛ばせる場所が少ないのが現状だ。筆者は都内のマンションに住んでおり、調べれば調べるほど近所でドローンを気軽に飛ばせる場所がないことに驚いた。
100g未満の本機のような小さなドローンはもう少し気軽に飛ばせても良いんではないかと個人的には思うが、ルールはルール、まずはしっかりとルールやエチケットを守って楽しみたいものである。
今回実際に施設に許可を得てドローンを飛ばしたのだが、小さな実機を見せて「施設に迷惑をかけないこと」「なるべく周りに別の客がいない安全な時間帯に飛ばすこと」を説明したところ、快諾をいただくことができた。参考になれば幸いである。
■最高に楽しい超軽量級ドローン
今回本機をお借りして試したところ、評判通りの最高に楽しい製品だった。過去、同様のドローンを購入して何度もがっかりさせられた経験があるが、このドローンはまさに期待通り、いや、期待以上のものだった。
本機の長所は数多く挙げることができる。
・ドローン初心者の私でもすぐに飛ばせること。
・そして安定したホバリングや自動操縦のおかげですぐに動画撮影を楽しめること。
・落下しても壊れにくい、丈夫かつ柔らかいフレームで機体全体が覆われていること。
・電池や充電器、収納ケースなど、周辺機器がしっかりそろっていること。
・スマホ連携機能やチュートリアルなど、本体以外もとても使いやすく整備されていること。
一方、短所といえるほどのものはあまりない。もちろん、もっと長い飛行時間や電池の持ち、画質の向上を望めばきりがないが、現状レベルでも十分に「空飛ぶ専属AIカメラマン」として役に立つ。実力は動画をご覧頂いてわかると思う。
価格面では59,980円(基本セット、税込、メーカー直販価格)と「気軽に買える」といえるか微妙だが、十分それに見合った価値があると思う。
ただ、ひとつ考慮しておかねばならいことがある。筆者のように、購入してもなかなか飛ばせる場所がない場合がある。ただ、今回のように、屋外でだめでも場所を選べば屋内で許可を得て飛ばすなど、いろいろ工夫できることもある。
それにしてももっともっと屋外で飛ばしてみたかった。思い切って買ってしまうか、それとも今後旅行に行くときなどに借りるようにするか考えたいと思った。そんな魅力的なドローンだ。
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