筆者がPCのレビュー記事を執筆する際、データのやり取りにUSBメモリを使っている。LAN経由でもコピーできるが、LANにアクセスするためのIDやパスワードを入力するより、物理的にUSBメモリを抜き差しする方が手っ取り早いからだ。
今回、Transcend製のUSBメモリ「JetFlash 930C TS256GJF930C」を新たに購入した。容量は256GB、接続はUSB 3.0で、USB Type-CとType-Aの両方を備える。読み込み最大420MB/s、書き込み最大400MB/sと高速なのが売りだ。サンワダイレクト楽天市場店で6,580円にて購入した。
手元のUSBメモリがどうも気に入らない
レビューの仕事でやり取りするデータは、主にベンチマークプログラム本体とその結果。プログラムは全部で約50GBあり、これまではLexar製で64GBのUSBメモリ「JumpDrive S80 LJDS080064G-HNBNG-0820W」に保存していた。接続はUSB 3.0で、読み込み最大150MB/s、書き込み最大60MB/s。3年ほど前に1,180円で購入した安価な製品だ。
ただこのUSBメモリ、読み込みは概ね高速なのだが、書き込みが遅い、というか速くなったり遅くなったりを繰り返す。試しにベンチマークプログラムを高速SSDに一旦コピーし、USBメモリを初期化した上で、コピーしたデータをUSBメモリに書き戻すという作業を行なったときの様子が以下の動画だ。
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約10GBある「3DMark」のコピーがほぼ終わるまでの最初の6分間を切り出してみると、書き込み速度が波打つように変化しているのが分かる。速い時には公称の60MB/sを超えている時もあるが、0B/s、つまり止まっている時間も結構長い。
トータルするとだいたい30MB/sを切る程度で、意外と遅くはないと思うのだが、この速度グラフでダイアログ上の「0バイト/s」という表示を目にするたびにストレスを感じる。ベンチマークプログラムを最新のバージョンに入れ替えるたびに起こるので、いい加減何とかしたかった……というのが今回の製品を買うことになった経緯だ。
高速USBメモリは本当に高速なのか?
まずは新たに購入したTranscend製「JetFlash 930C TS256GJF930C」の実物を見ていきたい。商品部分のみにプラスチックのカバーを使った紙製のブリスターパッケージで、裏面には各国言語による注意書きがあるユニバーサル仕様。なお購入店のサンワダイレクトは、Transcend製品の正規リテール販売店だ。
中身を取り出してみると、両方に端子がある以外は特に何の変哲もないストレートな形状。キャップは少し柔らかい素材で、勝手に取れたりしないようきっちりとフィットしている。ただしUSB Type-AとType-Cでキャップのサイズが違うほか、キャップを裏返して装着すると本体とずれて段差ができるので、向きにも注意が必要で、これはちょっと手間だ。
では実際に使用してみよう。改めて、手元にある2つの製品を確認する。
- Lexar「JumpDrive S80 LJDS080064G-HNBNG-0820W」(64GB、読み込み:150MB/s、書き込み:60MB/s)
- Transcend「JetFlash 930C TS256GJF930C」(256GB、読み込み:420MB/s、書き込み:400MB/s)
まずは双方をexFATでフォーマットし、「CrystalDiskMark 8.0.4」で計測してみた。Lexar「JumpDrive S80」はデータサイズを問わずシーケンシャルライトが80MB/sと公称を超える数値が出ている。実使用では先のとおりそんな速度は出ないので、どうにも信頼できない結果だ。
対するTranscend「JetFlash 930C」も、データサイズが1GiBではシーケンシャルリード・ライトともに公称値をさらに上回る高速さ。しかし16GiBになるとライトが大幅に落ち込み、100MB/sを切っている。ランダムライトも低下しているが、それでもLexar「JumpDrive S80」よりは高速だ。
さて、問題は実使用時にどうなるかだ。Transcend「JetFlash 930C」にも約50GBのベンチマークプログラムをコピーし、動画を撮影。最初の6分間を切り出した。
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最初は約340MB/sと高速に書き込んでいくが、約6GBほど進んだところで速度ががくっと下がり、100MB/sを下回る値に。ただそれ以降は時間が経ってもほぼ一定しており、「CrystalDiskMark 8.0.4」での結果ともきちんと適合する。なお接続端子をUSB Type-AとType-Cでそれぞれテストしたが、結果に違いは見られなかった。
全てのコピーに要した時間は、Lexar「JumpDrive S80」が約45分かかったのに対し、Transcend「JetFlash 930C」は9分弱で終了しており、約5倍の差が付いた。しかし筆者としては、書き込み速度が揺れて0バイト/sの表示が出ることがなくなっただけで、とても気持ちよく使えるようになった。
でも、USBメモリじゃなくていいのでは?
ここまでお読みいただいた方に、1つお伝えすべきことがある。サンワダイレクト楽天市場店でTranscend製のポータブルSSDを検索すると、「ESD310C」という製品が見つかる。USB Type-AとType-Cの両方を備えたUSBメモリ型の製品で、今回購入したTranscend「JetFlash 930C」とほとんど同じ形状だ。
容量256GBのモデルを見てみると、価格は4,980円。筆者が購入したUSBメモリ「JetFlash 930C」より1,600円も安い。しかも速度は読み込み最大1,050MB/s、書き込み950MB/sとスペックもかなり上だ。実際の速度は使ってみないと分からないが、こちらの方が高速だろう。
これは本製品に限ったことではなく、256GBぐらいの大容量の製品になってくると、現状ではUSBメモリよりポータブルSSDの方が安価なことも少なくない。容量と速度を考えれば、今回はポータブルSSDを選択すべきだった、と考えることもできるだろう。
ただUSBメモリとポータブルSSDは、見た目も用途も似ているが、挙動が少し違う部分がある。詳しくは下記の記事もあわせて参照いただきたいが、たとえばOS上での認識のされ方が異なるといったことがある。
筆者としては、これ以上大容量のものだとポータブルSSDでいいと思うが、今後USBメモリを使うことがないとも言えないので、生涯最後のUSBメモリのつもりで持っておこう……という意図で選んだ次第だ。
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