「ピーター・パン」は多くの国でパブリックドメインだがイギリスでは病院が使用料請求権を持っている

GIGAZINE
2023年06月29日 19時40分
メモ



絵本や映画、ミュージカルなどで広く知られている「ピーター・パン」は、小説家・劇作家のジェームズ・マシュー・バリー卿による作品です。バリーは1937年6月に肺炎で亡くなっており、没後90年となる2023年には地域によってパブリックドメイン化していますが、イギリスでは法律により、権利を持つ病院に対して半永久的に使用料の支払いが必要であることが定められています。

Peter Pan Copyright | Great Ormond Street Hospital Charity | Great Ormond Street Charity
https://www.gosh.org/about-us/peter-pan/copyright/


バリーは1860年、スコットランド生まれ。少年時代から読書家で、10代で最初の戯曲を書いています。

小説や戯曲で成功して名を挙げたバリーは、1902年に出版した小説に出したキャラクターを主役として戯曲「ピーター・パン:大人にならない少年」を作り、1904年に初上演されました。1911年には、劇をもとにバリー自身が執筆した小説「ピーターとウェンディ」が出版されています。

バリーは1929年4月、これら「ピーター・パン」作品の著作権をロンドンにある小児病院、グレート・オーモンド・ストリート病院に寄贈しました。著作権を手に入れたことにより、病院は「ピーター・パン」の上演や商業出版、作品の翻案時の使用料を受け取り、活動の重要な収入源としてきました。

しかし、著作権には保護期間が定められています。バリーは1937年6月に肺炎のため亡くなったので、1987年12月31日をもってイギリスやヨーロッパ諸国では「ピーター・パン」の著作権保護期間は満了を迎えました。

ただ、1995年にEU加盟国間で共通の著作権保護期間を保証するための指令が出されたことで、イギリスの著作権保護期間は「作者の没後50年」から「作者の没後70年」に延長され、指令が遡及適用されたことによって「ピーター・パン」の著作権は2007年まで一時的に復活していますが、再び期間満了を迎えました。つまり、ヨーロッパ諸国においては、「ピーター・パン」はパブリックドメイン化しています。

ところが1988年、イギリスでは元首相のジェームズ・キャラハンの働きかけにより、著作権意匠特許法(CDPA)に第301条が加わりました。第301条は、著作権が失効しているかどうかに関わらず、グレート・オーモンド・ストリート病院は「ピーター・パン」の上演・出版・翻案の使用料を請求できると定めた特例措置を示したもので、この条文がなくならない限り、事実上、イギリスでは永久に使用料が必要になるというわけです。

Copyright, Designs and Patents Act 1988
https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1988/48/section/301

なお、CDPA第301条はあくまでイギリスの法律なので、すでにパブリックドメイン化した他のヨーロッパ諸国に影響を与えるものではありません。また、日本でもすでにパブリックドメインとなっています。

ただ、アメリカは著作権保護期間が「作品の初出から95年」なので、1911年出版の小説「ピーターとウェンディ」はパブリックドメインですが、戯曲「ピーター・パン」は1928年の上演からのカウントになるため2023年12月31日まで保護期間が残っています。

著作権保護期間の話は、直近だと2021年末で満了を迎えたA・A・ミルンの小説「くまのプーさん」が有名で、早々にCMネタに用いられたほか、ホラー映画「プー あくまのくまさん(Winnie the Pooh: Blood and Honey)」が制作・公開されています。

映画『プー あくまのくまさん』本予告 6月23日(金)公開 – YouTube
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知的財産法に詳しい早稲田大学の今村哲也氏は知的財産法制研究センターのコラムで「これ(永久著作権)を一般に認めれば、文化の発展の息の根を止めることになるだろう。著作権は一定の時期がくれば消滅し、それによって、後の世代の糧となるために、文化は発展するのである」と説明しつつも、ピーター・パンに関する特例が作られたことについて「英国議会の粋な計らい」と表現しています。なお、日本で同種の立法が可能かという点については「憲法上国会が行い得る『立法』の範囲に属するのかという観点から、理論的には難しいと言わざるをえないだろう」と結論づけています。

ピーターパン法
https://www.rclip.jp/activity/column8.html

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