近鉄・小学生向け駅業務体験が「ブラックすぎる」と話題…料金3万円、睡眠4時間


近畿日本鉄道HPより

 近年、鉄道ファンの動向が悪い意味で話題になることが多い。特に“撮り鉄”と呼ばれ、鉄道写真を撮ることを趣味としている人たちの醜聞が連日、報じられている。線路に立ち入って列車の運行を妨害したり、緊急停止ボタンをたて続けに押して列車を止めたり、私有地に入って樹木を勝手に伐採するなど、鉄道をカメラに収めるために迷惑行為を働く人が絶えない。もちろん、ルールを守って、他人に迷惑をかけていない人のほうが圧倒的に多いはずだが、それでも鉄道ファンに対する世間の見方は厳しくなる傾向にある。

 一口に鉄道ファンといっても、先述の撮り鉄のほかにも、電車に乗ることを趣味とする“乗り鉄”もいる。ほかにも、運転席からの景色を録画したり、切符を収集するなど、楽しみ方は多岐にわたる。

 そんななかで、実際に鉄道に触れたり、鉄道業務に従事することを目指している人もいるだろう。将来、運転士など鉄道業への就職を目指している子供も少なくないはずだ。そんな子供たちに向け、近畿日本鉄道が企画している体験ツアーが大きな話題になっている。

 近鉄が「夏休み特別企画」として6月15日に販売開始したのは、「駅業務体験と駅舎仮眠(宿泊)体験」ツアーだ。吉野線の大和上市駅にて、小学4~6年生の子供を対象に駅業務体験と駅舎仮眠(宿泊)体験ができる「きんてつ駅のお仕事体験2日間 ㏌大和上市駅」を実施する。

 キッザニア東京やよみうりランドの「グッジョバ!!」など、職業体験ができる施設は平日でも行列ができるほどで、小学生・中学生にとっては、憧れの職業を実際に体験できるだけでなく、未知の職業を知り将来の展望が広がるきっかけになることもあるだろう。

 そんななか、小学生に人気の高い鉄道の業務を体験できる企画が発表され、注目を浴びている。鉄道好きな子供や、その親御さんにしてみれば、興味がそそられるところだろう。その一方で、当該ツアーの内容や価格がネット上で「ブラックすぎる」として話題のネタになっているのだ。

 まず、ツアー参加費が3万円(付き添いの大人は1万円)という高額設定な点だ。また、体験業務のタイムスケジュールが24時に就寝、4時30分頃に起床となっており、小学生には過酷ではないか、との声が出ている。そこで、Business Journal編集部は近鉄広報部に直接、話を聞いた。

――この企画の狙いを教えてください。

近鉄広報担当者 このツアーを通じて鉄道業務を体験することで、愛着を持ってもらいたいという狙いで企画しました。

――過去にも同様の企画をしたことはあるのでしょうか。

近鉄広報担当者 いえ、今回が初めての試みです。

――対象が小学4~6年生ということですが、24時就寝・4時半起床は厳しい条件に思われます。これは、あえて普段、鉄道業務をされている方と同様のスケジュールで体験してもらおうという意図なのでしょうか。

近鉄広報担当者 リアルな鉄道業務として、終電を見送って始発に備えるという流れでいくと、そのような形になるのですが、あくまでも見どころを詰め込んだモデルケースであって、全部を体験していただく必要はありません。体験したい業務としたくない業務を選んでいただけます。通常の業務でもシフト制のようになっており、6時間の睡眠時間を取っています。

――では24時まで起きている必要も、4時半に起床する必要もないということなのですね。

近鉄広報担当者 あくまでも仕事ではなく、思い出作りで体験してもらうものなので、すべてを強制するものではありません。「こういう体験ができます」という業務を準備させていただいています。

――3万円という値段設定になっていますが、入浴や飲食がないなかで、高すぎるのではないかとの声があります。なぜこれほど高額なのでしょうか。

近鉄広報担当者 業務を体験していただくにあたり、常に弊社の社員が帯同することになっているので、その人件費が発生します。また、今回ツアーで使用する大和上市駅は係員が常駐していない駅で、普段は生活用電気などが通っていないため、ツアーの際には電気使用料などが発生するため、それらを加味した値段設定になっています。

――今回の企画は7月29~30日と8月19~20日の2回、各1組だけですが、その反響によっては追加で企画されることもあり得るのでしょうか。

近鉄広報担当者 現段階では未定で、今回のツアーの状況を見ながら検討していきたいと思います。

 実際に運行されている鉄道の駅舎で、リアルな業務を体験する貴重な機会となるのは間違いないだろう。夏休みの思い出作りに、検討してみはいかがだろうか。

(文=Business Journal編集部)

「駅業務体験と駅舎仮眠(宿泊)体験」ツアー

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