1万円以上も差…首都圏、マンション管理費・修繕積立金の高い/低いエリアが鮮明


「gettyimages」より

 マンションを購入すれば、住宅ローンの負担のほかに毎月管理費・修繕積立金の負担が出てくるのはご存じでしょうが、では、どれくらいの負担が出てくるのか、エリアや築年数、戸数規模などによってどれくらいの違いがあるのかなどはあまり知られていないのではないでしょうか。自分たちが希望する物件の条件に応じて、おおむねどれくらいの負担になるのかを知っておきたいところです。

ローン以外に月額2万円以上の負担がある

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、首都圏の中古マンションの管理費・修繕積立金の月額平均は図表1のようになっています。首都圏全体の平均は管理費が1万2480円で、修繕積立金が1万1474円ですから、合計2万3954円に達します。これを盛り込んで購入後の家計管理を考えないと後悔することになりかねません。

 たとえば、5000万円の中古マンションを借入額4000万円、金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしの条件で住宅ローンを利用すると、毎月返済額は11万2914円です。年収600万円の人なら、年収に占める年間返済額の割合を示す返済負担率は22.6%ですから、まずは返済に無理のない範囲といえます。

 しかし、管理費・修繕積立金が合計2万3954円かかると、住宅ローン返済と合わせた負担は13万6868円に増え、年収600万円の返済負担率は27.4%になります。さほど年収が高くない世帯は返済負担率25%までに抑えておくのが無難といわれています。住宅ローンだけなら十分に安全な資金計画ですが、管理費・修繕積立金まで加えて考えるとやや危険ということになるので注意が必要です。

http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202305_1.pdf

修繕積立金では埼玉県の負担が一番小さい

 しかも、この管理費と修繕積立金、購入する物件の条件によって金額がかなり違ってきます。物件によっては、首都圏平均の月額2万3954円以上の負担になることもあるので、自分たちの購入したい物件の条件に合わせて、おおむねどれくらいの負担になるのかをあらかじめ確認しておくのが安心です。

 まず、物件の所在地、エリアによって負担額が違ってきます。最も高いのは東京都区部で、管理費と修繕積立金の合計は2万4872円に達します。横浜・川崎も2万4354円と東京都区部とほとんど変わらない水準です。それに対して、埼玉県、千葉県は若干安くなります。この両県を比べると価格は埼玉県のほうが高いので、管理費・修繕積立金もそうではないかと考えがちですが、実は最も負担が少なくてすむのは埼玉県の2万1765円で、千葉県の2万2977円との間には1000円以上の差があります。また東京都区部や横浜・川崎と埼玉県を比べると月額合計には1万円以上の差があります。価格差に加えて管理費・修繕積立金にも大きな差があることを知っておきたいところです。

築10~20年の負担が一番大きくなる

 次に、マンションの築年数帯によっても管理費・修繕積立金に差があります。図表2にあるように、築10年以内の築浅物件は管理費・修繕積立金の合計が2万4742円に対して、築11~20年は2万7560円になります。築11~20年が最も高くなっているのです。新築分譲時には、販売しやすくするため、修繕積立金の負担額を少なくしておき、5年後、10年後に引き上げる計画になっているマンションが少なくありません。そのため、竣工からしばらく経つと修繕積立金が引き上げられ、合計負担が重くなることが多いわけです。十分に注意しておきたいところです。それに対して、築30年超になると、合計2万0691円と築11~20年に比べると月額7000円以上安くなります。特に築古物件の修繕積立金は9767円と1万円を切っています。

http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202305_1.pdf

10年後、20年後も安心して住み続けられるのか

 修繕積立金が安いのは家計負担を考えると助かりますが、それで、必要な修繕を計画的に実施していけるのでしょうか。国土交通省の「マンション総合調査」によると、築年数の長いマンションでは、修繕計画に対して、修繕積立金が不足しており、今後の計画的な修繕に不安を感じる物件が少なくありません。加えて、築古物件は空室が増えたり、修繕積立金の滞納などが多くなっている可能性もあります。それでは、必要な工事を実施できず、老朽化が一段と進む可能性があり、極端な場合、幽霊マンション化しかねません。防災、防犯面などで不安を感じるだけではなく、管理も十分に行われず、快適な生活を送れなくなってしまいます。

 そうなってしまうと、売却するにも売却できず、二束三文で手放すしかありません。築古物件ですから、安いのは安いのですが、安いには安いなりの理由があるので、十分に注意しておきたい点です。もちろん、30年、40年が経過しても良好な維持管理が行われ、定期的な工事で居住性や安全性などが確保されている物件もあります。そうした物件は管理費・修繕積立金も決して安くないはずですから、購入前にその点をチェックしておきましょう。

大規模マンションは月額負担が大きくなる

 いまひとつ、マンションの総戸数規模による違いもあります。総じていえば、ある程度の物件数があればスケールメリットで1戸当たりの負担が軽減できるので、図表3にあるように100~149戸の中規模クラスのマンションの月額負担が一番少なくなります。それに対して、戸数が少なくても、必要な管理サービスなどにはそう極端な差はないので、小規模マンションでは1戸当たりの負担が重くなってしまいます。100~149戸の中規模マンションの月額負担の合計は2万3568円に対して、50戸以下の小規模マンションは2万5129円です。

 ただ、戸数が増えて200戸以上の大規模マンションだとスケールメリットよりは、大規模化による特性のほうが大きくなって、1戸当たりの負担が増えます。大規模マンションでは、まず各種の共用施設が増えます。キッズルーム、カラオケルーム、ゲストルームなど管理の必要な施設が多くなり、コストがかかります。大規模だと、コンシェルジュを配置するなど管理サービスも充実する傾向が強く、それもコストアップ要因になります。

http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202305_1.pdf

 大規模マンションは資産価値を維持しやすい?

 大規模物件のなかには、超高層マンションが少なくありません。超高層マンションは低層マンションなどに比べると修繕積立金が格段に高くなります。それが加算されますので、月額負担が重くなってしまいます。月額負担の合計が一番安い50~99戸が2万3096円で100~149戸が2万3568円に対して、200戸以上の大規模マンションになると2万7180円に増えます。

 ただ、その分、大規模マンションのほうが資産価値評価が高く、購入価格が高くなるのと同時に、将来売却が必要になったときには、中規模マンションなどに比べて比較的高く売れる可能性があります。将来の安心につながると思えば、多少負担が重くなるのも仕方のないことかもしれません。いずれにしても、中古マンションを購入するときには、価格だけではなく、条件に応じた管理費・修繕積立金の負担の違いもシッカリと頭に入れておきたいところです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

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