人口動態が変わる日本の国家づくり

アゴラ 言論プラットフォーム

総務省が発表した2022年10月1日の総人口は1億2494万7000人で、前年に比べ55万6000人減少したと発表しました。これをもう少しよく見ると日本人だけを捉えれば1億2203万人で前年比75万人減少です。統計上の自然減、つまり出生者から死亡者をひいた人数は2000年以降、見事な減少ラインなのです。まるで積算をしているがごとく自然減が増えています。これは言うまでもなく、出生者減と高齢者の死亡者が増えていることが原因です。

yaophotograph/istock

また統計には社会増減という欄があります。つまり日本人の海外移住の増減です。こちらはコロナで半ば強制的に帰国を余儀なくさせらた学生や一時的就労ビザ所有者が続出した2020年を除き、基本的には出超、つまり日本を去る人が近年ざっくり年間1万人程度います。04年から09年頃は日本への期待感が大きく減退していた時期で年間平均84千人海外移住しています。

もう一つ、外国人の動きです。これも興味深い動きです。1990年から民主党政権になる08年までは94年を除き、概ね年間5-6万人ずつ増えていました。ところが民主党政権下の09年から12年までは見事にマイナスでその4年間で15万8千人も外国人がいなくなっているのです。そして安倍政権時代の13年から再び戻り始め、今日までマイナスだったのは21年のコロナ禍の影響を受けた年だけです。そして増え方がやや加速度的になっており、22年単年でも19万1千人増となっているのです。

この人口の動きと経済や技術の進化から日本の10年後、20年後を想像すると今のような真綿で首を絞められるような「耐えられる人口減と人口構成の微小な変化」から「目に見える構造的変化」になることは自明であるとみています。

思いつくことをざっくりリストアップしてみましょう。

① 現在の高齢化率(65歳以上の人口率)は28.9%でこれが2065年には38.4%に向かう漸増が続き、超高齢化に伴う経済生産性に懸念あり。
② 新生者が80万人を下回り、今後も減ると予想されるため、今後、企業が日本人採用に関し、相当苦労する時代を迎え、かつ、賃金の大幅上昇が見込まれるかもしれない。
③ 不足する労働力はAIやIT化による自動化、効率化と共に外国人労働者に頼らざるを得ない。
④ 高齢者が戸建ての家をメンテ出来ず、また空き家問題が今後、更に深刻になるであろう。一方、高齢者がマンションに引っ越すのはローンの問題と毎月の管理費の支払い懸念があろう。
⑤ 増大する社会保障費の歯止めはカナダや英国に見習うべき
⑥ 相続税対策で地方の僻地にアパートを建てることを禁止し、コンパクトシティ化をまい進し、居住地、商業地、農地、非開発地の棲み分けを行い、地方の活性化をすること

もっといくらでも思いつくのですが上記に関していくつか補足説明したいと思います。

②と③に関して日本人労働者は二極化が明白化するとみています。つまり、頭脳労働者とそうではない人です。日本企業は総合職への門戸が異様に広く、3年、5年で振り落とされる人を考慮した一括採用をしますが、諸外国ではありえません。今後管理部門がより少数精鋭され、外国人も入り込んでくることを想定すれば、「負け組」が相当出ることで社会的な分断が起きるかもしれません。できる人間はより高い給与を、脱落者には厳しい社会です。日本がフラットな社会を維持できるか、瀬戸際にあるように見えます。

⑤なのですが、医療費負担がなぜ社会問題化されるのかです。英国やカナダは医療費は無料です。しかし、その負担が極端な財政問題にはなっていません。違いはこちらの人が医療機関に行くか、と言えば本当に必要に迫られて、という人だけという違いかと思います。外来診療の回数比較では韓国の次に日本が世界で第2位でその回数は年間一人12回を超えます。私はカナダで年1回行くかどうかです。

カナダの場合、更にファミリードクターないしウォークインと称される第一関門で患者の抱える大抵の問題は処理され、より高度な治療を要する人だけが専門医に行け、かつ必要以上の治療はしないというのが大方針です。医療費はタダでも投与される薬は企業などが提供する医療保険を持っていなければかなりの負担額になります。

よって極端な話、こちらの人は医者に行かず、自分の免疫で自然治癒に心がけているのではないか、と思うのです。一方、日本人は医者好きで医療機関に行き過ぎです。一案として医者は保険で診てもらえるけれど薬は負担が多くなるといった制御の工夫が必要な気がします。

⑥について450の地方自治体が既に何らかの「立地適正化計画」を策定しています。平たく言えばコンパクトシティを推し進めるための制限です。発想としては居住誘導地域とその域外という発想です。いわゆる市街化区域と市街化調整区域に近いのですが、既に住宅があるエリアでも市町村がそれ以上の市街化を認めないというものです。そうなれば道路もインフラも集約でき、効率化が極めて高くなるのです。例えば京都の舞鶴市は市街化区域が2駅を中心としたエリアに限り、全体の7%しかないのです。また金沢市のように居住区域への移住促進に奨励金を出すところもあります。

私ならコンパクトシティにリバースモーゲージを積極的に受け入れる集合住宅を作ります。購入者の高齢者は一括で購入資金を支払い後、管理費など全ての住宅関連費をリバースモーゲージでカバーし、お亡くなりになった時、余りを相続者に差し上げるという仕組みです。これは高齢者には優しいと思います。

私が日本にいた31年前と今、社会構造的には目立って変わりはありません。これが維持できないと分かっていてもなかなか変えられない日本があります。ただ、知らぬ間に企業は海外で稼ぎ、外国人の高度技能労働者も増え、地方の街づくりの絵図は変わってきています。着実に地殻変動はしているのだ、という意識のもと、若者は学び方改革を、社会人は働き方改革を、高齢者はシニアライフ改革を通じて次世代につなげられる社会を形成したいですよね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月31日の記事より転載させていただきました。