夜食を食べると太りやすいことは経験的に知られていますが、遅い時間の食事が人間の肥満メカニズムにどのように影響しているのかを厳密に検証した研究はあまりありません。2022年10月に査読付き科学誌・Cell Metabolismに掲載された研究により、摂取カロリーが同じでも食べる時間が遅いと代謝や空腹感に違いが出ることが分かりました。
Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity: Cell Metabolism
https://doi.org/10.1016/j.cmet.2022.09.007
BWH Press Release – Brigham and Women’s Hospital
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=4268
Night Eating Increases Appetite – Life Extension
https://www.lifeextension.com/news/nutrition/night-eating-increases-appetite
Eating Late Can Alter How You Burn Calories And Store Fat, Depressing Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/eating-late-can-alter-how-you-burn-calories-and-store-fat-depressing-study-finds
ボストンにあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院のフランク・シェアー氏らは、一体なぜ遅い時間の食事が肥満リスクを高めるのかを解明するため、被験者に時間をずらして食事をしてもらう実験を行いました。
実験の目的について、シェアー氏は「私たちは、遅めの食事が肥満リスクを高める理由を説明するメカニズムを検証したいと考えました。私たちや他の研究者によるこれまでの研究で、遅い時間の食事が肥満リスクの増加、体脂肪の増加、減量の失敗と関連していることが示されていました。私たちはその理由を解明したかったのです」と説明しています。
実験に参加したのは、BMI値が体重過多もしくは肥満の範囲の被験者16人で、そのうち5人は女性でした。実験は2回に分けて行われ、1回目は食事を通常のタイミング、つまり「朝食を8時、昼食を12時、夕食を17時半」のスケジュールで摂取しました。そして、数週間後に行った2回目の実験では、同じ食事を約4時間後ろにずらしたタイミング、つまり「朝食は抜き、昼食を12時、夕食を17時半、夜食を21時半」というスケジュールで食べました。
実験データに余計な影響が出ないように、食品の種類と量、カロリー、睡眠時間、1日のうち明るい時間と暗い時間、身体活動、さらには姿勢など食事の時間以外の要素は徹底的に管理されたとのこと。また、それぞれの実験開始の前の3日間は、食事の内容と食事の日程も実験とそろえてもらうようにしました。
研究チームは実験期間中、被験者に空腹感や食欲について定期的に報告させるとともに、血液サンプルを採取したり、体温やエネルギー消費量を測定したりして、代謝やホルモンバランスの変化、発現する遺伝子の違いなどを調べました。
実験の結果、遅い時間の食事は満腹感のサインになるレプチンというホルモンの濃度を24時間にわたって低下させてしまうことや、被験者らが実際に感じる空腹感も強いことが判明しました。さらに、遅くに食事を食べると体温は低下し、カロリーの燃焼速度は遅くなり、脂肪組織の増加や脂肪分解の減少に関連する遺伝子が発現し、その結果脂肪の蓄積が促進されました。
この結果について、論文の筆頭著者であるニーナ・ブヨビッチ氏は「この研究で私たちは、『他の全てが一定に保たれている時、食事をする時間は重要なのか?』を問いました。そして、私たちは食べる時間が4時間遅いと空腹レベル、食後のカロリー消費の仕方、そして脂肪の蓄積の仕方に大きな違いがあることを発見しました」と話しています。
今回の研究は男女比が11対5と女性が少なかったため、研究チームは今後より多くの女性を募り、この研究結果をより幅広い人々に適用できるようにしていくことを目指す方針です。
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