5G基地局のパフォーマンスを仮想化技術の改良により大幅向上、NEDOと富士通 スループット性能30%向上、同時接続端末数は3倍に

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今回開発された技術のイメージ

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と富士通株式会社は4月25日、5Gの仮想化基地局の演算リソースをソフトウェア上で柔軟に配置・制御する技術を開発したと発表した。5G基地局としての機能をさらに強化し、将来のポスト5Gへのシームレスな通信インフラ移行も可能になるとしている。

 これは、経済産業省委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/仮想化基地局制御部の高性能化技術の開発」として、2020年6月~2023年3月に行われたもの。これまでの5G基地局は専用ハードウェアを用いて構築される「ハードウェア基地局」だったが、基地局の導入コストの抑制や消費電力の低減を目的に、基地局機能をソフトウェア化し動作させる「仮想化基地局」導入の動きが広がっている。

 同事業では、ポスト5G化を視野に、超高速通信・超低遅延・多数同時接続といった異なる特徴を生かしたサービスを、必要な場所・必要な時に提供できる柔軟性を持った基地局の実現を目指して、開発が行われた。

基地局の仮想化基盤上で演算リソースをスケジューリング

 今回開発された技術は、5G基地局の仮想化基盤上で演算リソースをスケジューリングするパーティショニング(データの処理を効率化するための分割)処理を行うもの。従来の仮想化基地局では、各処理タスクやメモリ負荷、CPU使用率がOSに依存していて複数の基地局機能をリアルタイムに処理できなかったという。

 新たに開発したパーティショニング技術を採用した仮想化基地局では、複数の基地局機能(超高速通信、低遅延通信、多数同時接続)をリアルタイムに処理可能になった。

 あわせて、ユーザー数やトラフィック量に応じて、必要なCPUやメモリのリソースを動的に獲得するハードウェアリソース動的配置技術も開発。最大データ転送量(スループット)や遅延時間(レイテンシー)といったサービス要求条件や運用中の接続端末数、サービス種別を考慮したハードウェアリソースの割り当て制御を実現した。

 富士通が提供する仮想化基地局に今回開発した技術を適用することで、これまでのハードウェア基地局と比較して、スループット性能が30%、同時接続端末数が3倍に向上したという。また、これによってネットワーク全体における基地局設置数の削減につながり、設備投資(CAPEX)や運用費(OPEX)も、ハードウェア基地局と比較して30%以上削減できることを確認したとしている。

今回開発した技術を適用した仮想化基地局の運用イメージ

 今後の予定として、富士通では、本事業で開発した技術を適用した仮想化基地局を、国内外のパブリック/プライベート5G向けに、2023年度下期より提供開始するとしている。

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