シンギュラリティが近づいた時:産業革命の真っ只中にいる自覚はあるか?

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藤井壮太六冠がなぜ破竹の勢いなのか、さまざまな方が様々なコメントを寄せています。私は将棋については超ド素人ですのでこれに意見を挟む余地は全くないのですが、個人的に思っていることが一つだけあります。彼は一般に言う天才という表現で済む棋士ではないと思うのです。そうではなく差し方のスタンスと攻略方法を構造的に変革させたのではないかと思うのです。

Galeanu Mihai/iStock

AI的思考というコメントも耳にしますが、私が従来から思っているのは量子コンピューター的思考方法、つまり同時並行に様々なシナリオを思考することでその先読みが従来の0と1のビット方式と全く違うアプローチでスピード感を持ち深読みが出来たのではないかと思うのです。

こんなことは想像の世界で藤井氏の頭の中を分析できるわけではないのでこれ以上は立ち入りませんが、極めて優秀でかつ、従来の常識を打ち破るような人材は今後、各方面で出てくるとみています。理由はコンピューターの進化と共にごく一部の才能ある人間がそれ以上のスピードでIT化やAIに促進され、進化する可能性があるからです。

シンギュラリティという言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。1950年代にSF作家のレム氏が初めて使った言葉で意味は「並外れたこと、特異点」であり、狭義ではAIの世界で機械が人間を凌駕することを意味していますが、それをもっと広義に考えれば藤井壮太氏は将棋界でシンギュラリティを超えたという言い方もできます。(そんなこと言うのは今のところ、私だけです。)

狭義のシンギュラリティ、つまり機械が人間を超えるのは何時なのでしょうか?

シンギュラリティが2045年に起こると予測する人々は、ロシアの技術者であるレイ・カーツワイルが提唱した「2045年問題」と呼ばれる理論に基づいている場合があります。… 一方で、2025年にシンギュラリティが起こると予測する人々もいますが、これは非常に急速な進展を仮定していると言えます。

すみません、実は上記の一節はChatGPTに回答してもらいました。他にもいろいろコメントされましたが、結局のところ推察するに人工知能の加速度がどのぐらいになるか次第という点とシンギュラリティの汎用度をどう定義づけるか、だと思うのです。例えばごく一部の分野については2025年に到達しないとは限らず、今の技術進化の加速度具合からは2045年まで待つことはないだろうと個人的に想像しています。

では人間社会はどうなるのでしょうか?

2020年代後半にもう一つ確実にやってくるのが量子コンピューター、それに2030年代に通信が6Gになることで我々の社会はSFのようなことになるのでしょう。

例えば経理の仕事は自動化され、会計士は既定のルールに基づく業務だけなら必要なくなるでしょう。事実、今日でもそれは散見出来ます。カナダでは個人は毎年税務申告義務がありますが、会計ソフトがカナダ税務当局とリンクし、税務当局は企業や金融機関が払った給与、金利、配当金などの情報を自動的に集計、反映するため、ソフトを開けて今年の税務申告をする最初の段階でデータが既に入力されており、8割方の作業が終わっているのです。あとは控除額を個々のケースで入れていくだけです。日本では制度上の問題で逆立ちしても出来ない技です。

学校の先生はどうでしょうか?事実を教えることに限定すれば先生は100%いらなくなります。それはAIとITによる自動学習とせいぜい教えるのが上手な先生の解説をオンライン上で日本全国、皆でシェアすればよいだけです。すると先生の仕事はクラスの管理業務とAIから学んだ事実に基づき、生徒が何をどう考えるかを深掘りをさせるファシリテーターとなるのです。

弁護士も同様です。個人的に必ず出ると思うのが例えば訴訟事案に関する初期のコンサル業務をAIが行うというものです。「あいつを訴えたい!」という願望に対してAI君とやり取りを重ねます。するとあなたはその訴訟の意義から始まり、必要な準備作業、時間とコスト及び期待できる結果について答えをもらいます。もちろん、AI君はあらゆる法律と判決事例を情報として照らし合わせた上でケースの見通しを行うのです。それを踏まえそれでも訴訟を継続する場合のみリアルの弁護士が登場するのです。そもそもカナダでは判事が足りないので裁判所まで行くケースなど訴訟案件の1/10ぐらいしかなく、ほとんどはその前の和解で終わります。

医者はどうでしょうか?6Gが出来たら医者は超専門分野の縦割りが起きる公算があります。そして手術は絶対的な専門性を持つ先生が画面越しに執刀します。つまり世界中の医者が同じ土俵に乗る、ということです。

これらは士業と言われる人たちでも更に深く特別の能力を持たない限り、普通の職業と同じになるということです。では一般的な業務はどうなのでしょうか?今のポジションは減るでしょう。但し、産業革命の歴史を見ても職が無くなったわけではなく、産業革命を通じて新たな業務が生まれています。我々は今、産業革命の真っ只中にいるのだと思ってよいのでしょう。

ChatGPTを使いながら「これから迎える社会はどうなるのだろう?どう生きればいいのだろう?そうだ、自分は自分で守るしかない!」と思わずはいられないというのが正直なところです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月29日の記事より転載させていただきました。