薪ストーブや暖炉の煤煙を有害と指摘する日本初の研究論文

アゴラ 言論プラットフォーム

PavelRodimov/iStock

薪ストーブの有害性について興味深く重要な論文を紹介しておこう。

薪ストーブや暖炉、いわゆる木材燃焼暖房の排気煙が人体に有害であるとの研究は、枚挙にいとまがないほど過去より多数存在するが、従前は全て海外の研究であった。

ところが2022年、日本でも薪ストーブの煤煙が人体に有害であるとの研究が遂に発表された。結露によるカビと共に、木材燃焼煙も小児喘息の大きな要因としている。

これは、周辺住民だけでなく暖炉や薪ストーブの使用者自身とその家族にも害が及ぶことを示唆するものであり、重要かつ看過してはいけない貴重な研究である。

Relations of mold, stove, and fragrance products on childhood wheezing and asthma: A prospective cohort study from the Japan Environment and Children’s Study

カビの成長と薪ストーブ/暖炉は、北部地域の小児期の喘鳴と有意な関連がありました。小児期の喘鳴や喘息を予防および改善するために、住居でのカビの除去とクリーンな暖房(大気汚染の排出なし)の使用を考慮する必要があります。(※ 論文全体は複写できないので要約のみ)

この研究の対象は60,529人の子供だが、呼吸器の脆弱な大人でも同様なリスクは充分に考えられる。筆者のもとにも「隣家の薪ストーブが焚かれ始めて以降、喘息になった」との報告は複数届いている。さらに大きく注目すべき点は、研究が日本の環境省からの助成金を受けて行われたことである。

カビ、ストーブ、香料製品の小児喘鳴と喘息との関係:日本環境と子どもの研究からの前向きコホート研究 (wiley.com)

こちらで全文を読むことができるので、是非とも目を通されれることを強く希望する。

なお、この論文はオランダの空気質監視活動を行う組織【SCAPELER】によっても紹介されたことを付記しておく。

この論文が証明する内容は極めて重い。

日本の薪ストーブ業界、日本暖炉ストーブ協会、薪ストーブ工業会、全ての薪ストーブ業者は、従来より漫然と、或いはビジネスのために未だに繰り返す、身勝手かつ科学的根拠が皆無である無責任な文言を全て撤回すべきと指摘しておく。

「人にも環境にもやさしい薪ストーブ」
「環境を一切汚染しない、体に優しい薪ストーブや暖炉」
「カーボンニュートラルで空気を汚さない薪ストーブ」
「薪ストーブを使うことでSDGsになる」

これらのフレーズは事実と完全に異なるうえに、消費者に大きな誤解を与えている。

即ち、有害であることが科学的・医学的に明白な製品を、あたかも健康のために良いと虚偽広告を行う。

薪ストーブ業界だけがなぜこの霊感商法並みの不正を看過されているのか疑問でならない。

農林水産省庁舎の一階に存在する薪ストーブは誰が設置したものか、それが答えではあるが。

何れにしても、現在まで頑なに「薪ストーブが有害との研究は海外のものであり、日本国内においてはこれは適合しない。EPA基準準拠機器は無害である」との言説を採ってきた日本の薪ストーブ業界の詭弁も、もはやこれまでである。

無害宣伝は全て、景品表示法に抵触するものと思われるがいかがであろうか(EPA2015認証に不正があったことは以前に指摘した通りである)。

実際に世界各地、日本各地でこの無害宣伝の欺瞞によって周辺住民に多数の煙害被害者が、声も出せずに苦しんでいる事実は認めるべきである。

日本でも明らかに木材燃焼煙が有害であると研究によって指摘された以上、日本政府や各自治体レベルでも何らかの行動を採るように強く要求する。時機は早いほうがよい。時機が遅れると欧米諸国からの笑いものになる。いや、実はもう笑いものになりかけていることは、特に国会議員、都道府県議会議員、市町村議会議員、各首長は認識をすることを強く奨める。

筆者は海外の多くの研究者と意見交換をする中で、日本のこの恥ずべき状況を詳細に伝えており、これに対する海外の研究者たちの反応は共通している。

「先進国の日本でなぜ薪ストーブなど推奨しているのか」
「退行政策だ、クレイジーだ、お前は一体何をしているのか」
「空気のきれいな国だと思っていたのに欧米を真似て薪ストーブなど愚かすぎる」
「木材燃焼は環境破壊なのに日本は何をやっているのか」
「木材を燃やしてカーボンニュートラルなど逆だ辞めさせろ」
「悪いところまで欧米の真似をするな、真っ先に規制すべきは日本のはず」

と、理不尽にも筆者がきつくお叱りを受ける始末である。

何度も指摘するが、欧米諸国では各自治体レベルでの使用禁止も含む制限は開始され年々強化されている。

市民団体によって規制を求める署名活動も活発化している事実がある。

特にオランダでは世界一熱心な空気質監視団体が稼働し、国内の空気質を測定している。

そして彼ら自身の住環境における薪ストーブによる大気汚染を、空気質測定機器を設置し測定データを取り続け、行政機関に「薪ストーブは有害である」と言わせた判決が出た。これはオランダ王国で筆者同様の活動を行う同志グループの勇敢な行動である。

筆者が調べた限り、現段階で国単位で家庭用木材燃焼暖房類の使用規制が皆無なのは、西側諸国のうちで不名誉の極み、我が国、日本国だけのようであり、かなり恥ずべき大気汚染意識の低さ若しくは無さを示していると言えよう。

世界標準たる空気質指標である「US-AQI」を日本国で採用していないことは、それを端的に示すと言える。

これは2月の或る日、筆者の設置した複数測定局のうち一箇所における連続自動測定値を一時間平均値グラフ化したものである。

空気質測定の実際については、稿を改めることにしたい。

さて、毎度ながらこれだけは言っておこう。

ススとり君homeの装着を強く推奨

「人にも環境にもやさしい薪ストーブ」との宣伝文句は完全な科学的虚偽であり、景品表示法違反を問えるほどの欺瞞である。

この欺瞞は、SDGsの「つくる責任、つかう責任」に対してどのように責任を問われるだろうか。

薪ストーブや暖炉、木材燃焼暖房は著しい大気汚染を起こし、欧米豪諸国では深刻な空気質の悪化と健康被害が急増している。

煙突から大量に、濾過もなくそのまま排出される有害煤煙は「人にも環境にも過酷である」ことは明白である。

法規制が無いからと煤煙を住宅地で撒き散らす結果、多数の周辺住民たちの健康に対する理不尽な攻撃性と、隣人たちを敵に回すことだけではなく、実は使用者自身に最もその害が過酷かつ速やかに及ぶことになる。

偽の環境対策のために使用者・非使用者共に地域全体の居住者の健康を損ね、或いは寿命を短縮することによる中長期的な社会的損失を考慮する必要が有る。

それでも薪ストーブ、木材燃焼暖房が「人にも環境にもやさしい」と頑なに主張するなら、以下論文を確認すべきである。

有害な薪ストーブ
薪ストーブ汚染 

しかし、筆者は薪ストーブの完全禁止は求めていない。過疎地・極寒冷地・中山間地域・キャンプ等、生活インフラの不備な地域での使用に限っては全く問題無いと考える。

薪ストーブや暖炉は、近隣住民たちに対して煤煙悪臭さえ撒き散らさなければ、何の問題も存在しない。

排出するCO2に関しては議論の必要は無いが、その他の有害物質や臭気は除去し排出することは必須条件である。

筆者は当初から一貫して何度もこれを紹介してきた。

薪ストーブの煤煙悪臭問題は、この機器の装着によってほぼ解決できる。僅か100万円である。薪ストーブを設置使用できるような人なら、この程度の費用は取るに足らないものだろう。

たったの100万円で「人と環境にやさしく」なれる。

大気汚染を防止し、多くの近隣住民に憎まれることを防ぎ、感謝される魔法のアイテムであり、今からでも遅くない、速やかに発注し装着されることを強く推奨する。


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2023年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。

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