映画みたいな奇跡ってなかなか起こらない。でも、思うに、なぜ起こりにくいかって言うと、一番欲しいタイミングで欲しいところにドストライクだから。ボールの奇跡なら我々の日常でも結構起こっていると思う。今、そんなんいらんねん的なヤツ。
で、本記事ではボール気味の奇跡が起こっちゃった。ひょんなことからカレーの最強隠し味を発見してしまったのである。マジかよ。今そんなん探してなかったねん。
・混ぜてカレーにならない食材を探してた
じゃあ、私(中澤)は何を探していたのかと言うと、「混ぜてカレーにならない食材」だ。これはニッポンフードシフトの「カレーから日本を考える。」というカレーの具材を考えることで日本の食料事情に思いを馳せるプロジェクトのPRのためであった。ほら、カレーってなんにでも合うやん? だから、逆に、混ぜてカレーにならないものってないのかなーって。
趣旨が趣旨ゆえに用意したのはカレーの具としてはキワモノに当たる5つ。納豆、ポテトチップス、小豆、チーズケーキ、ドリアンである。なにせ、カレーにならないものを探すわけだからな。段階を踏んでアウトラインに迫ることにしたわけ。この時は思いもしなかった。この中の1つがケミストリーを起こすなんて。
・納豆
最初、私は納豆を入れた。論じるまでもないほど余裕でカレーになる。まあ、納豆カレーはあるから基本ラインの確認として。
・ポテトチップス
続いて、ポテトチップスはどうか? 混ぜてみるとこれも余裕でカレー。普段入れないとは言え、じゃがいもなので安牌とも言える。ふにゃっとしたポテトチップスはレアな食感だが、完全にカレーになっている。
・小豆
ここで一歩踏み込んでみたのが小豆。カレーの味とは程遠い。店のトッピングで見かけることもまずないし、どんな味になるのか想像がつかない。少なくとも私はこういう検証じゃなければ入れてみたりしないだろう。
混ぜたところ、ちょっと色が濃くなった気がするが、見た目はただのカレーである。だが、この中には確かに小豆が溶けているのだ。なお、砂糖不使用などではなく、スイーツにライドオンするような甘ったるい味のものであることを追記しておく。食べてみたところ……
ちゃんとカレーだ。っていうか、溶けやすいからなのかポテトチップスよりもカレーと同化している。ちょっと量を入れすぎたような気もしたが普通にウマイ。使用しているカレーは市販のルーなのだが、コクが増して欧風感が出ている。量で辛みさえ調節すればこれはむしろ納豆やポテトチップスより優秀と言えるのではないだろうか。
・ベイクドチーズケーキ
遠くにあるように見えて意外と親和性が高かった小豆。だが、そいつは四天王最弱だ。なぜなら、次こそガチのスイーツ。ベイクドチーズケーキ様だからだ。
鍋の似合わなさでは今回用意した食材の中でも群を抜いている。カレーとは対極の存在と言っても過言ではない。もちろん味も炎と氷くらい交わらなさそうだ。対消滅しないか心配なレベル。
混ぜてみたところ、みるみる全体がチーズケーキの色に浸食されていく。丸々1個は入れすぎたか。と思いきや……
バターチキンカレーみたいな味になった……!
繰り返すが、使っているのは市販のルウ。元のカレーの味も極めて素朴な家カレー的なものである。それがまるでインド料理屋のバターチキンカレーのようにクリーミーかつコク深い味になってしまったではないか。しかも、しっかりカレーしてる。
トロみは日本の家カレーっぽいのだが、味はナンの方が合いそうな感じ。消滅するどころか、ベイクドチーズケーキの良いところとカレーの良いところが針の穴を通すようなバランスで成り立っている。あのベイクドチーズケーキをここまで綺麗にものにするとは恐るべし。
・ドリアン
カレーって何なんだろうな。もはやカレーの概念が分からなくなってきたがラスボスが残ってる。そう、ドリアンだ。刮目するがいい。これが私の仕事……
クッッッサァァァアアア!
ドリアン臭いっす。もう帰って寝たいっす。ナイス求めて振り続けるダイス。ライスもそろそろ尽きてきたぜパラダイス。
っていうか、カレーにならないってどういうこと? 洒落にならないヤベー状況 No Warの乱世 曹操はいないじゃん! ねえ、そんな中、カレーになるとかならないとか、俺は何を言ってる? 誰が欲しいねんその情報
思わず、ニッポンフードシフトにMCバトルを仕掛けてしまったが、近くで嗅いだら柑橘系の香りも漂っている気がする。カレーにINしてみたところ……
普通に食べやすいフルーティーなカレーに。
カレーSUGEEEEEE!!
・最強隠し味
まさかドリアンの匂いまでも消してしまうなんて。さて、これにて用意したものは一通り試し終わったわけだが、あなたは最強隠し味がどれか分かっただろうか? ここまで読んだ人には一目瞭然かもしれない。その答えは……
ベイクドチーズケーキ。
正直、チーズやチョコレートの比ではない。コクの出方が異常である。おまけに、こんなのウマくしようという方向では普通思いつかない。カレーにならない食材を探すという今回の趣旨じゃなければまず出会えてなかった奇跡の隠し味と言えるだろう。
・カレーって凄い
逆に言うと、それほどにアウトを攻めていったにもかかわらず、全てを受け入れた器の大きさは天晴という他あるまい。カレーの限界は人間の想像力の限界。全てはカレーになるのかもしれない。
なお、現在、ニッポンフードシフトでは「すべてはCになるRAP選手権」という動画が公開中。これは有名ラッパーたちによるあらゆるメニューがカレーになるかをMCバトルで繰り広げるものだ。
多分、普通の人は与えられたテーマに沿って韻を踏もうとすると、本記事のラップパートのリリックみたいに取って付けた感じになると思うが、その点プロは凄すぎる。ちゃんとラップにもバトルにもなっていて、とにかくウマイのである。カレーだけに。
・なぜカレー?
ところでなぜカレーから日本を考えようと思ったのか? 最後に、このプロジェクトを推進する農水省に理由を聞いてみたぞ。
農水省・大石さん「カレーは、食材ひとつひとつに日本の食料事情を見ることができます。例えば、スパイスは、気象条件等から国内では栽培が難しくほとんどが輸入品。牛・豚・鶏のお肉は国内で生産されたものでも、餌の原料の多くは海外からの輸入。ライスはほとんど国内で生産されているので食料自給率は高くなるなどです。
身近なカレーを通じて、日本の食について考えるきっかけを届けられたらいいなと。ちなみに、食料自給率アプリでは、カレーを含めて様々な食事の自給率を計算できます。カレーに何を入れるか食材の違いで、自給率の変化がわかるので、ぜひ試してみてください」
というわけで、カレー好きもRAP好きも見て欲しいこの動画。これにて本記事の自給率は100%です。おあとがよろしいようで。
参考リンク:ニッポンフードシフト「カレーから日本を考える。」
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.