ジオテクノロジーズ株式会社は2023年2月3日(金)、東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授と、人流データ活用の共同研究を開始することが発表された。同日、報道関係者向けに共同研究開始発表会が開催され、初回の研究結果として「よく歩く街ランキング」の結果を発表した。
■連続性、高精度、人の属性がとれる人流データ
発表会は、ジオテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 CEO 杉原博茂氏の挨拶から始まった。
同社は「地球を喜びで満たそう」をミッションに掲げて、1994年にマルチメディアソフトウェア開発会社として創業し、翌年には「MapFan」が日経ベストソフト賞を受賞した。その後、国内初のiモード地図で日経新聞社賞を受賞、世界初の通信カーナビを発表するなど、イノベーションを起こしてきた。さらに進化し、法人向けの地図データや位置情報ソリューションの提供はもとより、高度な自動運転の実現に不可欠な高精度3次元データ地図の提供も行うなど、地図のメジャーカンパニーとして日本の地図業界を牽引している。
同社が生活者に向けて提供している「移動するだけでポイントが貯まるM2Eアプリ“トリマ”」は、累計ダウンロード数1200万※を超え、多くの人々に日々の移動や様々なコンテンツを提供している。加えて、ブロックチェーン技術による、生活に根付いたNFTを国内外に展開し、グローバルに大きく羽ばたく成長企業だ。
※2023年1月時点
これまでのスマートシティやMaaSにおける研究分野でも、人流データを活用して車の移動や人の滞在などが分析されていたが、歩行者の移動にフォーカスした人流データ分析は、ほとんど行われていなかった。その理由は、人々の移動を捉え、分析するために十分なレベルの人流データが存在しなかったためだ。
ジオテクノロジーズ 杉原社長は「今までの一般的な人流データというのは、宇宙の星空の中に星があるイメージです。我々がとれる人流データは連続性があり、高精度であり、なおかつ人の属性と、こういったデータがとれます。これらのデータを、どうやって正義のために、地球のために使おうかというのがデータでした。その中でお会いできたのが、東京大学の柴崎先生です。」と語った。
ジオテクノロジーズの人流データは“トリマ”のユーザーから取得しており、モバイルGPSの取得ピッチの細かい人流データのため、歩行者の分析に適している。そこで、このデータを東京大学に提供することで、歩行者にフォーカスした共同研究を実現した。
ジオテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 CEO 杉原博茂氏が語る!東京大学との共同研究による人流データを活用したサービスの未来
YouTube:https://youtu.be/IYeQ9NLh-is
■さまざまな自治体と連携して社会の安全に貢献していきたい
引き続き、ジオテクノロジーズ株式会社 メタバースBU アプリケーション事業副統括 博士(工学)秋元和紀氏より、横浜市の花火大会を事例に人流データの有用性が説明された。
人流データを可視化すると、人の流れが見てとれる。さらに人流データを数値化して、通常時よりも6~10倍の群衆が最寄り駅に集中したことがわかった。また時間帯により、3つの最寄り駅に集まる群衆に差が生じることがわかった。
ジオテクノロジーズ 秋元博士は「各駅に対して、それぞれピークを迎える時間と群衆の数を認識したうえで、今後、こういったイベントを実施する際、どういった回避ができるのか、というところで活用できます。今回は横浜市と実施しましたが、今後はさまざまな自治体と連携して社会の安全に貢献していきたいと考えています。」と語った。
■その人の生活ぶり、忙しさ、どんな仕事をしているのかもわかる
東京大学空間情報科学研究センター 柴崎亮介教授が共同研究の内容について語った。
情報がますます重要になっていく中で、情報そのものを人間や社会に有効に役立てるためには、人の行動やその背景にある意図、人の感じ方や行動変容のメカニズム、人々が情報から何をどう抽出、注目するのか、背景知識との関連などを理解し、その中にいかにセンシング技術、シミュレーション技術、情報サービス生成技術を活かしていくのかを研究する必要がある。
柴崎教授はプライバシー上問題のない自身の歩行データをもとに「場所と時刻をつきあわせると、どの辺に住んでいて、どこに通っていて、何回ぐらい成田空港や羽田空港へ行ってどこに飛んでいったか、新幹線に乗ったか、などを数えることができます。東京大学のキャンパスは本郷、駒場、柏と3つありますが、そこにどれくらい通っているのかを、すべてカウントすることができます。人の流動をビッグデータとして見るとパターンなりますが、1個1個見ていっても、その人の生活ぶり、忙しさ、どんな仕事をしているのか、どの辺に住んでいるのかを読み取ることができます。」と語った。
引き続き、「よく歩く街ランキング」を例に人流データの分析を明らかにした。
人流データから歩行者の移動距離を抽出して、一人当たりの平均歩行距離として1都3県で集計した。 今回、「よく歩く街ランキング」として上位20の自治体を並べたところ、平日・週末ともに神奈川県逗子市が1位となった。また東京23区は、平日はトップ20に入らないものの、週末に一気に多数ランクインした。今後は各地域についてより深い人流分析を行い、その背景や理由を人流データから追究していく予定だ。
〇集計概要
人流データ:ジオテクノロジーズの「トリマ」で収集したGPSの位置情報
対象エリア:1都3県の184市区(※町村は除いてます)
対象期間:2022年3月~5月の人流データ、約110万人
〇集計手順
・ 人流データから「歩行」と特定できた移動の距離を算出
・ 人流データからユーザーごとの居住地を市区に分類
・ 市区ごとに、徒歩の移動距離の一人当たり平均値を算出(平日と休日)
東京大学空間情報科学研究センター 柴崎亮介教授が語る!ジオテクノロジーズとの共同研究による人流データの活用と今後の展開
YouTube:https://youtu.be/fQFxKPhltAM
ジオテクノロジーズと東京大学は今後、研究結果をスマートシティやMaaSに関連する自治体や民間企業に共有し、連携しながら地域住民の健康増進に貢献していく構えだ。
人流データを活用することで、人々の移動手段を分析して、次に何が起こるのか予測することができれば、行動変容を促し、災害による被害を未然に防ぐことや、人々の健康を守るための街づくりなどへ活用が期待されるだけに、今後の展開が楽しみな研究といえるだろう。
■ITライフハック
■ITライフハック Twitter
■ITライフハック Facebook
■ITビジネスに関連した記事を読む
・選択と集中を加速させるガーディナルヘルス!成長戦略とビジョン、日本市場に注力する理由が明らかに
・圧倒的なスピードで日本のDX 速度を上げる!ハイブリッドテクノロジーズが提供する戦略的オフショア開発
・脱炭素社会に向けた、地域の環境循環ソリューション戦略とは?シナネンホールディングス、新規事業説明会を実施
・INFORICH、東京証券取引所グロース市場へ上場
・タレントマネジメントで成果を挙げている会社が実践している『当たり前のこと』