おすすめのワインと、グラスをワインエキスパートに選んでもらった【初級編】

デイリーポータルZ

味わいの説明を読んだり、ソムリエさんにおすすめしてもらって買ったワインを、いざ家で飲んでみると「あれ?思った味と違う」と思ったことはありませんか?もしかするとそれはグラスのせいかもしれません。そこで今回は「趣味はガラス食器収集」と公言し、ワインエキスパートの資格を持つライターJUNERAYさんに、おすすめのワインと合わせて、そのワインに合うグラスを伺います。聞き役は、ワインもビールもコーヒーも、同じグラスで飲んでいるというデイリーポータルZの安藤さんです。

(執筆/安藤昌教、撮影/JUNERAY、編集/デイリーポータルZ編集部、メルカリマガジン編集部)

プロがおすすめするワインとは?

安藤

今回もワインエキスパートのJUNERAYさんに話を聞きます。JUNERAYさんには以前おすすめのガラス食器についても話を聞いた(メルカリマガジンの記事「【シンプルで使いやすい】初心者向け「ガラス食器」のはまり方講座」)ワインのプロでありながらグラスのプロでもあります。JUNERAYさん、よろしくお願いします。

JUNERAY

お願いします!

安藤

前回の記事(メルカリマガジンの記事「【初心者必見】「ワイングラスって必要なの?」ワインエキスパートに聞いてみた」)で、まず始めに1つワイングラスを買うならテイスティンググラスがおすすめと聞きました。

安藤

今回は自分に合ったテイスティンググラスを手に入れたという前提で、ではワインは何を買えばいいの?というこれまた初心者な質問から始めさせてください。ワインってどうしても種類が多すぎて何から手を付けたらいいのかわからなくて。

カーブドッチのナチュラルワインを、ステムグラスやダブルウォールグラスで。

JUNERAY

そうですね、個人的なおすすめですが、最近飲んで「いいね!!」と思ったのはこれです。

JUNERAY

新潟にあるカーブドッチというワイナリーのワインです。

安藤

あ!新潟のカーブドッチは取材で行ったことありますよ。

JUNERAY

え!!!いいな!!!わたしも行きたいと思っていたんです。羨ましい…。

安藤

でもその時は取材だったのでワイン飲まずに見学だけして帰ってきました。

JUNERAY

もったいない!!

安藤

なんかバスに乗ってすっごい山奥までつれて行ってもらった気がします。新潟の山間にワイン用のブドウ畑が広がっていて、日本じゃないみたいでした。

JUNERAY

各地にあるワイナリーって試飲しても大丈夫なように、バスで送迎してくれるところが多いですね。カーブドッチのワイン、おいしいから飲めばよかったのに!

安藤

いま思えば飲んでおけば…。JUNERAYさんがおすすめしてくれたこのワインはどんな感じですか?

JUNERAY

このファンピーというワインはですね、食用ぶどうをベースに作られているワインなんです。

安藤

一般的なワインは食用ではないぶどうを使っているんですか?

JUNERAY

そうなんです。ちょっと難しくなりますが、ヴィティスヴィニフェラっていう最もワイン醸造に適した種と言われている品種を使うのが主流です。ただし日本は土地柄、食用ぶどうでワインを作ることも多くて、そうするとぶどうそのものの甘い香りが残るのが特徴です。

安藤

なるほどー、聞いただけで美味しそう。カーブドッチに行く前に聞いておきたかった。

JUNERAY

美味しいですよー。ウェルチってジュースがあるじゃないですか、あんな感じの、ぶどうそのものの香りがします。食用ぶどうで造られたワインはそういう香りが残りがちなので、それがあまり好きではないという人もいるので好みですが。

安藤

このワインならこのグラスで!というおすすめのグラスってありますか?

JUNERAY

どうでしょう、食用ぶどうで造ったワインって、とにかく香りがジューシーなんです。だから無理にかっこいいワイングラスで飲まなくてもいいかもしれません。たとえばこんなのとか。

安藤

ちょっと無骨でかわいいですね。

JUNERAY

イメージとしては「ディナーテーブルの上のグラス」というより「友だちと原っぱで日向ぼっこしながら飲む」といった感じかな。カジュアルなグラスに合うと思います。

安藤

ヨーロッパに行ったときに昼間から公園でワイン飲んでる人たちがわりといて、いいなと思っていました。日本だとあまり見ないですよね。

JUNERAY

そうですね、ヨーロッパとかだとお茶感覚なのかも。

安藤

冬になると屋台でホットワインが売られてて、それが好きでよく飲んでいました。

JUNERAY

クリスマスマーケットですね!ホットワイン、おいしいですよね。

安藤

そうそう。だから僕も冬になるとマグカップに赤ワインを入れてレンチンしてよく飲んでますよ。

JUNERAY

それこそKINTOのダブルウォールグラスが最適なのでは。

安藤

前回、JUNERAYさんに聞いてさっそく買ってみたんです。これ、ワイン入れてこのままレンチンできるのが最高ですね。

JUNERAY

見た目もキレイだし、脚がないので洗いやすいのもいいですよね。

ヒトミワイナリーの微発泡を、木村硝子店のキソで。

安藤

他にもおすすめのワインがあれば教えてください。

JUNERAY

いま円安の影響で輸入ワインがめちゃめちゃ高騰してまして、なのでおすすめは国産ワインなんですが。ヒトミワイナリ―のこれとかどうでしょう。

安藤

滋賀県産なんですね。ちょっと濁っていますか?

JUNERAY

ヒトミワイナリーさんはにごりワインが専門なので、無濾過なんです。ほかにも微発泡のものは発泡させるために必要だった澱(おり)が底に溜まっています。デラウェアの微発泡はねえ、うまいですよ…(しみじみ)。

安藤

そんなにしみじみ言われると、美味いんだろうな…と。微発泡というのはどのくらい「微」なんでしょう。

JUNERAY

どうだろう、自然な造りすぎて個体差もあると思うんです。こことは別の生産者さんですが、前に「微発砲」って書いてあってもコルクがぶっ飛ぶくらい強烈だったことがあります。

安藤

むしろ強炭酸だ。

JUNERAY

発泡は微生物の気分次第なので、そこは多目に見ていただいて。このヒトミワイナリーさんは自然な造りのワインが多いので、ここのワインだとグラスでいうとそうですねえ。木村硝子店のキソなんてどうでしょう。

安藤

これはまたきれいなグラスですね。

JUNERAY

こちらも日本の職人さんのハンドメイドなんです。グラスが薄いのと、香りが感じ取りやすいので、デラウェア製スパークリングワインの良さを感じやすいと思います。あと脚が短めなのがいいですね!我が家にも一脚あります。

安藤

あ、これ脚が短めだったんですね。なんとなくちょうどいいバランスだなと思ってしまった。

JUNERAY

そうなんです、普通に使う分にはすっごくちょうどいいサイズ感とフォルムなんですよね。勝手な想像ですが、日本の職人さんの手製なので、我々の感覚に合っているんじゃないかと思います。

ボジョレーヌーボーってなに?

安藤

冬になるとよく耳にするボジョレーヌーボーって、あれはなんなんですか。毎年聞くけど、たぶんまともに飲んだことがないんです。

JUNERAY

ソムリエ協会的には「ボージョレヌーヴォー」が正しいみたいです。ボージョレっていうのは地名なんですよ。で、ヌーヴォーは新しいという意味です。アール・ヌーヴォーのヌーヴォーですね。

安藤

ボージョレ地方の新しいワイン、ってこと?

JUNERAY

そう!ボージョレ地区の新しいワインのことをボージョレヌーヴォーといいます。

安藤

さいたま新都心、みたいなことですか。

JUNERAY

そう?かもしれないですが。

安藤

違うと思うので先を急ぎましょう。ワインにおける「新しい」っていうのは日本酒でいう新酒みたいな話ですか?

JUNERAY

そうですね、ざっくり言うと「今年のぶどう」ってことです。

安藤

ワインって年代物の方が重宝されるイメージがあるんですが、どうして毎年あんなに騒がれるんでしょう。

JUNERAY

確かにワインの評価のひとつに「熟成させておいしくなれるか」というのがあるんですが、ブドウの品種によっては熟成でおいしくなれるのと、そうじゃないのがあるんです。

安藤

大器晩成タイプか神童タイプか。

JUNERAY

はい。ボージョレ地区で作ってる「ガメイ」っていうブドウは、造り立てのフレッシュなワインがおいしいねって話で、新酒のお祝いに抜擢されたわけです。

安藤

なるほどー。そもそもボージョレ地区っていうのはフランスですか?

JUNERAY

フランスです。ブルゴーニュ地方って聞いたことありますか。そこの近くにあるのがボージョレです。

安藤

なるほど。そこで造られたフレッシュなワインというわけですね。で、今年のボージョレはどうでしたか?

JUNERAY

今年はですねえ、味わいとかとは全く違ったところに問題がありまして…。

安藤

やっぱり円安の影響ですか?

JUNERAY

円安と物流の影響ですね。まだ日本に入ってきてないものがたくさんあるんです(2022年12月現在)

安藤

こんなところにまで影響が。平和な世の中じゃないと新酒を喜んでいられない、ということですね。

JUNERAY

そうなんです、お祭りどころじゃないんです。ボージョレヌーヴォーでいうとわたしが好きな生産者さんがいて、毎年欠かさず買っていたんですが、今年は本当に手に入らなくて…。

安藤

そうやって生産者にファンが付くのもおもしろい文化ですね。味や香りに関してはどんな特徴があるんでしょう。

JUNERAY

酒屋さんやスーパーでよく見かけるタイプのボージョレヌーヴォーは、造り方に特徴があって、イチゴジャムやバナナの香りが強くなる傾向がありますね。

安藤

バナナ!ぶどうで作ってるのにバナナの香りがするんですか??

JUNERAY

そうなんです。不思議ですよね。日本酒でもバナナの香りがするやつありますよ。

安藤

すべての果物はバナナに通ずるのか。ついでにボージョレヌーヴォーを飲むのに向いているグラスを選んでもらえますか。

JUNERAY

そうですねー、お祭りで飲むものだから仰々しくなくてちょっと小ぶりのグラスがいいかもですね。これなんてどうでしょう。

JUNERAY

ADERIAの「つややか」というグラスです。

安藤

ちょっと小ぶりで可愛い。

JUNERAY

イタレッセというイタリアのメーカーのスタンダードなタイプもおすすめです。使い心地がとにかくいいので、我が家ではカクテルグラスを愛用しています。

JUNERAY

ボージョレヌーヴォーは生産者による味の違いを楽しむのが醍醐味だと思うので、グラス自体はシンプルなものがいいかなと思うんですよね。

安藤

なるほど。シンプルなほどワインの個性が感じられやすいのか。

JUNERAY

あとボージョレを飲むならシェフ&ソムリエのマカロンファッシネーションというグラスもいいかも。背が高めですがブルゴーニュ型の亜種かな?という形で、ちょっといいボージョレならこちらでぜひ。

安藤昌教(あんどうまさのり)

デイリーポータルZ編集部勤務。ものをむかずに食べる「むかない安藤」としても活躍中。好きなものはカメラと恐竜。あとサメが出てくる映画。

JUNERAY(じゅーんれい)

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、クラフトビアアソシエーション認定ビアテイスターのライター。元家具屋で花屋でバーテンダー。好きなものは酒と花。

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