劇場公開前の海賊版映画の数が減少した理由とは?

GIGAZINE
2023年01月14日 13時00分
映画



これまでハリウッド映画の多くは劇場公開前にオンラインで海賊版が出回ってきました。しかし2022年には大規模な流通が確認できませんでした。その要因について、有名海賊版配信グループの活動停止や映画のリリース期間の短縮によるものであるという分析を、著作権侵害やデジタル権に詳しいニュースサイト・TorrentFreakが公開しました。

Where Are the Pirated Movie Screeners This Year? * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/where-are-the-pirated-movie-screeners-this-year-221229/

一般に、映画評論家や賞の審査員のもとには、映画を公開前に見て審査・評論してもらうため、今後公開される映画の先行コピーである「スクリーナー」が送られます。しかし、このスクリーナーが海賊版を公開する人物の手に渡ることで、一般公開前の作品がネット上に流出する事態となります。海賊版にはアカデミー賞候補作品も含まれ、多くは12月ごろに公開されてきましたが、2020年は10月、2021年は9月と、公開される時期が早まっていました。

しかし2022年は、スクリーナーはこれまでと同じように評論家や審査員に送られたにもかかわらず、海賊版が出回ることはありませんでした。20年以上にわたって海賊版はかなりの数が流通しており、スクリーナーの海賊版が出回らないということはほとんど考えられないとのこと。

TorrentFreakは公開前作品の海賊版が減少した要因の1つとして、近年流出したスクリーナーの多くを公開していたグループ「EVO」が2022年11月に活動を停止。EVOのメンバーが逮捕されたか強制捜査があったのではないかといううわさが流れたことで、他のグループも活動を控えた、という可能性を挙げました。


また、アカデミー賞候補作品のスクリーナーがデジタル送信されるようになり、結果としてセキュリティ強化につながったことも要因の1つに挙げられています。

そして、公開前作品の海賊版減少の重要な要因として、TorrentFreakは「公開後のリリース期間の短縮」を挙げています。海賊版を公開するグループは、基本的にオンラインで見られる映画の高品質なコピーがないときに海賊版スクリーナーを公開してきたという経緯があるそうです。

従来、劇場で公開された映画がBlu-ray・DVDになったりデジタル配信されたりするまでには数カ月から年単位の時間がかかっていたため、スクリーナー由来の海賊版が重宝されましたが、近年はその期間が短くなり、早い作品だと劇場公開と同時に配信がスタートします。すると、作品公開と同時に海賊版サイトに高品質なコピーが出回るため、スクリーナー由来の海賊版の存在意義が失われることになります。


2000年代のアカデミー賞候補作は全作品のスクリーナーが流出して海賊版になることも珍しくなかったのですが、2022年のスクリーナー流出の割合は初めて10%を下回ったとのこと。

リリース間隔の短縮により、スクリーナーの流出は珍しいものとなりました。2000年代初頭にはオスカー賞候補の全作品がオンラインでリークされることはよくあることでしたが、2022年には流出量が初めて10%を下回ったとのこと。

しかし、スクリーナーの流出が減少したとはいえ、海賊版の数が減少したわけではなく、「高品質なコピー」の海賊版はオンライン上で多数流通しています。

TorrentFreakは「2022年に大規模なスクリーナーの流出が確認できなかったことは注目に値しますが、全く予想外というわけではなく、単に時代の流れによるものです」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source