2022年フードテックのトレンド振り返り–冷凍食品文化が飛躍

CNET Japan

 2020年初頭に発生した新型コロナウイルス禍から3年が経過しようとしているが、その中でわれわれの食生活や生活スタイルそのものが大きく変化してきた。2022年はフードテックの面においてどのようなトレンドが生まれたのか、振り返っていこう。

「持ち帰り」などのニーズから冷凍食品文化が飛躍

 新型コロナウイルス感染症拡大によって消費者の食生活スタイルが大幅に変化したことで、2020年から急速に注目を集めたのが「冷凍食品」だろう。

 自動販売機大手のサンデン・リテールシステムが2021年1月に発売した冷凍自動販売機「ど冷えもん」シリーズが全国各地に設置されて話題を呼び、大手外食チェーンから個人店まで幅広く導入されることになった。ど冷えもんシリーズの設置箇所を検索できる同社提供のスマホアプリ「ど冷えもんGO」(App Store/Google Play)で確認したところ、2022年12月23日時点で全国に2362台設置されているのだから驚きだ。

 2021年8月には冷凍・冷蔵の切り替えが可能な「ど冷えもんNEO」、12月にはスリムタイプの「ど冷えもんSLIM」、2022年10月にはワイドサイズの「ど冷えもんWIDE」を発売。2023年1月にはマルチエレベーター(可動式収納棚)の採用によって大型商品や袋物商品にも対応する「ど冷えもんMULTI」と、一気呵成にラインアップを拡充している。


屋外型冷蔵自動販売機「ど冷えもんMULTI」

 飲食店の店頭などにおける冷凍食品販売をサポートするのが、大風量の冷気や液体で食品を急速凍結させる急速冷凍機だ。2013年の創業時から急速冷凍機の専門商社として展開するデイブレイクは、2021年10月に初の自社製急速冷凍機「アートロックフリーザー」を発売。2022年6月時点で累計受注台数200台を突破し、2022年9月には機能を向上した新型モデルの受注を開始した。同社は急速冷凍機を販売するだけでなく、これまでに蓄積した知見を基に食材選定から前処理方法、凍結方法、保管方法、解凍方法まで一貫したサポートを行う「トータルフリージングシステム」を提供するのが特徴だ。


デイブレイクの急速冷凍機「アートロックフリーザー」

 真空パックした食品を約マイナス30度のアルコールで急速凍結させる液体急速冷凍機「凍民」を製造販売するテクニカンは2022年11月に、家庭向けに急速冷凍機の技術を活用した冷凍庫「凍眠マジック MG-01」を発売した。液体をパックに入れた「液パック」で食品を包み込むことで急速冷凍するというもの。パナソニックの冷蔵庫が搭載する「はやうま冷凍」機能(2020年モデルから搭載)なども急速冷凍機能の一つだが、液体の熱伝導性の高さを生かした冷却機能というのはこれまでにないユニークなものだ。

 コロナ禍で進化が進む冷凍食文化において注目したいのが、2022年4月に国内展開がスタートしたYo-kai Express Japanの自動調理自販機だ。冷凍されたラーメンやうどんなどを独自のスチーム技術によって解凍・調理するというもの。持ち帰って調理する冷凍食品とは違ってその場で食べられることが消費者としては魅力となっており、外食産業の人手不足に対応する無人化ソリューションとしても注目されている。

 2022年9月には一風堂を展開する力の源ホールディングスと、テーブルマークを傘下に持つ日本たばこ産業と業務提携および資本提携を結んだ。2022年12月時点で国内の設置箇所はJR東日本の上野駅や首都高パーキングエリアなどの8箇所(合計9台)と少ないが、これら大企業との資本提携によって今後かなり展開が進んでいくことが期待される。


Yo-kai Express Japanの自動調理自販機

古来から日本で親しまれている「発酵」を再注目する動き

 ここ数年で注目度が高まっており、日本でもさまざまなアプローチによって新たな取り組みが進んでいるのが「発酵」だろう。発酵とは微生物の働きによって食品が変化することで、お酒などを生み出すアルコール発酵や、漬け物やヨーグルトなどを生み出す乳酸発酵、味噌や醤油などを生み出すアミノ酸発酵などがある。

 一つの取り組みが、日本酒の製造技術を用いて生み出した「クラフトサケ」だ。お米を原料にしながらも、日本酒(清酒)とは異なるプロセスを取り入れたり、フルーツやハーブなどの副原料を入れたりして新しい味わいを生み出すお酒のこと。2022年6月にはクラフトサケ醸造所による同業者組合「クラフトサケブリュワリー協会」も設立された。


日本酒の製造技術を用いて生み出した「クラフトサケ」

 その中の一社である稲とアガベ、は日本酒製造には欠かせない「米みがき」をほとんどしない酒造りを行っている。米の中のタンパク質が雑味を生み出すことから、肥料を抑えてタンパク質生成を抑制する米作りを行っているという。同社ではさらに、日本酒製造工程で出る酒粕を使い、動物性食材を一切使わずにマヨネーズのような味わいを生み出す「発酵マヨ」の開発も進めているという。醸造元がお金を払って廃棄している酒粕をアップサイクルすることによって生まれる新たな食材にも注目したいところだ。

 クラフトサケと同じ日本酒技術がベースでありながら、全く違うアプローチによって生み出されたのが、ナオライが2019年に生み出した「浄酎」だ。酒造米ではなく食米を用いて酒蔵が日本酒造りを行い、できたお酒を独自の低温蒸留技術を用いて蒸留したというもの。さらにオーク樽などに入れて長期熟成を行うことで、ウイスキーや高級ホワイトリカーのような味わいを生み出すというのが大きな特徴だ。さらに浄酎製造工程の中で副産物として生成されたアミノ酸エキスは、化粧品や発酵食品、酵素ドリンクなどに活用できるという。

 どちらも縮小していく日本酒業界を再生するだけでなく、副産物を付加価値の高い食品にアップサイクルする取り組みにもなっているため、今後の発展が期待される。

 AlgaleXの取り組みもとてもユニークだ。同社は藻類を用いて泡盛かすを発酵させ、DHAの豊富なプラントベースプロテイン「Umamo」を作り出している。魚の養殖に必要不可欠なDHAを小魚で与えるのではなく、プラントベースプロテインを用いることでサステナブルなエコシステムに作り替えようとしているのだ。DHAはサバの10倍近く、旨味成分は昆布の2倍近く含まれているとのことで、ヴィーガン向けサプリメントの開発も進めているとのことだ。

 青のりの陸上養殖をはじめとして海藻の陸上・海面養殖を手がけるシーベジタブルは、2022年12月に青のりを発酵させた「青のり醤油」を発表した。これは大豆を使わずに生青のりと米こうじ、塩、水を使って発酵させたものだ。同社は海藻と発酵を組み合わせた「Re-seaweed」ブランドを立ち上げており、今後は青のり味噌や青のり柚子胡椒なども商品化していくとのことだ。青のり醤油は副産物からの高付加価値化ではないが、これまであまり注目されていなかった海藻を発酵させて調味料を生み出すというアプローチは興味深い。

「菌発酵」とは違うアプローチの「マイコプロテイン」も登場

 世界的な人口爆発により、食の課題として大きく掲げられているのが「タンパク質クライシス」だ。特に畜産は環境負荷が高いこともあって代替肉の開発が世界中で進められている。米GFIの調べによると、代替タンパクへの投資が2020年には約31億(約4129億円)ドル、2021年には約50億ドル(約6671億)と一気に増大しているという。

 その中でも特に伸びを見せているのが「培養肉」と「菌発酵」だ。培養肉は肉の細胞を培養して増やすというもので、菌発酵は微生物を利用した発酵によってタンパク質を生成するというもの。前出のGFIの調べによると、培養肉は2020年の約4.1億ドル(約530億円)から2021年には約13.8億ドル(約1847億円)
、菌発酵は2020年の5.9億ドル(約783億円)から2021年には16.9億(約2244億円)ドルへと大きな伸びを見せている。

 醤油や味噌などの発酵に用いられる麹菌に着目し、麹菌によって食品を発酵させるのではなく、麹菌そのものを代替肉として食用にしようという試みを進めているのが筑波大学生命環境系准教授の萩原大祐氏が代表を務める麹ラボだ。

 液体培地に麹菌の種を植えて培養することで、麹菌100%の「マイコプロテイン」ができる。グルタミン酸などのアミノ酸を生成するためおいしくなること、日本古来からの伝統的な発酵微生物のため安全性が高いこと、生産過程にかかる環境負荷が低いことなどがメリットだという。

 世界的に投資が進む菌発酵タンパクだが、それを日本の国菌である麹菌を発酵に用いるのではなく、そのものを培養して食用にするというアプローチがユニークだ。麹菌は雑食でさまざまな培地を使えるだけでなく、培地によって風味や食感などが変わるとのこと。これから食品メーカーなどとコラボレーションすることで製品化していくことになると思うが、日本発の代替タンパクの発展に期待したい。

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