日本銀行(日銀)は12月20日、これまで継続していた大規模な金融緩和を一部修正すると発表した。同行の黒田東彦総裁は夕方に開いた記者会見で、今回の修正による景気への影響について「全く無い。むしろプラス」と述べた。
日銀の黒田東彦総裁
日銀は2016年9月から、短期金利に加えて、長期金利の変動を抑えるイールドカーブ・コントロール(YCC)を実施している。今回の見直しによって、長期金利の上限を従来の0.25%から0.5%に引き上げる。市場からは事実上の利上げと受け止められ、株安や円高につながっている。
黒田総裁は会見において「YCCの手直しは利上げではなく、金融引締めではまったくない。大規模緩和は継続する」と強調した。「今回の手直しは、債権市場の機能改善を目的としたもので、金融緩和の効果が企業金融を通じてよりスムーズに経済に波及するための措置」と付け加えた。
固定型住宅ローンや企業の借入金利への影響については「第一に短期の政策金利をマイナス0.1%、10年国債の金利目標を0%というYCCの目標は変わっていない。その意味で、経済への刺激や、経済成長を促進し経済の拡大を図っていくという効果に基本的な変更はない」と述べた。
また、景気へのマイナスの影響については「全く無い。むしろプラス」とコメントした。「YCCの手直しで、金融緩和の効果が企業金融を通じて経済にスムーズに波及することで、景気にはむしろプラスではないかと思われる。足元の消費者物価の上昇率は3.6%まできていて、予想物価上昇率も高まっている。つまり、名目金利は同じでも実質金利は下がっており、景気刺激効果は強まっている状況で、イールドカーブ・コントロール全体の効果をそぐことは全く無い」とした。
黒田総裁は重ねて「YCCの運用一部見直しは国債や社債などの債権市場機能の改善に焦点を当てたもの。今回の発表で長期金利は0.4%程度に上がっているが、これがずっと続くかもわからない。国債の買い入れも増額するし、必要に応じて10年物に限らず他の年限でも指値オペをやる。(今回の措置で)何かマイナスの影響が出てくることは完全に防げると思っている」とした。
大規模金融緩和の点検や出口戦略については「物価上昇率2%の達成時期を見通せない状況で、点検だとかは時期尚早」と述べ、大規模緩和を継続する姿勢を重ねて示した。