19分というのがどのくらいのイメージなのかは人それぞれだと思うが、これから始まる1日の準備のために要する時間としてはかなり短い。起きて顔を洗って歯を磨き、トイレに行って身支度を調えるにもそのくらいの時間は必要だ。場合によってはこれに食事の時間も加わる。すでに暮らしに仕事に遊びにと、欠かすことのできない存在となっているスマホだが、起床して活動を開始するにあたり、丸一日の稼働を期待するために求められる時間としては頼もしいくらいの短時間だ。
愛用デバイスのバッテリをいたわりながら使う
コロナ禍とは関係なく、身の回りの各種デバイスのバッテリの寿命を多少なりとも延命したいと考えて、充電するという行為を見直すことにした。デバイスの機能として、バッテリに負荷を与えないようにする充電制御への工夫はあるが、人間ができることでも貢献できればと思ったからだ。
基本的なポリシーとしては、継続的に100%を維持しようとせず、フル充電された時点で充電をやめるというのを繰り返す。寝る時に充電をスタートすると、充電が完了しても、寝ている間はずっと100%を維持したままで朝を迎えることになる。そこで、充電は朝起きた時の最初の作業とすることにした。翌朝、超早朝に起きて出かけるという予定がある場合は万が一に備えて寝る前に充電をスタートするが、そうでもない限り、このポリシーを守っている。
外出の機会も減っているので、朝起きたときのスマホのバッテリ残量は30~40%くらいをキープしていることが多い。デバイスそのものの電力の使い方も賢くなってきているので、バッテリがカラになって困ることはほとんどなくなった。この状態で、起床直後に充電をスタートし、1時間ちょっとでフル充電になる。そして、100%に気がついたところで充電ケーブルを抜く。
もっともあわてて準備をして、すぐに出かけなければならない場合もある。それでも、準備にはある程度の時間が必要だ。数十分といったところだろうか。そんな場合の準備時間が約20分間だ。
ソフトバンクがシリーズ化する神ジューデン
Xiaomi 12T Proが発表された。ソフトバンクが独占販売する。同社が「神ジューデン」スマホとして位置づける最初の製品となるようだ。その「神」たる理由が19分間で2%から100%までの充電ができるという急速充電対応だ。同社では、今後もシリーズとして、この「神ジューデン」スマホの提供を考えているとのことで、Xiami製品に限定した考え方ではないとする。
スマホの充電は、スマホに装備されたポート(iPhone以外、多くはUSB Type-C)と、ACアダプタの間をケーブルで接続して行なう。これが基本的な有線充電方法だ。たとえば、Google Pixel 7 Proの場合、USB-PD 3.0(PPS)対応Google 30W USB-C充電器を使えば、約30分間で最大 50%を充電でき、50%からは少し充電速度は落ちて1時間強でフル充電になる。Xiaomi 12T Proは、それが19分間というのだから4分の1くらいの時間でフル充電に達することになる。
Xiaomi 12T Proに同梱されているACアダプタは120Wだ。Pixel 7 Proの急速充電機能が対応する電力は30Wまでなので、実にその4倍だ。単純計算でも4分の1の時間で充電ができるということになる。
誤解が多いようなので一応書いておくと、一般に「充電器」と呼ばれているデバイスとしてのACアダプタは、実は「充電器」ではない。実質的な充電のための制御はスマホの中に実装されていて、ACアダプタは、スマホ側からの要求にしたがって持てる電力を供給するからだ。よって、「充電器」というのは本当は正しくない言い方だ。
さて、ACアダプタに限らず、各種の周辺機器やケーブルには、汎用のものと専用のものがある。だが、USB Type-Cポートを使う以上、業界標準として、規格に準拠したサードパーティ製の汎用機器、ケーブルが実用レベルで使えなければならない。
どうやらXiamiは、業界標準のセットでは期待する性能が得られないと考えているようだ。専用の規格で充電すれば、もっと速く、もっと安全に、そして、バッテリに負担を与えない充電ができると考えている。
独自充電規格のハイパーチャージと汎用充電規格のUSB PD
Xiaomi 12T Proに同梱されている120WのACアダプタの出力は、3.6V~20Vで3~6Aと定格が記載されている。最大20V6A=120Wで4,000mA=推定約15Wのバッテリを19分でほぼフル充電する。これがハイパーチャージだ。公式サイトには、「※同梱の充電器利用、画面消灯・充電速度のブースト設定時。2~100%までの最短充電時間。使用環境等により変動」と記載されている。
ACアダプタから供給される電力、ポート、それらをどう使うかはメーカーの勝手で、それがユーザーの利益につながるのなら、そうするのが当たり前だと考えているのだろう。汎用性、業界標準での120W電力供給なら、本当はUSB Type-CのEPR(Extended Power Range)を使ってほしかったところだ。だが、標準規格としてのPDに対応しつつも、独自規格での充電機構を実装している。そちらの方が優れているという判断によるものだ。
同梱されたACアダプタ側のポートはUSB Type-Aだ。また、同梱ケーブルは一般的なもので、片側がUSB Type-A、反対側がType-Cとなっている。このケーブルを使う限り、業界標準ではUSB PDでの充電はできない。もっといえば、USB規格に準拠するなら、USBケーブルで120Wもの電力を供給することはできない。
電気的に接続された機器がハイパーチャージ対応かどうかを検出する仕組みは搭載されていないそうだ。したがって、汎用ケーブルを使った場合、どのような振る舞いをするかは保証されないので、必ずこのケーブルを使うようにしてほしいという説明を受けた。一般的なケーブルを使った場合、ハイパーチャージが行なわれるかどうかは不定だともいう。
Xiaomiでは、この純正ACアダプタとケーブルを使って「お手持ちのスマホやタブレット、ノートパソコンなおの充電にも使用できる」とし、さらに「全てのUSB Type-C対応機器での充電を保証するものではありません。また、充電速度はご使用の機器によって異なります」という。
大電力のUSB PD ACアダプタを接続した時のXiaomi 12T Proの充電挙動や、このアダプタを一般的なUSB PD対応機器に接続した時の充電挙動についても知りたいところだが、何が起こるかわからない以上、怖くてできない。だからこそ、何をすれば何が起こり、どのように振る舞うのかを明確にメーカー側で明示してほしいと思う。
ソフトバンクも「神ジューデン」を称することをシリーズ化し、汎用の業界標準を超えたところでビジネスマーケティングをするのだから、安心安全の担保については念入りにサポートしてほしいと思う。本当は、アダプタもスマホ側も独自のポートを装備し、専用ケーブルでしか接続できないようになっているべきだが、さすがにそれではユーザーに不便を強いる。でも、余計な不安を払拭するためには、せめて同梱ACアダプタは、ケーブルを直付けしてしまってもいいんじゃないかと思う。
このハイパーチャージ、実際には、昨2021年秋の「11T Pro」の時からのものだ。1年前の時点では同容量のバッテリを17分間でフル充電だったので仕様が少し変わっているようだ。当時は取り込む電流を増加させるデュアルチャージポンプ、トリクル充電時間を短縮するMi-FC技術、内部抵抗を低減するMTW技術、デュアルセルバッテリといったスペックで、基本的には同容量の2つのバッテリを同時併行に充電するのがハイパーチャージで、供給される120Wは、スマホ側で2分割されて充電に使われていた。各種技術についても詳しく掲載されている。
今年のXiaomi 12T Proには、シングルセルバッテリが使われている。そういう意味では発熱の点で不利だ。だからこそ、フル充電に要する時間がちょっとだけ延びたのだろう。42の安全機能と9個の温度センサーにより、800回の充電サイクルを保証し、800回の充電サイクル後も80%の容量を維持するそうだ。一般的なリチウムイオン系バッテリは、500回の充電サイクル後で50%容量となって寿命とされることが多いのを考えると優秀だ。
業界標準の汎用規格では、さまざまな要件が細かく規定されているため、たとえそれが最高の規格でなくても、とりあえず、準拠していることが安心につながる。
だが、各社の独自規格は内容が最高であったとしても利用には不安がつきまとう。だからこそ、いろいろな情報を積極的にオープンにしてほしい。頭ごなしに否定することはしないでおこうとは思う。そうはいっても、独自規格の乱立がユーザーに不利益をもたらすこともある。ここのところの塩梅が悩ましい。
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