サッカーW杯”ブラボー”ジャパン、支配率17%でスペインに勝利?

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FIFAワールドカップ(以下、W杯)に出場中の日本代表、FIFAランク7位のスペイン代表に2-1で勝ちました!

前節ではFIFAランク31位のコスタリカ代表に破れましたが、結果を見ればグループリーグ1位で堂々の決勝トーナメント進出です。

しかも優勝経験国2カ国を破って!

いやはや、もはや流行語になりそうな長友佑都の「みんな、ブラボー!」以外に言葉が見当たりませんね。本当に素晴らしい戦いぶりでした。

グループが決まった時はあきらめムードだったが grebeshkovmaxim/iStock

ドイツ代表、スペイン代表との対戦が決まって…

W杯グループリーグの組み合わせ抽選会、優勝候補のスペイン代表、FIFA 11位ドイツ代表とグループリーグで対戦することになった時点では決勝トーナメント進出は諦めモードの声もありました。ドイツ・ブンデスリーガでプレーする日本人選手はからかい気味に「残念だったな」とも言われたそうです。

ただ、対戦が決まったときの森保監督の表情からは落胆の色は全く見られませんでした。むしろ、強敵と対戦することに武者震いしているかのように見えたのは私だけではないでしょう。

その表情通り、世界最高峰の強豪2カ国に勝ちました。

ドーハの悲劇から29年目のブラボー!へ

1993年、アメリカW杯出場を逃したドーハの悲劇から29年余り、そのピッチで涙をのんだ森保監督と監督が信頼する選手、スタッフが掴み取った大勝利です。

メディアは「運命のスペイン戦」と煽っていましたが、まさに運命を自分たちで手繰り寄せたのです。いささか怪しげな言葉になりますが、サッカー日本代表のサムライ魂を称えましょう。まさにブラボー!日本代表、素晴らしい勝利でした!

支配率17%でなぜ勝てた?

ただ、スペイン代表戦、日本代表のボール支配率は17.7%(SOCCERKING公表値)でした。80%以上、スペイン代表にボールを持たれていたのです。

その中でどうやって勝ちを拾ったのでしょうか。

各メディアでは勝因を様々に語っています。たとえば…

  • 森保監督と選手が信頼しあっていること
  • 森保監督のゲームプランがはまったこと
  • スペイン代表にボールを持たれても、先制点を取られても慌てなかったこと
  • 同点ゴールを決めた堂安律が交代最初から全開だったこと
  • その直前の伊東純也の敵キーパーからのボールへの猛プレス
  • AIを使ったレフリングで2点目が認められたこと
  • 追いつかれてスペイン代表が戸惑っている時間帯に2点目を取れたこと
  • 日本サッカーの地道な積み重ね
  • 世界の強豪国のリーグで活躍する選手が増えてきた
  • 特にディフェンダーに世界レベルの選手が増えてきたこと

などなど、いくらでも上がりそうです。おそらく、全て本当だと思われます。

まさに森保監督の言う総合力で勝ち取った勝利と言えるでしょう。

心理学的な真の勝因は「展望力」

ただ、勝利した試合は何をとってみてもハロー効果で素晴らしく見えます。勝ち試合はどの一場面を切り取っても、勝因に見えるくらい輝かしいものです。

宮本武蔵の『五輪書』の精神によれば、次につながる真の勝因を見出さなければ次の勝利はありません。

そこで、ここでは心理学で見えてくる真の勝因を考えてみましょう。心理学的な真の勝因、それは「展望力」です。

実は、展望が人類と他の動物を区別する最大の違いであることはほとんどの心と脳の研究者が同意するところです。ヒトは圧倒的な展望力で生存競争を息抜き、今日の繁栄に至った動物なのです。

さらに展望に関わるVLPFCという人類になってから進化した脳はあらゆる苦痛を軽減してくれます。つまり、展望があれば苦しい時に踏ん張れるのです。がんばれるのです。

「できないこと」ではなく「できること」の展望を描くべし

この試合は圧倒的なボールキープ力を誇るスペイン代表を相手にほとんどボールを持たせてもらえないことが予想されていました。その中で無理にボールを持つ、つなぐ、といったボールの持ち合い勝負を挑むと圧倒的に不利になります。

そこで、守り抜いてスペイン代表の弱点を突いて勝機を見出す展望が全員に共有されていたことでしょう。

また、前節コスタリカ戦ではスペイン代表ほどではありませんでしたが、日本代表のほうが圧倒的にボールをキープして攻め込む展開の中で敗れました。この敗戦がスペースを与えずに粘り強く守り抜く展望に役立ったと考えられます。コスタリカ代表にできて自分たちにできないはずがありません。スペイン代表の破り方は身をもって体験し、選手たちの頭の中にも体全体にも行き渡っていたことでしょう。

試合が行われたハリーファ国際スタジアム Shakeel Sha/iStock

吉田麻也の「長かった~」が語るもの

試合後にはキャプテンの吉田麻也が「(逆転してからが)長かった~」とつぶやくように語たりました。この言葉からは展望を実現できた安堵を感じました。

日本を圧倒する展望しか持っていなかったスペイン代表ルイス・エンリケ監督を考えると、ボールキープで刃が立たなくても、先制されても、決して見失わない分厚い展望をチームと共有できた森保一監督の展望マネジメント力の勝利とも言えるでしょう。

ちなみに、この勝利のMVPを選ぶのであれば心理学的には長友佑都と言えると思われます。スペイン代表に勝利してブラボー!と叫ぶ夢を見た…と展望をさらに揺るぎないものにしたのですから。

ベテランはピッチの外でもチームに貢献できるのですね。素晴らしいです。

さあ、ここまで最高のチームに仕上がってきた森保“ブラボー”ジャパン、次はドイツ代表、スペイン代表に負けるとも劣らない前回大会準優勝のクロアチア代表戦です。クロアチア代表に勝つにはどのような展望が必要なのでしょうか。

私たちも日本代表と展望を一緒に考えることで、熱いエールをカタールへ届けましょう!!

FangXiaNuo/iStock

杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
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