株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月24日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究」事業において、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、APRESIA Systems株式会社、富士通株式会社とともに、5G携帯電話網の中核技術である5Gコアネットワーク(5GC)の国産化・低コスト化に成功したと発表した。
今回の事業で開発された5GCは、数回線~数千回線を効率的に管理できるようなコンパクトな実装で、オープンソースソフトウェア(OSS)である「free5GC」をもとにしており、汎用機器上で動作する。知財コストの負担が少なく、ローカル5Gなどの小規模5Gシステムを多数構築したい環境に適すとしている。
OSSはソースコードが公開されているため、悪意を持ったプログラムの混入がないか確認可能であり、透明性に優れる。一方で、OSSの中には商用利用に必要な機能が不足し、性能や安定性の検証が十分にできていないなど、技術的な課題もある。
そこで本事業に取り組むIIJらは、free5GCの運用戦略に「オープン・クローズド戦略」を策定したという。これは、開発成果を社会に還元(オープン)する「協調領域」と、市場環境で優位性を保つために占有(クローズド)する「競争領域」を設定し、開発に取り組むというものだ。
協調領域の取り組みとしては、IIJの知見をもとにfree5GCに機能を追加し、APRESIAと富士通の技術により性能の向上、安定性の検証を実施。商用製品として利用可能なレベルにまで品質を引き上げ「実用版」としたという。
競争領域では、グローバル市場で戦うための知財獲得と経済活性化を目的に、大学の最新の知見を知的財産として申請。これにより、大学発ベンチャー企業へ技術移転するビジネスモデルについても道筋を付けたとしている。
今後は、APRESIA・富士通などにより5GCを各社の5G基地局・端末設備として組み合わせた「ローカル5Gシステム」として継続的に更新版をリリースするとしている。
IIJでは、本事業により開発された5GCを用いた複数のローカル5G網と、IIJが仮想移動体通信事業者(MVNO)として提供するパブリック5G網をローミングにより利用できる通信サービスの開発を推進する。東京大学は、大学発ベンチャー企業の一体型ローカル5Gシステムに今回の開発成果を供給する予定だとしている。