バリウム検査の台の動きを人力で再現したい

デイリーポータルZ

バリウム検査の台の動きが好きな男の夢を叶える話です

健康診断の中でも胃のバリウム検査は苦手な人が多いだろう。

げっぷは我慢しろと言われるし、バリウムを一気に飲むのはしんどいし、体から排出するときもストレスだ。

だがちょっと待ってほしい。
バリウム検査がとても好きな男がここにいるのだ。僕である。
バリウム検査の一番楽しいところだけやる装置を作ったので見てほしい。

こんなに楽しいことがあるのかよ!

僕の会社では、30歳以上は健康診断でバリウム検査を受けることになっていた。
まだ20代のころ、先輩からバリウム検査のつらさについて散々聞かされたものだった。

バリウム検査はざっくりとこのような流れで行われる。

バリウム検査の流れ
1. 発泡剤を飲んで胃を膨らませる(ゲップを我慢するのがつらい)
2. バリウムを飲む(一気に飲むのがつらい)
3. 色々な姿勢を取ってバリウムを胃に貼り付ける(色んな指示が飛んできてつらい)
4. 下剤を飲む(バリウムの体外排出がつらい)

なんだかつらいポイントが多すぎないか。苦手な人が多いのも頷ける。

実際にどういう検査なのか、いざ自分が初めて受けるときに判明することになる。
そのときの僕のツイートがこれだ。

どうした、めちゃくちゃ楽しんでないか。

バリウム検査をやったことのある人はわかるが、こういう装置になっていた。

この台が技師によりガンガン操作され、やれその場で左を向けだの、やれ右回りに3回まわれだの、やれ頭を下にして傾けるだのたくさんの指示が飛んできてただただそれに従うのだ。

これがめちゃくちゃ楽しかった。
まず人の重さを支えて自由自在に動く装置がすごい、めちゃくちゃにすごい。
ひとりディズニーランドみたいな気分になる。

指示に従うしかないのも楽しい。大の大人がこんなに言いなりになることがあるのか。
台の上でぐるぐる回る自分を客観視してしまい、すごく愉快になってしまった。

発泡剤など他の手順でのストレスを吹き飛ばす楽しさがそこにはあった。
健康診断のたびにバリウム検査が楽しみになってしまったのだ。

 

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楽しいところだけやりたいね

体を動かされるあの装置だけほしい、とずっと思っていた。
もちろん医療機器なので手に入れることは出来ないだろう。

ならば作ろう。

材料を持って編集部へやってきた。

角材は電車に乗せられる長さだが、持ち込むもんじゃないなと5回くらい道中で思った。気をつけましょう。

ここが会社であるということを忘れてビス留めしていく。
枠を作って、
板を貼っていく。沖縄でカフェをやるときに床材を貼ったという安藤さんも参加してスピードアップ。
そうこうしているうちに完成。

こんな形の台ではなかったか。実際にはこれに撮影用のカメラや腹を押してくるアームなどがついてくるが。

体を支える手すりは非常に重要なので、ちゃんと市販品を買った。
一方で足を乗せる底板は強度が足りなさすぎて、こりゃ絶対バキっといきますわ~と安藤さんと談笑。大丈夫かな。

これで土台は出来た。あとはこれに乗り、本当の検査と同様に動かしてもらうだけだ。
だが人の重さを支える動力源を作るのは大変である。どうするのか。

答えは人力である。

文字通りマンパワーで解決だ。撮影しますと集められてバリウム検査台になるとは思わなかっただろう。すいません。

安藤さんがどこからか持ってきたバランスボールを支点にして動かすことにする。

これで装置はばっちりだ。

被験者もばっちりにしたかったので、検査着を買った。
こうしてバリウム検査のアベンジャーズが揃ったのだった。
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待望の検査だ!

いよいよ体験していこう。

発泡剤の代わりに炭酸水を飲む。

技師役の編集部橋田さんが「げっぷは我慢してくださいね」と言う。
これだけでもバリウム検査感が高まってきたぞ。

まずは台が水平になる。目の前に人がめちゃくちゃいて異様である。

水平になったら、若干揺れを感じるもののかなりバリウム検査っぽい感じになってきた。
橋田技師から「右回りに3回まわってください」という指示が飛んできた。

言う通りに回る。

これはバリウム検査じゃないか!!

完全に同じ感覚になった。

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大興奮の様子を動画でも。

装置側から「目の前で知っている人が回るのが面白い」という声が上がった。
いまは装置なので静かにしていてください。

次は「左に少し傾いてください」。これもよくある指示のやつだ。バリウムっぽさ!
足が下がって体が斜めになる。そのまま左を向くという日常にない姿勢!
さらにうつぶせになって頭が下に。これほんとに落ちそうになるので手すりを必死でつかむ。そのらしさがいい!あと装置がつらそう!
検査終了。夢が叶ってめちゃくちゃ笑顔の被験者。

今年一番の最高の体験だった。

実際にバリウムを飲まない分、本当に楽しいところだけ出来た。
これがバーチャルバリウム検査だ。本当に必要なのはFacebookをVR化することではなくバリウム検査台を作ることだとザッカーバーグに教えたい。

この最高の体験を他の人にもやってもらう。橋田さんに炭酸水を飲ませる。
「これだ、これよ!」2週間前に健康診断でバリウム検査をやったばかりの橋田さんの記憶を呼び起こした。
「はい、文句言わないー。げっぷも我慢してー。」やたら厳しい指示を出す安藤技師。
まだバリウム検査をやったことのないライター高瀬さんにもやってもらう。いいのかこれが最初で。
「右に3回まわってください」「……ここで!?えー!?」検査台に乗って初めて分かる困惑があった。実際の検査ではそんなことも言えず従うだけである。

こんなにハードな検査なんですか!?と高瀬さんから感想が出たが、経験者組からは割りと実際の検査に近い、いい練習になりますよという冷静な返答があった。
高瀬さんはもうバリウム検査はしてくれないかもしれない。

一方でバリウム検査愛好家はアイマスクをして再チャレンジ。炭酸水のあとに飲むヨーグルトも口に含んだら、さらにそれらしくなった。
アイマスクのおかげで装置からの目線が気にならなくなり、さらに没入感が上昇。これもう再現度98%くらいですよ。
ただしあまりにも変態的な写真が多く残った。

ついに夢が叶った

もう2年くらいずっとやりたいと思っていたネタなので感無量であった。
手動であっても体験としてはほぼ完璧なのがすごい。

次は本物の装置を動かす側にもなりたい。誰か私物で持っていないだろうか。

検査着を着てはしゃぐと、とんだポジティブ野郎になって面白かった。

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