勝者無きアメリカ中間選挙:トランプは24年の大統領選で勝ち抜けない

アゴラ 言論プラットフォーム

昨日話題に降ったFTX社がNY時間今朝、連邦破産法11条を申請しました。創業者のバンクマンフリード氏は数日で2兆2千億円を失ったと報じられています。が、私は予言します。これを上回る人がもうすぐ出るだろうと。そう、イーロンマスク氏です。彼がツィッター社を買収するのに投じたのは6兆円強。マスク氏は「ツィッターの倒産もありうるぞ」と半ばハッパをかける意味で述べていますが、私は6兆円の価値が蒸発するリスクがあるとみています。彼は頭は切れますが、全知全能ではない、ということです。

では今週のつぶやきをお送りします。

株式市場の潮目は変わったのか?

木曜日に発表されたアメリカの10月度消費者物価指数は前月の8.2%から7.7%へと下落しました。私からすればついに降臨したな、というのがコメント。株価がその後、大暴騰したのは事前予想の8.0-7.9%を大きく下回ったことで想定より物価下落スピードは速まる点を囃したものです。しかし、くれぐれも申し上げますが、これで利上げをしなくなるわけではありません。12月はたぶん0.5%、12月1日発表のPCI次第では0.25%も視野に入りますが、いずれにせよ、あと2回ぐらい利上げするでしょう。また、欧州はまだピーク打ち感がなく日本は世界の物価に遅行しているのでこちらも指数的にはもうしばし上昇しそうです。

その場合、株式市場をどう評価するかです。株価が3-6カ月先の先行指標だとすれば既に来年春を今、織り込むところにありますが、個人的には腑に落ちないのです。そんな絵に描いたような軌道を今の経済が描けるのか、という点です。目先は株高が期待できますが、波乱要因があるとみています。それは上述のFTXのような仮想通貨絡みとか、マスク氏の大失敗といった数兆円レベルではなく、もっと巨大な何かがある気がしてしょうがないのです。

現実問題として我々が気を付ける点はピボット(Pivot)と称する軸の旋回や変化に伴い、世の中に激変が起きる点です。例えば円ドル為替は私は再三、プラザ合意後のレンジは抜けないとし、2週間前には年末は140円を切ると申し上げました。私もここまで早い動きは想定していませんでしたが、ボラティリティが異様に高まっている点から一般投資家には極めてリスキーな状態にあると指摘しておきます。信じられないような落とし穴があるかもしれないということです。

勝者無きアメリカ中間選挙

メディアの報じ方に惑わされるのが今回のアメリカ中間選挙。下院は共和党優位に展開していますが、事前予想の「大勝」とは程遠い状態です。上院は民主48,共和49で残り3議席のうち2議席を取ったほうが勝ちで結局コイントスと同じぐらいの極めて伯仲した戦いとなっています。これに対して当初ボロ負け予想すらあったバイデン大統領が笑ったとか、トランプ氏が不満たらたらといったことが報じられていますが私はズバリ勝者無き戦いだったとみています。

今回の状況がなぜ起きたのか、あくまでも結果論ですがトランプ氏が引き起こした民主党への揺り戻しではないかと思います。バイデン氏にはそもそも誰も期待していないけれどトランプ氏がかき回すよりはよいだろう、ということです。換言すればトランプ氏が目立てば目立つほど民主党に消去法で票が入るのだとみています。ではトランプ氏が24年の大統領選で勝ち抜けるかですが、私はないと思いますし、ケントギルバートさんもそのように発言していました。結局共和党は割れるのでしょうが、下馬評の高いフロリダ知事で44歳のデサンティス氏を軸とした大幅若返りを期待しています。

個人的には地球規模の政治経済社会のリーダーシップを考えた時、民主主義陣営に顔役がいない点が非常に懸念される事態だと考えています。とすればアメリカは国内二分でもめている場合ではなく、国家が一体となって明白な方向性を指し示す時だと思います。ロシア、中国のみならず南米が社会主義となり、裏庭も荒れ放題。中東はアメリカに完全にそっぽを向いているし、欧州とも一線を画する状態が続きます。つまりアメリカは「裸の王様」になりつつあるのです。これは世界の信頼を裏切っているともいえるわけでこれから2年でアメリカが目覚めるかどうかで地球の色は変わるのでしょう。

トランプ前大統領HPより

日本企業買収2題

今週、大型の買収案件が発表になりました。一つはセブン&アイHがそごう西武をフォートレスに2000億円規模で売却すること、もう一つはオリックスがDHCを3000円億円規模で買収することです。日本企業の売買としては大きな規模です。共にいえることは売り手がしょうがなくて売却することです。セブンアイは業績不振のデパート部門にこれ以上足を引っ張られたくないこと、DHCは吉田会長が81歳と高齢になったことで売り上げ900億円利益100億円の企業規模の鮮度があるうちにバトンを渡すということです。

それぞれについてコメントします。まず、そごう/西武ですが、ヨドバシカメラがフォートレスと組んだため、買収後に旗艦店の池袋西武にヨドバシが数フロア入るほか、渋谷と千葉店にも入居の検討をしているとしています。正直、私は勘弁してほしいと思います。池袋はご存知の通りビックカメラとヤマダ電機の大バトルが繰り広げられているのですが、そこに駅直結のヨドバシが乗り込んだ場合、相乗効果より足の引っ張り合いになるとみています。なぜなら今はもう家電の時代じゃないのです。その点からすると私はフォートレスはユースレスなファンドとしか思えません。

一方オリックスは野球で優勝したこともありDHCを傘下にするチャンスに恵まれました。単純計算では100億の利益に対して3000億円の買収ですからキャップ3.3%です。アメリカのM&Aがキャップ8-10%ぐらいの買収ケースも増えている中で高めで設定したのは潜在企業価値はもっとあるし、磨けば光るとみたのでしょう。オリックスの手腕次第ですが、化ける可能性はあります。DHCはある意味不幸でした。吉田氏に政治的思想が強く、健康関係事業の顧客の女性から敬遠されやすかったのです。つまりオリックスにとって比較的磨きやすい素材だとみています。当の吉田氏は虎ノ門ニュースをどうするのでしょうかね?

後記
日本で手広く飲食や健康事業をされている社長と会食しました。氏とはもう6-7回ぐらい定期的に会っています。当地での事業構想について議論を進めています。上場できる規模にもかかわらず自分の好きなピクチャーを描きたいという強い想いが私の思想と合致します。面白いのは盃を交わせばかわすほど双方のわだかまりは取れるのです。今回は事業の話も少し前進しましたが双方の信頼関係のグリップがぐっと入りました。ビジネスはこうやって進めるのでしょうね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月12日の記事より転載させていただきました。